第32話 タッチの差!
文字数 834文字
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「日本犬保存会創立五十周年史」という昭和53年に発行された非売品の本がある。
初めは、柳尾さんにお借りしてその存在を知ったのだが、どうしても入手したくなり、ネット上の古書店で探して購入したものだ。
上下巻合わせて、1812ページという分厚く、重い本だ。
これは、日本犬保存会が発行した昭和7年から53年までの会誌のダイジェスト版である。
かなり貴重な資料で、多くの学びや発見があったのだが、この中で私が一番驚いたのは、島根支部の岡崎守男さんという方による「島根支部創立者をしのぶ」という追悼文であった。
昭和44年、日本犬保存会島根支部の創立者であり、益田市で幼稚園を経営されていた「遠田安道さん」という方が亡くなった際に、この方を偲んで岡崎さんが寄稿した文章である。
この中に、中村鶴吉さんや「石号」に関して、次のような事が記されていたのだ。
◎中村鶴吉氏は、三保三隅(みほみすみ)駅前で、歯科医をされていたが、後に東京へ転出した人である。
◎遠田安道氏は、石見の山中を自転車で「柴犬散策中」に、下山信市さん方で素晴らしい石見犬を見つけた。
◎その後、下山信市さん方へ譲り受けたいと向かったが、時すでに遅く、その犬は、中村鶴吉氏の手に渡っていた。
というようなことが書かれていた。
中村鶴吉さんが、東京の歯科医だったことは、わかっていたが、なんと地元でも歯科医をされていたとは。美保三隅といえば、現在の浜田市である。
そうすると、中村さんは、益田市ではなくて浜田市の出身ということだろうか?
それより何より、実は石号が「タッチの差」で、東京に送り出されていたとは!!
もし、この遠田さんという方が、中村鶴吉さんより早くに「石号」を手にしていたら・・・・。
今頃、日本の柴犬は、どうなっていたことだろうか・・。
ドラマだわ~~~。
頭の中で得意の『妄想』が広がっていく。
次号に続きます。