第45話 なぜこんな貴重なものを・・
文字数 1,196文字
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それは、「石号の写真」であった。
日本犬の文献でよく見かける左向きの立ち姿の石号。右側には、エンペーカー中村鶴吉氏らしき靴とコートが写っているおなじみの写真だ。
これまで、何度も見たことはあるが、どれも小さくて、粗めの写真ばかりであった。
それが、送っていただいたのは、縦20センチ、横26センチもある大きく鮮明なもので、なんと裏書きのコピーまで添えてくださっていた。
裏書きには、この写真を撮影された当時の動物写真家の第一人者「平島藤寿さん」のスタンプが押され、中村鶴吉さんの名まで記されていた。これは、昭和11年6月に開催された日本犬保存会の関西展覧会で、石号が小型犬優秀賞を受賞した時の記録写真であるようだ。
これは私の一生の宝物になるだろう・・。
ありがたく、そして申し訳ない思いでいっぱいだ。
(この写真は、その後、多くのマスコミの方々に頼まれて、日本犬保存会の許可をいただき、広く世に出て行くこととなる。ここ数年、皆さんが、新聞や雑誌、テレビやネットでご覧になっている石号は、この時に岡田さんにいただいた写真がもとである。それにしても、なぜ、見ず知らずの私に、こんな貴重なものを、しかもお願いしてもいないのに、くださったのだろうか。今もって、不思議でしょうがない・・)
その後、岡田さんとは直接お電話で何度もお話しさせていただいた。
内容は、具体的な個別の日本犬のお話から、日本犬保存会のことなど多岐に渡り、いろいろと教えてくださった。
日本犬のこともまったく知らない私などが、聞きかじりで調査活動することが、ご専門の方からすれば危なっかしくてしょうがないのかもしれない。
例えば
「○○という本は読みましたか?」「はい。図書館で読みました」と、答えると。
「本気で日本犬を勉強するならば、借りるのではなく、本は買って自分のものにすること」というご指導もいただいた。
正直、私は「日本犬」を研究している訳ではない。あくまでも石州犬・石号の「地域資源としての可能性を模索」しているのである。
なので、そういう本の必要性は、低く、かつ高額だし、そこまでする必然性は、無いと思っていた。
しかし、岡田さんのおっしゃることは、ごもっともだ。「基本には、忠実でないといけない。これは大事なことなのだ。今後きっと役に立つ」と、思い素直に「はい」と答えて、アマゾンなどで探しあて、何冊もの絶版本を購入したが、実際、勉強になることばかりであった。
中村鶴吉さんについては、本に書かれている以上の具体的なお話は聞けなかったけれど、岡田さんに勉強させていただいたことは、役立つことばかりであった。
お会いしたこともないのに、見ず知らずの田舎のおばさんにご親切にしてくださり、本当に心から感謝している。
次号に続きます。