第85話 第一節 覚醒 ー修業ー
文字数 1,386文字
森に着くと長老が待っていた。
シーナを見つめると、大きな喜びと深い安堵の表情を浮かべた。
長老とシーナは一瞬にしてそれぞれ待ち人に会えた感覚を共有していた。
長老の言葉は少なかった。
「よくここまで…」
シーナに向けてはそれだけで、長老はアーサや他の四人に向けて深く頭を下げ「ありがとうございました。感謝に尽きます…」と言った。
そして「どうか皆様も頂上におられる白蛇様を詣でていただきたい」と言った。
五人はすでにそのつもりであったことから揃って「よろしくお願い致します」と言った。
翌日の早朝、六人は健脚の長老の後を必死に付いていった。
久しぶりの山間の道、足の置き場所にも歩く速さにも六人はそれぞれ苦労し、長老の足取りに後れを取らなかったのはヤシマだけだった。
シーナも必死だった。
これを毎日やるのかと不安が過ったが、みんなに救われた命、五人に恩返しができる人間になりたい、人の役に立ちたいという思いで一歩一歩と足を進めた。
頂上に辿り着き祠を前にすると長老が祠に向かって手を合わせ、皆がそれに倣い従った。
ピリピリと空気が振動しゆらゆらと振れているかのような感覚が訪れた。
やがてなんとも爽やかな風が吹き、六人はその風に囲まれた。
それは色を成し、六人には長く白いゆったりと動く白い生き物に見えた。
その目が大きく赤く色づくと白蛇の姿となってさらに色を濃くし、六人は荘厳な気持ちになった。
するとシーナが歌い始めた。
「ルーーーーーーーールルルーーーーーー」
天から舞い降りるかのような澄み切った声が、山間に響き渡った。
そしてチマナがその歌に合わせ、舞い始めた。
その舞は流麗で、優雅に青い空を行く生き物を思わせ、見ている者には青を纏っているかのように見えた。
長老は歌わなかった。すでに引継ぎが成されたことを知ったからだ。
そして新たな『白蛇の力宿す者』の誕生を青虎が祝っているかに思えそれは確信へと変わっていった。
長老は感慨深かった。
この祠の前の子らの五人は侵略の民の末裔。その者たちが揃って白蛇神に詣でている。
これは新たな幕開けなのだ。
シーナは、これまでの伝統を受け継ぐだけではなく新しい時代を拓く力をも有している。
この者達との深い繋がりがそれを創り上げたのだ。
シーナの歌とチマナの舞は、長老と四人の仲間を包み込み、いつまでもこのままでいたいと思わせるほどの心地よい境地へと五人を誘(いざな)った。
そしてその日の夕刻には麓に降りて、山の幸で揃って食事を取った。
翌日からはシーナだけが毎日険しい山道を長老に従い上り下りし、白蛇神に参拝した。
シーナは弱音一つ吐かずこれを成し遂げ、山から下りてくると全員で歴史の詳細を学んだ。
修業に励むシーナは、日に日に見違えるほどに凛々しくなっていった。
「あれは本当にシーナなのかなぁ…」
ポツンとテナンが呟いた。
「それを言うなよ。 俺もそう思ってるのに…」とハンガンは言った。
「あれ、なんなの? シーナが頑張ってるのにあんたたちが寂しくなって弱音吐くなんて」とチマナは怒りだした。
「チマナが一番寂しそうだぞ」とヤシマが言った。
アーサが感慨深げに、
「僕はここで暮らした日々毎日上まで行ってたんだ。すごくきつかった。だから一番足腰が弱かったシーナがやり切っていることに驚いている」と呟いた。
シーナを見つめると、大きな喜びと深い安堵の表情を浮かべた。
長老とシーナは一瞬にしてそれぞれ待ち人に会えた感覚を共有していた。
長老の言葉は少なかった。
「よくここまで…」
シーナに向けてはそれだけで、長老はアーサや他の四人に向けて深く頭を下げ「ありがとうございました。感謝に尽きます…」と言った。
そして「どうか皆様も頂上におられる白蛇様を詣でていただきたい」と言った。
五人はすでにそのつもりであったことから揃って「よろしくお願い致します」と言った。
翌日の早朝、六人は健脚の長老の後を必死に付いていった。
久しぶりの山間の道、足の置き場所にも歩く速さにも六人はそれぞれ苦労し、長老の足取りに後れを取らなかったのはヤシマだけだった。
シーナも必死だった。
これを毎日やるのかと不安が過ったが、みんなに救われた命、五人に恩返しができる人間になりたい、人の役に立ちたいという思いで一歩一歩と足を進めた。
頂上に辿り着き祠を前にすると長老が祠に向かって手を合わせ、皆がそれに倣い従った。
ピリピリと空気が振動しゆらゆらと振れているかのような感覚が訪れた。
やがてなんとも爽やかな風が吹き、六人はその風に囲まれた。
それは色を成し、六人には長く白いゆったりと動く白い生き物に見えた。
その目が大きく赤く色づくと白蛇の姿となってさらに色を濃くし、六人は荘厳な気持ちになった。
するとシーナが歌い始めた。
「ルーーーーーーーールルルーーーーーー」
天から舞い降りるかのような澄み切った声が、山間に響き渡った。
そしてチマナがその歌に合わせ、舞い始めた。
その舞は流麗で、優雅に青い空を行く生き物を思わせ、見ている者には青を纏っているかのように見えた。
長老は歌わなかった。すでに引継ぎが成されたことを知ったからだ。
そして新たな『白蛇の力宿す者』の誕生を青虎が祝っているかに思えそれは確信へと変わっていった。
長老は感慨深かった。
この祠の前の子らの五人は侵略の民の末裔。その者たちが揃って白蛇神に詣でている。
これは新たな幕開けなのだ。
シーナは、これまでの伝統を受け継ぐだけではなく新しい時代を拓く力をも有している。
この者達との深い繋がりがそれを創り上げたのだ。
シーナの歌とチマナの舞は、長老と四人の仲間を包み込み、いつまでもこのままでいたいと思わせるほどの心地よい境地へと五人を誘(いざな)った。
そしてその日の夕刻には麓に降りて、山の幸で揃って食事を取った。
翌日からはシーナだけが毎日険しい山道を長老に従い上り下りし、白蛇神に参拝した。
シーナは弱音一つ吐かずこれを成し遂げ、山から下りてくると全員で歴史の詳細を学んだ。
修業に励むシーナは、日に日に見違えるほどに凛々しくなっていった。
「あれは本当にシーナなのかなぁ…」
ポツンとテナンが呟いた。
「それを言うなよ。 俺もそう思ってるのに…」とハンガンは言った。
「あれ、なんなの? シーナが頑張ってるのにあんたたちが寂しくなって弱音吐くなんて」とチマナは怒りだした。
「チマナが一番寂しそうだぞ」とヤシマが言った。
アーサが感慨深げに、
「僕はここで暮らした日々毎日上まで行ってたんだ。すごくきつかった。だから一番足腰が弱かったシーナがやり切っていることに驚いている」と呟いた。