第62話 「軍医・中村鶴吉」さん
文字数 825文字
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「眞弓さんは『もし石が東京に出て子孫を残していなかったら、現在の柴犬はどうなっていただろう。日本の文化でもある柴犬は、鶴吉さんが守ったのでは?』と話します。東京で鶴吉氏のお孫さんと奇跡の面会を果たしたときには、涙ながらに鶴吉氏の功績を伝えました。」
まさに、私にとっては、奇跡的な面会だった。この場にたまたま朝日新聞の記者が立ち会っていたことも、これまた不思議なご縁である。
お孫さんにとって、鶴吉さんは、厳格なおじいちゃんの一面もあったようだ。そして、歯科医であり、軍医でもあり、社会的にもとても立派な方であった。
【お孫さんに提供していただいた「軍医姿の中村鶴吉さん」】
ただ、私がちょっと不思議なのは、戦後、ご自身が山出しされた石号が、柴犬の祖犬となり、石号の子孫が日本犬界を席巻していたことは、ご存じだったはず。まわりのご家族が、そのことを知らなかったのはなぜだろう。
きっと私なら「あの犬、私が島根から連れてきたの。石号を私が山出ししなかったら、アカ号も、中号もいない訳だし、何より今頃『柴犬』自体がどうなっていたでしょうね~」とか、ついつい自慢してしまいそうなものなのだけれど。
その後、鶴吉さんは、昭和60年、90歳で亡くなられたという。
しかし、今回の写真を見つけていただいたことによって、鶴吉さんの犬に対する想いを知ることができた。
実はこれまで見つけた捜査記録は、どれも報告書的なもので、そのお人柄や犬に対する想いに触れることができにくかった。しかし、今回の記事は主婦向けということもあってかわかりやすく優しい筆致であった。
ただ、「主婦の友」の特集記事テーマが「小資本で儲けの多い流行の副業」とあるのを見たときは、いささか不安になったのだが・・。
しかし、そこには鶴吉さんの想いがこのように綴られていた。
次号に続きます。