第31話 熊狩りの猟犬
文字数 948文字
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博之さんのお話の中に出てきた「知り合いの方が書かれた文章」は、後日コピーをいただくことができた。そこには、信市さんのお父さんにあたる「浅治(あさじ)さん」(博之さんの曽祖父)の武勇伝が記されていた。
「(浅治さんは、「熊狩り」が得意な凄腕の猟師であったが)これは、『犬の神様』とまで言われた猟犬の手助けもあったらしい。この犬が『イチ』といって長く飼っておられたというが、その子が『ハチ』といって『石見犬の祖』とされたそうである」と、ある。
文中に「石見犬の祖」とあるが、これは「柴犬の祖」の間違いだと思われる。なぜなら、当時この辺りにいた地犬は、みな石見犬であったので「祖」であるわけはないだろう。
多分この「ハチ」という犬が「石号」として山出しされたのだろう。
そして「石号」もまた、信市さんとともに「熊狩り」をしたことだろう。あの勇敢な「ハンパない犬」中号には、この「犬の神様と呼ばれた熊狩りの猟犬」の血が流れていたのだ・・。
この日は、もう7月の終わりで、私たちが車を止めた場所から、高台の家までの数段の田んぼには、緑色の稲が、風に揺れキラキラ光っていた。今でも、博之さんは毎年ここでお米を作っているのだそうだ。
こういう光景を見るとついつい「柴犬の聖地・石号米」とか、ブランド化したらいいのになど「地域振興バカ」のプチ妄想がよぎる。
ところで、今回は我が家の山陰柴犬サニーも連れてきたのだが、猟犬だった先祖の血が騒ぐのか、犬が変わったように大興奮する。博之さんにも、すぐになついた。信市さんと石もこうやって触れ合っていたのだろうな。
【草刈りの合間の下山博之さんと山陰柴犬サニー】
このようにして、ありがたいことに、石号の繁殖者と言われる下山信市さんの家にたどりつき、ご子孫にもお会いできた。
そうなると、次に気になるのが、石号を山出しした謎の男「エンペーカー中村鶴吉」である。
実は、中村鶴吉さんについても、興味深い事実を発見したのだった!
次号に続きます。