第79話 第一節 宮廷 ー潜入ー
文字数 1,186文字
御山宗家の当主と嫡男、そして供の者二十人の行列は、どこの貴族よりも早くに宮廷前に到着した。
門を守り検閲する武人たちは合わせて七名。
そのうち三名が御山宗家の供の者たちの人数を数え始めた。
一人一人顔を合わせて記録している。
すでに当主と嫡男、そしていつも中まで随行する二人が先に門をくぐっている。
次はヤシマだ。
ハンガン、アーサの順で続いた。
遥か後ろから馬列の音が聞こえてきた。
時間がない。ヤシマは検閲の武人にすっと近づくと、鳩尾をこぶしで撃ち気絶させ、武
人は音もなくくず折れた。
三人の検閲係がヤシマのこぶしにあっという間に倒され、その武人を他の供たちが囲んでその中でアーサとハンガンは門番の武人の服を脱がせその服にすばやく着替えた。
そして、ハンガンは眠りの実を二人の口に入れ、アーサと共に二人を台の後ろに隠した。
さらに、その先の他の二人をヤシマが襲っている間に、チマナとテナンが、先を行く当主に追いついた。
あとから襲われた二人の武人が門に連れてこられ、それぞれの背には、アーサとハンガンの刃が皮膚ギリギリに突きつけられた。
その状態で作業を続けることになった。
ヤシマは他の場所にいたもう二人の武人のもとに瞬く間に移動し、二人をあっという間に倒した。
近くの木々の茂みに隠しその口にも眠りの実を入れた。
御山宗家の最後の一人がハンガンとアーサの検閲を終える頃には、次の貴族の行列が鼻先に来ていた。
ヤシマはそのまま当主達を追いかけ、中へと消えた。
御山宗家の残された供の者たちは、起きた出来事のあまりの速さと鮮やかさに息をのんだ。
やがて何組かの検閲を終えた頃、中浜宗家はやってきた。
馬車から当主と嫡男のサンコそしてふらふらとした足取りの蒼白の少女が降りてきた。
ハンガンもアーサもすぐにシーナであることがわかり、兜を目深にかぶった。
サンコが通り過ぎる時ハンガンはじっと見つめられた。
そしてふっと笑いかけられたように見えた。
シーナが通りかかったとき、前で合わせた両の手首が縛られているのが目に入った。
痩せこけ生気のないシーナの哀れな姿が目の前にあった。
シーナは誰とも目を合わせる様子はなく、サンコのすぐ後ろを歩く供の者が綱を持ち、背中を押されながらサンコから離れないように歩かされていた。
アーサもハンガンも思わず拳を握りしめた。
アーサとハンガンは全ての貴族の検閲をじりじりする思いで終えると、二人の門番とともに門内に入り門を閉めさせた。
二人の鳩尾を膝撃ちし気絶させて眠りの実を口に入れ奥へと急いだ。
廊下にもどこにも人がいなかった。
走り回って次々部屋をのぞき込むが、やはり武人一人も見当たらない。
「おかしい。何かあった…」
二人が次の部屋を開けたとき、そこにはこれほどの人間がいるのかと思うほど、人がぎっしりいて人垣ができていた。
門を守り検閲する武人たちは合わせて七名。
そのうち三名が御山宗家の供の者たちの人数を数え始めた。
一人一人顔を合わせて記録している。
すでに当主と嫡男、そしていつも中まで随行する二人が先に門をくぐっている。
次はヤシマだ。
ハンガン、アーサの順で続いた。
遥か後ろから馬列の音が聞こえてきた。
時間がない。ヤシマは検閲の武人にすっと近づくと、鳩尾をこぶしで撃ち気絶させ、武
人は音もなくくず折れた。
三人の検閲係がヤシマのこぶしにあっという間に倒され、その武人を他の供たちが囲んでその中でアーサとハンガンは門番の武人の服を脱がせその服にすばやく着替えた。
そして、ハンガンは眠りの実を二人の口に入れ、アーサと共に二人を台の後ろに隠した。
さらに、その先の他の二人をヤシマが襲っている間に、チマナとテナンが、先を行く当主に追いついた。
あとから襲われた二人の武人が門に連れてこられ、それぞれの背には、アーサとハンガンの刃が皮膚ギリギリに突きつけられた。
その状態で作業を続けることになった。
ヤシマは他の場所にいたもう二人の武人のもとに瞬く間に移動し、二人をあっという間に倒した。
近くの木々の茂みに隠しその口にも眠りの実を入れた。
御山宗家の最後の一人がハンガンとアーサの検閲を終える頃には、次の貴族の行列が鼻先に来ていた。
ヤシマはそのまま当主達を追いかけ、中へと消えた。
御山宗家の残された供の者たちは、起きた出来事のあまりの速さと鮮やかさに息をのんだ。
やがて何組かの検閲を終えた頃、中浜宗家はやってきた。
馬車から当主と嫡男のサンコそしてふらふらとした足取りの蒼白の少女が降りてきた。
ハンガンもアーサもすぐにシーナであることがわかり、兜を目深にかぶった。
サンコが通り過ぎる時ハンガンはじっと見つめられた。
そしてふっと笑いかけられたように見えた。
シーナが通りかかったとき、前で合わせた両の手首が縛られているのが目に入った。
痩せこけ生気のないシーナの哀れな姿が目の前にあった。
シーナは誰とも目を合わせる様子はなく、サンコのすぐ後ろを歩く供の者が綱を持ち、背中を押されながらサンコから離れないように歩かされていた。
アーサもハンガンも思わず拳を握りしめた。
アーサとハンガンは全ての貴族の検閲をじりじりする思いで終えると、二人の門番とともに門内に入り門を閉めさせた。
二人の鳩尾を膝撃ちし気絶させて眠りの実を口に入れ奥へと急いだ。
廊下にもどこにも人がいなかった。
走り回って次々部屋をのぞき込むが、やはり武人一人も見当たらない。
「おかしい。何かあった…」
二人が次の部屋を開けたとき、そこにはこれほどの人間がいるのかと思うほど、人がぎっしりいて人垣ができていた。