第21話 石見犬フィーバー!
文字数 938文字
・・・・・・・・
それは、昭和31年に発行された「石見犬(いわみけん)」という本だ。
「石州犬」はどうやら地元では「石見犬」と呼ばれていたようだ。
この本は、国会図書館のデータベースで見つけ、島根県立図書館にあることがわかった。しかし、「持ち出し不可」ということで、松江市の島根県立図書館で、ようやく目にすることができた。
この本によれば、昭和30年代、島根県石見地方の「益田市」では、石州犬(石見犬)の保存と繁殖に積極的に取り組んでいたらしい。益田といえば、石州犬「石号」の産地とも言われている。
その益田市は、県西部の石見地方の中でも、西側で山口県に接している。
ちなみに私が住んでいるのは、江津市(ごうつし)の山間部である。
発行元は、益田市教育委員会内の「石見犬保存会」。
当時の市長や教育長の祝辞もあり、市民が投稿した石州犬にまつわるエッセイなどが掲載されている。また、市内の商店や企業などの全面広告も多く、なんと100人以上もの役員や会員、市民の方々の名前と、簡易な住所まで記載されている。
まさに官民をあげて「石見犬フィーバー!!」が、当時の益田市で巻き起こっていたことが、うかがえるものだった。
これは、戦前に中村鶴吉さんが、石州犬を山出し犬として送り出したことにより、その名声が広まり、戦後「石州犬が欲しい」という問い合わせが、全国から益田市に殺到したのだろう。
何しろ、石州犬「石号」のひ孫「中号」が日本犬界を大いに席巻している時分である。
ただ、この当時にどれだけ純粋な石州犬が残されていたかは疑問だが。
また、この本は「創刊号」と書かれ、今後も継続の心意気が伺えるが、残念ながらこの一冊で終わったようだ。
しかし、これだけのフィーバーぶりでありながら、現在では、石州犬を知る人がほとんどいないとは、なんとも不思議な話だ。
昭和31年といえば約60年前。ここにお名前のある方で、ご存命の方もいらっしゃるかもしれない。少なくともこれだけの盛り上がりがあったのだから、この頃のことを覚えている人がいるだろう。
よし、益田に行こう!
そして、捜そう!!!
次号に続きます。