第7話 敵は「公安」とかいうスパイだと。昭和かと。

文字数 1,380文字

  慌てた明智が、取り成すように説明再開。

 「生安の俺が投入された理由なんやけど、マル被が県警のダブついた銃火器を暴走組に流しとるからなんやのう。モグラの穴仕事は、チャカの横流しなんや」

 旧体制では生安が、麻薬・拳銃の押収を行っていた。
 だが、マル暴――捜査四課と守備範囲が重なること。
 生安で摘発の自作自演、つまり摘発捏造が横行したこと。
 これらから、警察の大幅な組織改革が行われた。
 生安から摘発任務を捜査四課に移譲した。
 これに伴い、捜査四課は組織犯罪対策課――組対に組織改変された。

 だが地方の小さな県警は、体裁だけ右に倣え。
 実態は旧態依然のまま。
 実質的に拳銃摘発は生安が担っている。
 県警の銃火器が外部に横流しされているなら、それを摘発する生安が絡むのは当然。

 「けどよ、チャカのダブつきって……何?」
 
 北条が正直に問うと、上杉が溜め息をつき、明智は呆れ顔になる。

 「な、何だよ? 明智、お前がワッサワッサ摘発して、チャカがダブついたか?」

 あまりに無力な抵抗。
 明智がニヤリと笑う。

 「確かに俺の摘発数はスゴいんよ。半年で五十超えや。ギネスもんやのう」
 
 明智が両手を大袈裟に広げながら自画自賛。

 「ほやけど、ダブついてる理由は、俺が凄腕過ぎるからやないんやのう」

 明智の見事なまでの自賛っぷり。
 俺に呆れられたお終いだと思いながら、北条は呆れた。

 「暴走組が、マジで原発をマトにかける噂が出たんやのう。それでサッチョウは大騒ぎや。どんどこチャカを寄越してくるんや。遂に、銃器保管室の連中が音を上げたんやのう。県警内には今、正体不明のチャカが大量にウロチョロしとるんやのう」

 中央政府を揺るがす危機が地方で勃発する。
 すると中央は物量作戦で、人・モノ・金をとにかくつぎ込む。
 現場の混乱など微塵も考えない。
 日本、未だ中央集権なり。

 「何だそりゃ? そんなもん、そのマル被を#任意同行__ニンドウ__#で引っ張って、#自白__ゲロ__#させりゃあ済むだろ」
 
 くわえ煙草で北条が器用にあくびする。
 上杉と明智が、再び呆れ顔。

 「ハムが白旗挙げた奴やで。一筋縄でいくわけないやろ」

 と明智が言えば、上杉も畳み掛ける。

 「現役のハムに、任同は通用しない。取調べも、簡単に『いなす』だろうな」
 
 ガバッと北条が前のめりになる。

 「おいおい! モグラは現役のハムか?」

 上杉と明智が、目で肯定する。

 さすがの北条も度肝を抜かれた。
 証拠がなくても、嫌疑をかけられた時点で警察官は終わる。
 まして所属がスパイを生業とするハムなら、地獄が口を開けて待つ。
 免職という名の永久追放で警察外に追放された挙句に、監視・盗聴などのネチネチ攻撃が一生続く。

 「マル被は難攻不落で謎だらけらしい。ならば手の内において、四六時中監視するしかない。ハムはそう結論づけたんだろう」

 上杉の理詰め発言に明智も頷く。
 正解らしい。

 「ふーん。じゃ、さっさとそいつのツラ、拝みに行こうぜ」
 
 北条が携帯灰皿に煙草を詰める。

 「意外と几帳面なんやのう」

 そうなんだよ、キツネ目。
 もっと言ってくれ。
 しっかり聞け、嫌み上杉よ。
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