第42話 まだ昼飯食ってるけど、税金泥棒とか言わないで
文字数 1,285文字
「あ!」
いきなり叫んだ北条の口から、カレーのルー付き白米が飛び散る。
上杉とレナが、北条の人権を完全無視するクレームの言葉を放つ。
が、どこ吹く風の北条が話し出す。
「山本を三人で追跡したろ? あん時、明智はお前を回りこませて、俺についてくるよう、俺に言った。それってよ、イコール明智の無実証言役だろ。要するに、アホなピエロ役だろ。明智は、お前じゃなくて、俺を選んだのか……。理解できねえ」
上杉は言葉をなくした。
理解できないのは、北条、お前だ。
「殉職した明智警部さん、人を見る目は確かやったんやな」
レナがさらっと言う。
北条が、こっそり傷つく。
殉職した明智は二特進(二階級突進)して、警部になった。
レナと食堂で偶然会って、同じテーブルでの食事となった。
意外なことに、上杉はレナの相席を了承した。
もしや、上杉も?
ロケットオッパイの追っかけに?
それなら最悪だ。
もしも、また組むことがあれば、どさくさに紛れて……。
恋敵は早目に消すに限る。
実に立派な男のジェラシーを感じている北条に、上杉が改まった口調で話しかける。
北条アラームが、『危険』の信号を発する。
「北条、真面目な話がある」
アラーム音が、体外まで響きそうになる。
普通、『外しますね』と言うべきレナが、当然の如く、堂々と聞いている。
上杉も、堂々と話し出す。
「明智が拳銃横流しで得たブラックマネー。口座は突き止めたが、誰かが引き落としたらしく、残金がなかった。まさか北条、お前じゃないな?」
「何だ、んなことか。俺のわけねえだろう。どうせ、お前と明智が言ってた、訳分かんねえ連中がパクったんだろう」
北条の目が猛烈な勢いで、バタフライしている。
分かりやすい。
明智が狙撃され、壁に身を隠した、あの一分間。
北条と明智は、かなり短かったが、言葉を交わしていた。
上杉は読唇術が使える。
しかし、あの状況では角度的に、一瞬だけしか北条の口が見えなかった。
北条が発した単語――「暗証番号」は、明智の隠し口座の暗証番号だろう。
明智の遺体から、財布はあったが、隠し口座のキャッシュカードはなかった。
今なお、発見されていない。
北条は明智を抱き抱えながら、財布からカードをスッたのだろう。
「まだある。山本の隠しロッカーで見つけた通帳。良からぬ連中が事件隠蔽をしている最中に、紛失したんだが?」
「ハムがパクったんじゃねえの?」
実に分かりやすい嘘だった。
だが、上杉は問い詰めない。
北条が金を何に使うか、想像がつく。
「上杉よお。お前こそ、何でボクシングなんだよ? 会社はボクシングを、逮捕術とは認めてねえ。とことん正体不明だな、お前」
日本警察は、ボクシングどころか空手も、逮捕術として認めていない。
『お前は正体不明』と、正体が分かりやす過ぎる単細胞の北条に切り返されて、さすがの上杉も頭に血がのぼる。
北条と上杉が火花を散らすのを、楽しそうに眺めるレナ。
いきなり叫んだ北条の口から、カレーのルー付き白米が飛び散る。
上杉とレナが、北条の人権を完全無視するクレームの言葉を放つ。
が、どこ吹く風の北条が話し出す。
「山本を三人で追跡したろ? あん時、明智はお前を回りこませて、俺についてくるよう、俺に言った。それってよ、イコール明智の無実証言役だろ。要するに、アホなピエロ役だろ。明智は、お前じゃなくて、俺を選んだのか……。理解できねえ」
上杉は言葉をなくした。
理解できないのは、北条、お前だ。
「殉職した明智警部さん、人を見る目は確かやったんやな」
レナがさらっと言う。
北条が、こっそり傷つく。
殉職した明智は二特進(二階級突進)して、警部になった。
レナと食堂で偶然会って、同じテーブルでの食事となった。
意外なことに、上杉はレナの相席を了承した。
もしや、上杉も?
ロケットオッパイの追っかけに?
それなら最悪だ。
もしも、また組むことがあれば、どさくさに紛れて……。
恋敵は早目に消すに限る。
実に立派な男のジェラシーを感じている北条に、上杉が改まった口調で話しかける。
北条アラームが、『危険』の信号を発する。
「北条、真面目な話がある」
アラーム音が、体外まで響きそうになる。
普通、『外しますね』と言うべきレナが、当然の如く、堂々と聞いている。
上杉も、堂々と話し出す。
「明智が拳銃横流しで得たブラックマネー。口座は突き止めたが、誰かが引き落としたらしく、残金がなかった。まさか北条、お前じゃないな?」
「何だ、んなことか。俺のわけねえだろう。どうせ、お前と明智が言ってた、訳分かんねえ連中がパクったんだろう」
北条の目が猛烈な勢いで、バタフライしている。
分かりやすい。
明智が狙撃され、壁に身を隠した、あの一分間。
北条と明智は、かなり短かったが、言葉を交わしていた。
上杉は読唇術が使える。
しかし、あの状況では角度的に、一瞬だけしか北条の口が見えなかった。
北条が発した単語――「暗証番号」は、明智の隠し口座の暗証番号だろう。
明智の遺体から、財布はあったが、隠し口座のキャッシュカードはなかった。
今なお、発見されていない。
北条は明智を抱き抱えながら、財布からカードをスッたのだろう。
「まだある。山本の隠しロッカーで見つけた通帳。良からぬ連中が事件隠蔽をしている最中に、紛失したんだが?」
「ハムがパクったんじゃねえの?」
実に分かりやすい嘘だった。
だが、上杉は問い詰めない。
北条が金を何に使うか、想像がつく。
「上杉よお。お前こそ、何でボクシングなんだよ? 会社はボクシングを、逮捕術とは認めてねえ。とことん正体不明だな、お前」
日本警察は、ボクシングどころか空手も、逮捕術として認めていない。
『お前は正体不明』と、正体が分かりやす過ぎる単細胞の北条に切り返されて、さすがの上杉も頭に血がのぼる。
北条と上杉が火花を散らすのを、楽しそうに眺めるレナ。