第93話 第一節 大改革 ーあいわ国ー
文字数 1,965文字
先住の民、侵略の民が相和す「あいわ国」の新しい国作りが始まった。
先住の民は以前の国の名前も取り戻した。
人々は、希望に沿って住まう場所を選んだ。
先住の民が急ごしらえで作った建物は造りが良く、それを生かして協力し合って新たな街づくりが進んだ。
シーナは、ハンガン、ヤシマは、アーサ、テナン、チマナ、ハンナ、届け物屋とその若衆、土器職人、アーサの父、ヤシマの父、りりの兄、呪術師カンなどを首長として任命し、『はくり』を施した。
その中にはカムルや木材を運んでいた木こりの男達もいた。
首長は各分野で、精力的に働いた。
三年をかけてそれぞれの町が定着したとき、良い加減で先住の民と移動してきた民が入り交った。
アーサ
アーサは、学舎で学ばせる本つくりに着手した。
全ての民が様々な知識を得られるようにしたかった。
アーサの本作りは、農業、漁業、ものづくり、流通、商業と多岐に渡り、その分野の粋を集めることに奔走した。
特に歴史の本については力を入れた。
様々な出来事の経緯が明かされ、秘されていた多くの謎が解けていくことで人々の考え方が大きく転換することがわかったからだった。
アーサの仕事を助けたのは、アーサの父とハンナとルアンだった。
『白蛇の力宿す者』の修業を続けてシーナが得た療法は、ルアンを病から解き放った。体力をつけ姉の付き添いを必要としなくなったルアンは、その向学心と物覚えの良さから、アーサの片腕となって自ら取材に出向くようになった。
ハンナは、シーナに謝罪と感謝の意を表し国のために働きたいと伝えた。
シーナは、アーサを手伝い集まった膨大な資料の整理をしてあげてほしいと言った。
ヤシマ
ヤシマは武人をまとめ民を守る組織を作った。
民守団と名付け悪をはたらく者を取り締まり、税納めの道中の警護に当たり災害があった時に駆け付け救助する仕事の中核となった。
その陰には父親の助言が大きく働いていたことに間違いない。
国つくりのための税制は平等になり、人々の暮らしは格段と楽になった。
余暇ができ娯楽に参加し自由にどこにでも行けるようになり、民主団の存在は人々の移動を安心で楽しいものに変えた。
チマナ
チマナは、その道に熟達した経験者を集い相談して、商人の暮らしや仕事の仕組みを整えた。
商人を目指す若者には、指導者の講演を企画し援助協力できるようにした。
一方で、改めて舞いが好きな子どもを集めて歌舞劇団を創った。
巫女舞いを中心に各地で披露し、引く手あまたとなっていた。
政より歌舞が性に合っていると言って政は信頼する人々に任せ、各地を駆け回った。
ハンガン
ハンガンは農地を平等に分けるのに日々を費やした。
多くの人員を割いて土地の質を調べ測量し、平等に分けるように手配した。
農業の技術の伝達は、働いていた先住の民が講師となって指導し、職人たちと農具の開発、水道建築などを協議し実施した。
テナン
テナンは、ものづくりの人々が相互に助け合い、連携する組織を作った。
農業、漁業、林業、商業、様々な部署と連携させ、職人が仕事を容易に獲得し、技能の伝達、協力できるよう計らった。
技能者育成の指導者として、世話になった土器つくりの親方を迎えた。
その一方で、呪術師カンとともに人の心を読み取り癒す、呪術の仕事で各地を回り始めた。
呪術師カンはテナンを後継に選び、テナンは正式に師事してカンについて回った。
テナンは、バンナイとサナのもとに行くと、念願の鷹使いの技も習得したのだった。
数年を経た春の日の朝だった。人々はこぞって外に出た。
空は澄み渡り心地よい風が吹いていた。
なんという気持ちのいい朝なのだろう!
人々は一様にそう思った。
次々に外に出てきて、互いに笑顔で挨拶を交わした。
「あ」
空を見上げた幼子が、空に向かって手を上げた。
そこには、真っ白な雲が俄かに出現したと思うとみるみるその姿は白蛇の形を辿り大きく広がり、シーナを巻いたようにとぐろを巻き、頭をもたげ地上を見下ろしているかのような形になった。
人々は瞬きをしてその姿を何度も確かめた。
やがて口元から下がった舌のようなものが赤く色づいたとき、白蛇神であることを確信した。
人々は手を合わせ皆笑顔になっていた。
すると、そのすぐ横が見る間に青く色づき徐々に象(かたど)られ、青虎の様相を呈してきた。
目のあたりが徐々に黄色味を帯び、やがてくっきりと目の形になった。
人々は手を合わせ、この上ない喜びを感じた。
その空を彩った壮観な様は、時間にすれば十数秒でであったかもしれないが、全ての人々の目に心に刻印された。
白蛇と青虎は、人々を祝福するために姿を現したことを悟り、またそれが二度と見ることのできないものだということも同時に悟った。
先住の民は以前の国の名前も取り戻した。
人々は、希望に沿って住まう場所を選んだ。
先住の民が急ごしらえで作った建物は造りが良く、それを生かして協力し合って新たな街づくりが進んだ。
シーナは、ハンガン、ヤシマは、アーサ、テナン、チマナ、ハンナ、届け物屋とその若衆、土器職人、アーサの父、ヤシマの父、りりの兄、呪術師カンなどを首長として任命し、『はくり』を施した。
その中にはカムルや木材を運んでいた木こりの男達もいた。
首長は各分野で、精力的に働いた。
三年をかけてそれぞれの町が定着したとき、良い加減で先住の民と移動してきた民が入り交った。
アーサ
アーサは、学舎で学ばせる本つくりに着手した。
全ての民が様々な知識を得られるようにしたかった。
アーサの本作りは、農業、漁業、ものづくり、流通、商業と多岐に渡り、その分野の粋を集めることに奔走した。
特に歴史の本については力を入れた。
様々な出来事の経緯が明かされ、秘されていた多くの謎が解けていくことで人々の考え方が大きく転換することがわかったからだった。
アーサの仕事を助けたのは、アーサの父とハンナとルアンだった。
『白蛇の力宿す者』の修業を続けてシーナが得た療法は、ルアンを病から解き放った。体力をつけ姉の付き添いを必要としなくなったルアンは、その向学心と物覚えの良さから、アーサの片腕となって自ら取材に出向くようになった。
ハンナは、シーナに謝罪と感謝の意を表し国のために働きたいと伝えた。
シーナは、アーサを手伝い集まった膨大な資料の整理をしてあげてほしいと言った。
ヤシマ
ヤシマは武人をまとめ民を守る組織を作った。
民守団と名付け悪をはたらく者を取り締まり、税納めの道中の警護に当たり災害があった時に駆け付け救助する仕事の中核となった。
その陰には父親の助言が大きく働いていたことに間違いない。
国つくりのための税制は平等になり、人々の暮らしは格段と楽になった。
余暇ができ娯楽に参加し自由にどこにでも行けるようになり、民主団の存在は人々の移動を安心で楽しいものに変えた。
チマナ
チマナは、その道に熟達した経験者を集い相談して、商人の暮らしや仕事の仕組みを整えた。
商人を目指す若者には、指導者の講演を企画し援助協力できるようにした。
一方で、改めて舞いが好きな子どもを集めて歌舞劇団を創った。
巫女舞いを中心に各地で披露し、引く手あまたとなっていた。
政より歌舞が性に合っていると言って政は信頼する人々に任せ、各地を駆け回った。
ハンガン
ハンガンは農地を平等に分けるのに日々を費やした。
多くの人員を割いて土地の質を調べ測量し、平等に分けるように手配した。
農業の技術の伝達は、働いていた先住の民が講師となって指導し、職人たちと農具の開発、水道建築などを協議し実施した。
テナン
テナンは、ものづくりの人々が相互に助け合い、連携する組織を作った。
農業、漁業、林業、商業、様々な部署と連携させ、職人が仕事を容易に獲得し、技能の伝達、協力できるよう計らった。
技能者育成の指導者として、世話になった土器つくりの親方を迎えた。
その一方で、呪術師カンとともに人の心を読み取り癒す、呪術の仕事で各地を回り始めた。
呪術師カンはテナンを後継に選び、テナンは正式に師事してカンについて回った。
テナンは、バンナイとサナのもとに行くと、念願の鷹使いの技も習得したのだった。
数年を経た春の日の朝だった。人々はこぞって外に出た。
空は澄み渡り心地よい風が吹いていた。
なんという気持ちのいい朝なのだろう!
人々は一様にそう思った。
次々に外に出てきて、互いに笑顔で挨拶を交わした。
「あ」
空を見上げた幼子が、空に向かって手を上げた。
そこには、真っ白な雲が俄かに出現したと思うとみるみるその姿は白蛇の形を辿り大きく広がり、シーナを巻いたようにとぐろを巻き、頭をもたげ地上を見下ろしているかのような形になった。
人々は瞬きをしてその姿を何度も確かめた。
やがて口元から下がった舌のようなものが赤く色づいたとき、白蛇神であることを確信した。
人々は手を合わせ皆笑顔になっていた。
すると、そのすぐ横が見る間に青く色づき徐々に象(かたど)られ、青虎の様相を呈してきた。
目のあたりが徐々に黄色味を帯び、やがてくっきりと目の形になった。
人々は手を合わせ、この上ない喜びを感じた。
その空を彩った壮観な様は、時間にすれば十数秒でであったかもしれないが、全ての人々の目に心に刻印された。
白蛇と青虎は、人々を祝福するために姿を現したことを悟り、またそれが二度と見ることのできないものだということも同時に悟った。