第17話 運の良い犬「石」
文字数 889文字
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昭和11年(1936年)、「石号」は、中村鶴吉さんによって、石見から山出しされ、純粋な小型日本犬として、日本犬保存会に登録された。そして、中村鶴吉さんから東京の佐藤武雄さんという人の手に渡っている。石号5歳の時である。
この年は、「柴犬」が国の天然記念物に指定された記念すべき年でもある。
その後、石号は、日本犬保存会主催の展覧会で、いくつかの賞を受賞している。
昭和13年末に、東京の石号と山梨のコロ号とが交配し、翌14年には、子犬が誕生。
コロ号は、四国から山出しされた黒柴で、「姿、形、毛並み良く素晴らしい犬である」と、高く評価されていた。
当時は、雌犬そのものが少なく、ただでさえ貴重な存在であったので、この出会いは、石にとって実にラッキーであった。
しかも、生まれた子犬アカは、わずか生後10カ月で出場した展覧会で、栄誉ある「日本犬保存会賞」を受賞。
「若犬としては、珍しいほどの落ち着きと気品があり、凛々しく気迫も充分。将来が楽しみな名犬である」と、審査員も絶賛するほどであった。
このアカ号こそ、のちに「正当な柴犬の源流犬」と言われ「不滅の種雄として柴犬史上に燦然と輝く」存在となっていく。
貴重な雌犬との出会い、そして、並外れて優秀な子犬の誕生。いわゆる「麗しき妻に恵まれ、優れた子にも恵まれて・・」という感じかな。
石号は、なかなか運の良い犬である。
そして石号が、柴犬の祖犬となった最大の要因は、ひ孫に「中(なか)」という不世出の名犬が誕生したことによる。
コロが山梨県の犬舎にいたため、中号は山梨で生まれたが、その後、長野県穂高の石川建平さんという人へ。さらに、長野県小布施の樋田秀男さんへと渡っている。
そして、樋田さんご夫妻の並々ならぬ深い愛情に包まれて、中号は素晴らしい成長を遂げていくのだが・・。
実は、この中号のエピソードが、すごいのだ。すごすぎる!!
もうとにかく、ハンパないのだ・・。
次号に続きます