第33話 妄想「石号物語」
文字数 543文字
頭の中で得意の『妄想』が広がっていく。
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田舎の坂道を汗びっしょりになり、自転車を漕ぐ男。「はあ、はあ、はあ・・」
とても、焦っている、急いでいる。
場面変わって、駅の風景。
黒いソフト帽を目深にかぶり、洒落たコートを羽織った男が、蒸気機関車の昇降口に佇んでいる。
クールな横顔・・。だが表情は見えない。
さっきの自転車の男が、ある古民家の玄関を叩いている。庭先に毛皮が干してあり、猟師の家だとわかる。
ドン、ドン、ドン・・・何か叫んでいるが、声は聞こえない。
再び列車の男。男の足元には、大きな木の箱が。
箱の中からは、「クーン、クーン」という鳴き声が。・・犬だ。
玄関を叩く男の姿が、小さくなっていき、風景が広がっていくと、そこは山の中の一軒家だとわかる。
汽笛が鳴った。
「ポーーッ・・」。
「ガタン」と列車が揺れ静かに動き出す。
蒸気機関車がホームから離れて遠ざかっていく・・・。
徐々に小さくぼやけていくその列車の後ろ姿。
そこに、どーん!と、タイトルが浮かび上がる。
『柴犬の祖・石号物語』
なーんちゃって!
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さてさて、現実に戻り、私は、すぐに益田市役所の松本泰典さんに連絡をした。
次号に続きます。