第89話 強運のDNA!?
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もちろん、それもあったろう。
しかし、一番は、日本犬としての「本質」が素晴らしかったことである。良い子に恵まれたのは、偶然ではなく必然で、石には、優れた「本質」を子孫に伝えるという「遺伝力」もあったのだ。
「遺伝力」。これは、金指さんに教えていただいた。
また「石」が、他の山出し犬と違って、猟犬として5年間も、自然に恵まれた山野を駆け巡っていたことも、伝染病に負けない強靭な体を作ってくれただろう。そして、その「本質」を高め、「遺伝力」を磨いてくれたことだろう。
そして今回、甲府で坂口さんに伺った話から、まさに「遺伝力」により、その「強運」は、アカニや紅子に受け継がれていたこともわかった。
だから、あの甲府の空襲からも奇跡的に逃れることができたのだ。
さらには、その子「中号」。
幼犬時には、ジステンパーで生死の淵を3カ月もさまよった。
回復後、「東京支部展」で大型犬、中型犬を抑えて、最優秀の「全犬総合一席」を獲得。
その翌月には、「本部展覧会」でまたもや大型犬、中型犬を抑えて、「全犬総合一席・総理大臣賞」を受賞し、その名声は一挙に全国に広まった。
しかし、その後、雑種大型犬に襲われ、血まみれの格闘の末、全治1カ月の瀕死の重傷を負っているのだ。
このエピソードで私が驚くのは、たまたま中号が元気な短い期間に、タイミングよく「支部展」「本部展」と、2つの展覧会が開催されていることだ。
少しでも時期がずれていたら、この快挙はなかっただろう。
「時を味方にする」、これもまた運の強さだ!
こうして、石の持つ「強運のDNA」は、脈々と繋がり、現在の60万頭の「柴犬」にも受け継がれているはずだ。
果たして、「強運」という抽象的なものに、「DNA」などというものが存在するだろうか・・。
学のない田舎のおばあさんの私には、難しいことはわからないけれど、ここ数年、石号を、石号の子孫たちを、そして関わる人々を追いかけてきて、そう信じれば、納得のいくことばかりなのである。
だからこそ、日本だけでなく、世界的にもこんなに愛される、現在の柴犬の隆盛があるのだ。
次号に続きます。