第63話 「主婦の友」昭和12年5月号より
文字数 558文字
・・・・・・・・・
「全くのところ、私は犬が好きだから飼っているので、算盤を弾いてこれで儲けようなどなど考えたことはありません。
正直のところ、副業に犬を飼うなどという考えは、私はむしろ反対です。
このお話も、そういう点は第二のこととして読んでください。
実際また、そんな考えで犬を飼っても、決してうまくゆくものじゃありません。
犬を飼うのはちょうど、子供を育てるようなものです。
自分の子供を算盤を弾いて育てる人はいないでしょう。
時には、自分の身さえ犠牲にして、子のためを思う親心、私どもが、犬を育てる心構えも、これと少しも変わりません。
まず犬が好きなこと、
犬と一緒なら死んでもいいというくらいの熱心さが、初めて優れたものを作らせる力なのです。
(中略)
もう一度申し上げますが、犬を飼う人は犬が好きでなくてはいけません。
これから飼おうとなさる方に、特にこのことを申し上げておきます。」
(主婦の友 昭和12年5月号「小資本で儲けの多い流行の副業」より引用)
特集テーマをあっさりと否定する鶴吉さんも鶴吉さんだが、それをちゃんとそのまま掲載する主婦の友社もあっぱれ。
さて、ここから物語は、意外な方向へと転換していくのであった。
次号に続きます。