第91話 石だから石像!
文字数 996文字
その2ヵ月後、信市さんは36歳の若さで亡くなっている・・。その子細は、ご親族もわからないという。
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声を詰まらせながら私は続けた。
「そして、それから80年たった今、石号は、現在の私たちに、こんな喜びや生きがいを与えてくれています。生きている時は、『柴犬の血統を守る』という功績を残し、死んでからは、後世の人々に『地域活性化』という夢を与えてくれる。しかも、80年もたってです。こんなすごい犬いませんよ」
私は、思わず「石、ありがとう!」と、二川の空に向かってそう叫んだ。
さて、最終回のテーマは「石号の地域資源としての可能性」。
ここでは、皆さんからいろいろなアイデアが飛び出した。たとえば「ドッグラン」「柴犬ファンの集い」「バッジなど石号グッ ズ」・・。
公民館長の小原さんからは「『石』だから、石像!」
「待ってました!」と、私は心で呟いた。
東京にいた頃、渋谷に住んでいたので、ハチ公には馴染みがある。石号の調査を進めるうちに、いつか益田駅前に、「石」の名にちなんで「石像」ができるといいな〜。
そして、「東のハチ公、西の石号」な〜んて言われるようになるといいな〜・・。
と、得意の「地域振興バカ妄想」をしていたのである。
さすが、小原館長!
「素晴らしい!!」と、私。
「できるかしら?」と、館長。
「できます! きっと!!」。
地域活性化で、まったく異なる立場や個性の人間が、同じアイデアを思いつくときは、進むべき良い方向であることが多い。
そして実際に、その「石像」の話はトントンと進んでいったのだ。
番組最終回のフィナーレは、全員での「石州犬ISHI」の歌とダンスで締め括られた。
ケーブルテレビでは、このダンスを益田市民でリレーする作品や、地元のミュージカル劇団の皆さんに踊っていただく作品なども放送され、大いに盛り上げていただいた。
1年間続いた番組は、こうして賑々しく終了した。
この番組のおかげで、今では益田市民の多くの方に、地元の犬が「現在の柴犬の祖犬」であることを知っていただけた。ケーブルテレビの皆様には、心から感謝している。
さて、「石像」のお話だが、その後、小原館長は、石材店に見積もりを取ったり、具体的な相談をしたらしい。そんな3月のある日、お電話をいただいた。
次号に続きます。