第10話 ウソかマコトか?
文字数 848文字
そんなバカな、ありえない。
でも、もし本当だったら……。
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私は、興奮気味に夫に声をかけた。
「ちょっ、ちょっと、ここに島根の犬が、柴犬のルーツみたいなこと書かれてるんだけど、本当かな? すごくない? すごいよ」。
夫(ハチ)は、パソコンに向かったまま、「へえ、そう…」と、どうでもいい返事。
サニーは、その足元で気持ちよさそうに眠っている。
島根出身でもない私が、こんなに驚愕してコーフンしているのに、当の出身者である夫は、あまりの無関心。
これって、すごいことじゃないのかな…。
いや、すごいよ。すごい…。
興味ゼロの夫を無視して、私はとりつかれたように、様々な検索ワードを打ち込んでゆく。すると、別のホームページでも、同じような内容を見つけた。発信しているのは、みんな日本犬に詳しい人たちのようだ。
そんな複数のホームページ情報をまとめると次のようになる。
●柴犬の名犬の雄の血統を追っていくと、ただ一頭の犬にたどりつく。
●それは昭和の初め、島根県石見地方の益田の山奥から山出しされた石州犬の「石(いし)」という犬。
●この「石」をはじめ、優れた石州犬を山出しして世に知らしめたのが、そこを故郷とする「エンペーカー中村鶴吉」という人。
●この人は、東京の歯科医であった。
●その後、石州犬は絶滅したが「石」は、現在の柴犬の基礎となった。
にわかには信じられないことだ。
ネットの情報は、玉石混淆だからウソかもしれない。
しかし、日本犬に詳しそうな人たちが、揃って発信しているのだから、まったくのデタラメとは思えない。
ならば、真実か?
ただ、素朴な疑問として、血統をさかのぼると、どの柴犬も「同じ犬」に辿り着くというのが不思議だ。
さらには、その始まりが「島根の犬」というのも驚きだ。でも、これが本当なら地元の人が知らないわけはない。
島根で暮らして18年目になるが、そんな話は、一度も聞いたことがない。
第11話に続きます