第56話 第一節 なぜそこに ー的中ー
文字数 1,065文字
青虎はそのまま山に向かっていった。
白蛇の姿は跡形もなく消えていた。
ハンガンは、シーナとチマナに起きたことを目の当たりにして気付くと木から飛び降りていた。
走っている間にチマナは消え青虎となっていた。
シーナ目指して人をかき分けようやくシーナにたどり着いたハンガンは、白蛇から解き放たれ意識を失いくずおれたシーナを倒れる一瞬早く受け止めた。
ハンガンの膝には気を失って静かに横たわるシ―ナがいた。
「その子を返してもらいたい」
ふいに声をかけられ後ろを振り返ると、華やかな姿の男が立っていた。
「あなたは笛を吹いていた…」
「そうだ。その子は当家の大事な家人だ。このまま連れ帰る」
サンコは突き放すように言った。
「お待ちください。あなたはシ―ナをどうするつもりですか!」
「シ―ナ? なぜ名前を知っているのだ。この子の身もとは探索してもわからなかった。なぜお前が知っているのだ」
ハンガンは何も言わなかった。
「王を射た者の仲間か。お前たちは何者だ」
そこへ「サンコ様お支度ができております。皆さまがお待ちです」と家人とみられる数名の男たちが走り寄ってきた。
「慌てるでない。逃げる民で通りは溢れている。いま急いだところで人を避ける手間で待たされるが落ちだ。武人も王を失って混乱している。こちらに向かってくることはないから安心しろ」と家人をたしなめハンガンに向かい
「私は貴族だ。中浜宗家の当主を継ぐ者。シ―ナは当家の者。引き取る」と言った。
「シ―ナをどうするおつもりですか。お聞かせください。シ―ナの命を…」
ハンガンの強いまなざしを見て、サンコは「シ―ナの身は当家が守る。これまでもそうであったしこれからもそうだ。お前がここで見た通りだ。お前の方こそ我が家中のシーナをどうする気だ」と言った。
この男がここまで言うのならシーナの身は連れて行くよりむしろ安全なのではないか…
自分はこれからヤシマとチマナを探さなければならない。
シーナを戦場に背負ってはいけない。
シーナと一言も交わせないまま再び別れるのはつらかったが、シーナの歌とこの男の笛は美しい響きを奏でていた。
それを信じてハンガンは決断した。
「わかりました。シーナをよろしくお願い致します」とハンガンは言った。
サンコはふっと笑った。
サンコは家人を呼ぶとシーナを運ばせた。
ハンガンはシーナのぬくもりの残った手のひらを握りしめると、シーナをいま引き取ってやれない悔しさを胸に、ヤシマ、武人たち、そしてヤシマを追っただろう青虎のいる山を目指して走りだした。
白蛇の姿は跡形もなく消えていた。
ハンガンは、シーナとチマナに起きたことを目の当たりにして気付くと木から飛び降りていた。
走っている間にチマナは消え青虎となっていた。
シーナ目指して人をかき分けようやくシーナにたどり着いたハンガンは、白蛇から解き放たれ意識を失いくずおれたシーナを倒れる一瞬早く受け止めた。
ハンガンの膝には気を失って静かに横たわるシ―ナがいた。
「その子を返してもらいたい」
ふいに声をかけられ後ろを振り返ると、華やかな姿の男が立っていた。
「あなたは笛を吹いていた…」
「そうだ。その子は当家の大事な家人だ。このまま連れ帰る」
サンコは突き放すように言った。
「お待ちください。あなたはシ―ナをどうするつもりですか!」
「シ―ナ? なぜ名前を知っているのだ。この子の身もとは探索してもわからなかった。なぜお前が知っているのだ」
ハンガンは何も言わなかった。
「王を射た者の仲間か。お前たちは何者だ」
そこへ「サンコ様お支度ができております。皆さまがお待ちです」と家人とみられる数名の男たちが走り寄ってきた。
「慌てるでない。逃げる民で通りは溢れている。いま急いだところで人を避ける手間で待たされるが落ちだ。武人も王を失って混乱している。こちらに向かってくることはないから安心しろ」と家人をたしなめハンガンに向かい
「私は貴族だ。中浜宗家の当主を継ぐ者。シ―ナは当家の者。引き取る」と言った。
「シ―ナをどうするおつもりですか。お聞かせください。シ―ナの命を…」
ハンガンの強いまなざしを見て、サンコは「シ―ナの身は当家が守る。これまでもそうであったしこれからもそうだ。お前がここで見た通りだ。お前の方こそ我が家中のシーナをどうする気だ」と言った。
この男がここまで言うのならシーナの身は連れて行くよりむしろ安全なのではないか…
自分はこれからヤシマとチマナを探さなければならない。
シーナを戦場に背負ってはいけない。
シーナと一言も交わせないまま再び別れるのはつらかったが、シーナの歌とこの男の笛は美しい響きを奏でていた。
それを信じてハンガンは決断した。
「わかりました。シーナをよろしくお願い致します」とハンガンは言った。
サンコはふっと笑った。
サンコは家人を呼ぶとシーナを運ばせた。
ハンガンはシーナのぬくもりの残った手のひらを握りしめると、シーナをいま引き取ってやれない悔しさを胸に、ヤシマ、武人たち、そしてヤシマを追っただろう青虎のいる山を目指して走りだした。