第91話 第一節 大改革 ー対決ー

文字数 551文字

 明け始めの空は、雨が上がりまだ薄闇の靄がかかっていた。
 奴婢村への侵攻部隊が各地で結集し奴婢村に向けて出発したが、そこには一様に誰の姿もなく、閑散としてただ粗末な家々が立ち並んでいるだけだった。
 侵攻部隊は皆一様に顔を見合わせ首を傾げた。
 「これは一体…」
 膨れ上がっていた奴婢への憎悪はその行き場を失い、宙に浮いて出どころを探し奴婢達の家を次々に破壊した。
 中には火を放つ部隊もあり、その残忍さは苛烈だった。
 ひとしきり破壊行為を終えると、部隊は集結して勝鬨(かちどき)の声を上げる手はずとなっている『東魚の道』の農村と商人町の境にある『ロクサの丘』に向かった。
 昼には続々と集まる部隊でその通りがびっしりと人で埋まった。
 全部隊終結したが意気が上がらず、不満の声が上がっていた。
 日が落ちかけ小高い丘に夕日が差して、人々はそこに六人の男女を発見した。 
 しかし、その姿をはっきりと目にした前面にいる者達は驚愕した。
 演舞会で見た白蛇に巻かれた少女が中央に、白蛇に飛びついて武人に襲われ青虎に代わった少女がその隣にいたからだ。
 その周りに男が二人ずつ立って、六人の姿は落ちかけの日は長い影を作っていた。
 たったの六人に対し、指揮者は「攻撃」の宣言ができず、誰一人攻撃を始める者はいなかった。
  
 
 
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