第65話 第三節 回復 ー驚嘆ー
文字数 1,484文字
しばらくすると、ドタバタいう足音が聞こえ勢いよく若い男達が部屋に飛び込んできた。
「親方っ ただいま戻りました」
「おう、帰ってきたか」
「大変ですよ、親方。すごいこと起こりましたよ」
「そうなんですよ。すごいのなんのって。あ、坊ちゃんの恩人さん起きられたんですね」
「こんちわーっす」
皆が目をキラキラ輝かせとびきり明るい声で話す。
テナンは自分も努めて明るく「こんにちは。お世話になっています」と返した。
自分と同じ年くらいの者もいた。
「親方、すごいんですよ。聞いてくださいよ」
「しょうがねぇなあ言ってみろよ、聞いてやるよ。いったい何が起こったんだ?」
「王様が亡くなられました。それも矢で射られて…」
「なんだぁ? そんなことあるわけねぇだろ。あんなにたくさんの武人に守られていてよ、矢で射られるなんて…」
テナンは身を乗り出した。
「それだけじゃないんです。」
「え? それだけじゃない?」
「ここからがほんとに不思議な話です。でも親方、ほんとにほんとに俺らみんな、この目で見てきたことなんですから、腰抜かさないで聞いてくださいよ」
「もったいつけてんじゃねえよ。早く話せ、馬鹿!」
男達は親方に話すのが楽しくて仕方がないというように、もったいつけて話す役割を奪いあうように代わる代わる口を開き演舞会であったことの顛末を語った。
話を一通り聞き終えた親方は話の内容を信じていないようだった。
「なんだそりゃ。出し物かなんかじゃねぇのか。ついでに王も芝居してよ。とにかくお前らみんな騙されてんだよ!」
「そんなことありませんよ。ご近所さんもいましたから、後で聞いてくださいよ。みんな見てるんですから」
「その先もあるんです。武人たちがその女の子と大蛇を取り囲んで大蛇もろとも切り付けようとしたら、舞人の綺麗な女の子が飛び込んできて大蛇に抱きついて、武人の刃をその娘が受けちまって」
「そんな話信じろと言うのか。お前ら、馬鹿だねえ」
「親方、あきれるのは後です。聞いて聞いて」
「なんとなんと切り付けられた娘がみるみる青虎に変わっちまって、武人たちと戦い始めたんですよ」
若い衆は目を輝かせて話をした。
「……」
「あれ、親方どうしました?」
「続き!」
「そのとき矢が飛んできて王に突き刺さったんです。その間に白蛇が青虎に巻きついて青虎が元気になって王の所に飛んでいって王にかぶさったんですよ。その後は俺達逃げてきたからわかりません。青虎と武人たちが戦ってて、俺たちも巻き込まれたら大変なことになると思って…」
「そうかぁ。まぁ信じられない話だが、本当だとしたらとんでもねぇことが起きたんだなぁ」
「王様が亡くなってしまってこれからどうなるんでしょう」
一人の若者が言った。
「ん? あの王が俺たちに何をしてくれた? 誰が王になったって同じだよ。いい暮らしは王家と貴族だけだ。奴婢たちを見てみろよ。あいつらをいけにえにして俺たちはそれなりの暮らしができているんだ。変わらねぇよ。こんなこと大きな声では言えないけどな。見回りの武人らに聞こえたら囚われて処刑されちまう。あぶねぇあぶねぇ」
テナンは考えていた。
自分が眠っている間にこんな大きな出来事が起こっていたなんて。
でも世の中で何が起こっていようと自分のやることは変わらない。
俺は必ず母さんを見つける。
自分がやらなければならないことを、自分が眠っている間に親方や若い衆が代わってやってくれた。
いま聞いただけでも一人で動いたら何倍もの日数がかかったことだろう。
そう思うと自分は幸運なのだと思った。
「親方っ ただいま戻りました」
「おう、帰ってきたか」
「大変ですよ、親方。すごいこと起こりましたよ」
「そうなんですよ。すごいのなんのって。あ、坊ちゃんの恩人さん起きられたんですね」
「こんちわーっす」
皆が目をキラキラ輝かせとびきり明るい声で話す。
テナンは自分も努めて明るく「こんにちは。お世話になっています」と返した。
自分と同じ年くらいの者もいた。
「親方、すごいんですよ。聞いてくださいよ」
「しょうがねぇなあ言ってみろよ、聞いてやるよ。いったい何が起こったんだ?」
「王様が亡くなられました。それも矢で射られて…」
「なんだぁ? そんなことあるわけねぇだろ。あんなにたくさんの武人に守られていてよ、矢で射られるなんて…」
テナンは身を乗り出した。
「それだけじゃないんです。」
「え? それだけじゃない?」
「ここからがほんとに不思議な話です。でも親方、ほんとにほんとに俺らみんな、この目で見てきたことなんですから、腰抜かさないで聞いてくださいよ」
「もったいつけてんじゃねえよ。早く話せ、馬鹿!」
男達は親方に話すのが楽しくて仕方がないというように、もったいつけて話す役割を奪いあうように代わる代わる口を開き演舞会であったことの顛末を語った。
話を一通り聞き終えた親方は話の内容を信じていないようだった。
「なんだそりゃ。出し物かなんかじゃねぇのか。ついでに王も芝居してよ。とにかくお前らみんな騙されてんだよ!」
「そんなことありませんよ。ご近所さんもいましたから、後で聞いてくださいよ。みんな見てるんですから」
「その先もあるんです。武人たちがその女の子と大蛇を取り囲んで大蛇もろとも切り付けようとしたら、舞人の綺麗な女の子が飛び込んできて大蛇に抱きついて、武人の刃をその娘が受けちまって」
「そんな話信じろと言うのか。お前ら、馬鹿だねえ」
「親方、あきれるのは後です。聞いて聞いて」
「なんとなんと切り付けられた娘がみるみる青虎に変わっちまって、武人たちと戦い始めたんですよ」
若い衆は目を輝かせて話をした。
「……」
「あれ、親方どうしました?」
「続き!」
「そのとき矢が飛んできて王に突き刺さったんです。その間に白蛇が青虎に巻きついて青虎が元気になって王の所に飛んでいって王にかぶさったんですよ。その後は俺達逃げてきたからわかりません。青虎と武人たちが戦ってて、俺たちも巻き込まれたら大変なことになると思って…」
「そうかぁ。まぁ信じられない話だが、本当だとしたらとんでもねぇことが起きたんだなぁ」
「王様が亡くなってしまってこれからどうなるんでしょう」
一人の若者が言った。
「ん? あの王が俺たちに何をしてくれた? 誰が王になったって同じだよ。いい暮らしは王家と貴族だけだ。奴婢たちを見てみろよ。あいつらをいけにえにして俺たちはそれなりの暮らしができているんだ。変わらねぇよ。こんなこと大きな声では言えないけどな。見回りの武人らに聞こえたら囚われて処刑されちまう。あぶねぇあぶねぇ」
テナンは考えていた。
自分が眠っている間にこんな大きな出来事が起こっていたなんて。
でも世の中で何が起こっていようと自分のやることは変わらない。
俺は必ず母さんを見つける。
自分がやらなければならないことを、自分が眠っている間に親方や若い衆が代わってやってくれた。
いま聞いただけでも一人で動いたら何倍もの日数がかかったことだろう。
そう思うと自分は幸運なのだと思った。