第63話 サッチョウから来た二人組を部長がブッコロしそうなんだが
文字数 1,474文字
本部では、捜査員達が交代で夕食を摂り始めていた。
盗聴器発見以降、上杉からの定時連絡は『変化なし』だ。
先程から席を立っていたサッチョウの二人組が戻ってくる。
(戻ってくんなよ。どうせ、ロクでもねえこと企んでんだろ)
県警職員が震え上がる仏頂面で待ち受ける武田に、今川・小早川のサッチョウ二人組が、ニヤつきながら報告する。
「全国本社(警察庁)の内閣官房から、増員の許可が下りました」
(増員? そんなもん、俺は依頼してねえ)
「全国本社及び東京本社(警視庁)から、総計百八十名の応援要員が福井入りします。明朝には、総員到着します」
(何だと!? 今、百八十名って言ったか? 戦争でも始める気か?)
「内訳を申し上げます。百四十名は、公安です。残り四十名は、その他の部署
です」
なるほど、な。
自治体警察の刑事部と違い、公安はサッチョウの警備局が仕切る国家警察だ。
原発関係者がマル害なので、張り切っているのだ。
徐々に強まる『公安縮小論』をひっくり返そうと、警備部は躍起になっている。
(しかし、百四十名かよ。捜査の『そ』の字も知らないハムにわんさか来られても、邪魔なだけだ。まして身代金受け渡しは明日だぞ。こっちは、急ピッチで体制組んでる最中なのによ)
「及び、中部管区・関西管区からの通達により、石川県警・富山県警・岐阜県警・長野県警・山梨県警・滋賀県警・京都府警・三重県警から、総計四千名が応援要員として、福井入りします。明日正午から十五時までには、総員到着致します」
(……もう言葉がねえ。好きにしろ。宿泊だの飯だのは、テメエらで何とかしろ。四千? 修行させたい公安の若造が大半だろうが……いや、待てよ……)
「宿泊等については、管区の方で福井中の宿を押さえ……」
「他府県から応援呼んだわりに、四千人? 北陸だけで補える人数だ。お前等、その連中は『保険』で呼んだ、公安の精鋭だろ? ということは、だ。東京から来る連中は……」
「部長、大阪府警は暴走組による、暴走組への連続殺人で……」
「話逸らしてんじゃねえ! てめえら、『ZERO』を投入するんだろ! 公安の最終兵器のカードまで切りやがって! お前等、何を知ってるんだ? 俺に何を隠してやがる!?」
一九五二年の『血のメーデー』で、警察は『本気』になり『本性』を現した。
非合法活動躊躇わず、ではなく、非合法専門の公安最強にして最高機密の部隊・『サクラ』が誕生。
一九八六年、共産党国際部長盗聴事件が発覚。
世論の猛批判を受ける前に、早々とサクラは地下深くに潜った。
そして『チヨダ』として、活動再開。
その後の劇的な国内外の情勢変化に対応するため、さらに精鋭かつ秘匿性を帯びた部隊・「ZERO」に生まれ変わった。
今川・小早川のニヤつき顔が、引き攣る。
「部長、その部隊名を口にされるのは……」
その返答は、肯定以外の何物でもない。
六歳の少女一人の誘拐事犯に、警察最高機密の部隊を投入?
「お前等、俺に隠してること、全部吐け。じゃねえと、生きてこの帳場から出られねえ」
いつの間にか雛壇前に、捜査員達が集結している。
その塊が放つ殺気に、エリート意識が服着て歩く二人組の顔から、初めてニヤけた笑みが消える。
一触即発。
警官が警官に暴行を働くのは珍しくない。
マスコミに洩れなければ、内部で簡単に揉み消せる。まして今は、マスコミと報道協定中。
血の雨が降るのは時間の問題だった。
盗聴器発見以降、上杉からの定時連絡は『変化なし』だ。
先程から席を立っていたサッチョウの二人組が戻ってくる。
(戻ってくんなよ。どうせ、ロクでもねえこと企んでんだろ)
県警職員が震え上がる仏頂面で待ち受ける武田に、今川・小早川のサッチョウ二人組が、ニヤつきながら報告する。
「全国本社(警察庁)の内閣官房から、増員の許可が下りました」
(増員? そんなもん、俺は依頼してねえ)
「全国本社及び東京本社(警視庁)から、総計百八十名の応援要員が福井入りします。明朝には、総員到着します」
(何だと!? 今、百八十名って言ったか? 戦争でも始める気か?)
「内訳を申し上げます。百四十名は、公安です。残り四十名は、その他の部署
です」
なるほど、な。
自治体警察の刑事部と違い、公安はサッチョウの警備局が仕切る国家警察だ。
原発関係者がマル害なので、張り切っているのだ。
徐々に強まる『公安縮小論』をひっくり返そうと、警備部は躍起になっている。
(しかし、百四十名かよ。捜査の『そ』の字も知らないハムにわんさか来られても、邪魔なだけだ。まして身代金受け渡しは明日だぞ。こっちは、急ピッチで体制組んでる最中なのによ)
「及び、中部管区・関西管区からの通達により、石川県警・富山県警・岐阜県警・長野県警・山梨県警・滋賀県警・京都府警・三重県警から、総計四千名が応援要員として、福井入りします。明日正午から十五時までには、総員到着致します」
(……もう言葉がねえ。好きにしろ。宿泊だの飯だのは、テメエらで何とかしろ。四千? 修行させたい公安の若造が大半だろうが……いや、待てよ……)
「宿泊等については、管区の方で福井中の宿を押さえ……」
「他府県から応援呼んだわりに、四千人? 北陸だけで補える人数だ。お前等、その連中は『保険』で呼んだ、公安の精鋭だろ? ということは、だ。東京から来る連中は……」
「部長、大阪府警は暴走組による、暴走組への連続殺人で……」
「話逸らしてんじゃねえ! てめえら、『ZERO』を投入するんだろ! 公安の最終兵器のカードまで切りやがって! お前等、何を知ってるんだ? 俺に何を隠してやがる!?」
一九五二年の『血のメーデー』で、警察は『本気』になり『本性』を現した。
非合法活動躊躇わず、ではなく、非合法専門の公安最強にして最高機密の部隊・『サクラ』が誕生。
一九八六年、共産党国際部長盗聴事件が発覚。
世論の猛批判を受ける前に、早々とサクラは地下深くに潜った。
そして『チヨダ』として、活動再開。
その後の劇的な国内外の情勢変化に対応するため、さらに精鋭かつ秘匿性を帯びた部隊・「ZERO」に生まれ変わった。
今川・小早川のニヤつき顔が、引き攣る。
「部長、その部隊名を口にされるのは……」
その返答は、肯定以外の何物でもない。
六歳の少女一人の誘拐事犯に、警察最高機密の部隊を投入?
「お前等、俺に隠してること、全部吐け。じゃねえと、生きてこの帳場から出られねえ」
いつの間にか雛壇前に、捜査員達が集結している。
その塊が放つ殺気に、エリート意識が服着て歩く二人組の顔から、初めてニヤけた笑みが消える。
一触即発。
警官が警官に暴行を働くのは珍しくない。
マスコミに洩れなければ、内部で簡単に揉み消せる。まして今は、マスコミと報道協定中。
血の雨が降るのは時間の問題だった。