第103話 「平面」を「立体化」する困難
文字数 673文字
・・・・・・・・
と言うのも、神取さんは、石像を「石号の横向きの写真」をもとに作っておられるが、写っていないところは推測するしかない。
この一枚の写真から、実に精密な設計図を作成されていたが、平面を立体化するというのは、並大抵のことではないだろう。
しかも、石材は、万が一にも削り間違えたら、もう修正はきかないのだ。
特に、顔の表情は難しいだろう。「平面の横顔」を元に「立体の正面の顔」を想像するわけで ある。
参考になる資料や情報を、もっともっと提供しなければ! と、制作現場に行って痛感した。
その後、島根に帰ってから、資料を見直して、実際に石号を見たことのある愛犬家たちの声や、中村鶴吉さんが書いた石州犬の特徴などの資料をまとめてお送りした。
また、状態はあまりよろしくはないが、ある本の中で「石号晩年の正面写真」も見つけたのだが、これは果たして本当に石号なのだろうか・・。
柴犬についてお詳しい、武田雅志さんにお伺いすると、「この写真は石号で間違いありません。日本犬保存会の古い会誌に、渡辺ケンネルが広告を掲載していましたのが、同じ写真です。唯一の正面写真です」と、教えてくださった。
本当にこの方は、古い資料などもしっかりと読み込まれておられ、こういう時は、ついついご相談し、何度も助けていただいている。
また、日本犬保存会の役員もされておられる、柳尾さんにも実際に石像の制作現場をご覧いただきたいと思い、ご連絡してみた。
次号に続きます。