第27話 石見犬の値段
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澄川昇さん(85歳)は、当時の「石見犬保存会」で、理事を務めておられた方である。ご自身も、石見犬を繁殖し、現在も柴犬を飼育されているとのこと。澄川さんには、次のような興味深いお話を伺うことができた。
「石見犬は、猟性が高く、実に賢い犬です。私も、猟に使っていました。そんな石見犬を保存しようと、最初は会に入っていたんですけどね。そのうちに、全国から『石見犬が欲しい』という問い合わせが多くありまして、それで、お金になるからと販売する人がいたんです。何しろ、高く売れましたから。当時、牛1頭の値段で売れるということで、繁殖に力を入れていた人もいます。牛1頭といえば、今でいうと60万から100万円くらいですからね・・。でも私自身は犬を売買するというのに抵抗がありました。だから途中で、この会からは退きました」
なんと、当時の石見犬(石州犬)は、そんなに高額だったのだ・・!
また、中村鶴吉さんについても伺うと、「名前はわかりませんが、そういう方が昔いたということは、聞いたことがありますね。そうそう、歯医者さんだったようですね。その中村さんのおかげで、石見の犬が当時、世に広まり、今の柴犬の祖犬となったのですから、郷土の誇りですね。感謝しています。ただ、昭和の初めといえば、私ですら生まれた頃なので、詳しいことはわかりません(笑)」とのことだった。
柳尾さんと澄川さんのお話から、石見犬は確かにいたこと。昭和30年代には、地元で大フィーバーもあったこと。
しかし、その頃にはもう純粋な石見犬は、ほとんど残っていなかったことがわかった。
心ある愛犬家たちは、その騒ぎを冷静に眺めていたようだ。
当時のことをご存知の方は、もう数少ない。今、この時に、皆さんのお話を伺えることは、本当にありがたいことだと思う。
ところで、この日は、我が家のサニーも連れて行っていたので、澄川さんが飼っている柴犬の輪(りん)ちゃんと並んで、信州系柴犬と山陰柴犬(共に女の子)のツーショットを撮ることができた。
一般に信州系柴犬はタヌキ顔、山陰柴犬はキツネ顔と言われるが、そう言われればそうかもしれない。
【信州柴犬と山陰柴犬の珍しいツーショット】
さて、その後7月に入って、益田市役所の松本さんから、職員有志の勉強会で、石州犬や石号の話をしてみませんかと、言っていただいた。
次号に続きます。