第36話 そうだ 東京、行こう。
文字数 786文字
東京市城東区大島2丁目764番地
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もちろん「東京市城東区」は、今は存在しない。この住所は、現在でいうとどこにあたるのだろうか。ネット上で古い地図を見たところ、「東京都江東区大島2丁目」までは確定できるが、当時と今とでは「番地」がまったく違う。
そこでダメ元で、江東区役所に電話をしようと思いたった。だが区役所で80年前の番地がわかるかな?
しかも昔とはいえ、人の家を捜すのだから「個人情報」に触れるのでは?
断られるかな?
なんて言おう?
「日本犬を守った人を探しています・・」「地域振興活動です・・」
と散々、理論武装して電話をかけてみたのだ。
「すみません。江東区の住所で、昭和の初め頃の番地が、現在どの番地に該当するか知りたいのですが」
「はい、担当係に代わります」
「はい住民記録係です」
そんな係があるのか。さすが都会だな、と思いつつ、「東京市城東区・・・」と住所を伝えた。「少々お待ちください」と言われ、本当に少々の時間ですぐに回答してくれた。
「それは現在の大島二丁目の○○番と○○番と○○番近辺です」
へー、すぐにわかるものなのだ。しかも簡単に教えてくれるものなんだと、ちょっと肩すかしを食らった感じである。
さっそくグーグルマップで見ると、どうやら今は中華料理店さんがあるようだ。地図を拡大してご近所を一軒一軒、丹念にチェックした。老眼を凝らして、どこかに、中村さんという名の建物や店、また歯科医はないだろうか・・・。まったく見当たらない・・・。
歯医者さんはある。でも、中村さんではない。
しつこいほど、地図を凝視するうちに、どうしても現場に行きたくなってきた。
国立国会図書館で、確認したい資料もあった。
できれば、日本犬保存会にもご挨拶に行きたい。
そうだ 東京、行こう。
次号に続きます。