第24話 解剖中の病院にズカズカと乗り込んでみた

文字数 611文字

 明智がハムに監禁云々の話は、カマをかけたまで。

 神奈川県警で、警官がヤクを堪能しているのを知った幹部連中は、ホテルの一室にその刑事を監禁した。
 尿反応が陰性になるまで一歩も外に出さなかった。
 ハムらしいやり口。

 日本警察を激震させたこの不祥事は、さすがの北条も覚えている。
 凄まじい批判もどこ吹く風のハムなら、全国どこでも金太郎飴のような手段に出る。



 病院の玄関前に、タクシーをつけさせる。

 「兄ちゃん、アリガトよ。金は県警の小寺捜査一課長に請求しといてくれ」

 病院に入ろうと駆け出す北条とレナに、運転手が困惑する。

 「小寺さん……捜査一課長って、どうやって見つけるんです!?」

 「一番、それらしくないオッサンだ!」

 走りながら、北条が大声で答える。



 嶺北大学地下・解剖病室。

 遺体の腐臭を吸う換気口があるだけで、窓はない。

 厳かな表情の、医師・看護士・インターン。
 その前に横たわる、木島の遺体。

 「始めます」

 医師の声が静謐な空気を震えさせる。

 いきなり扉が開いた。
 医師達が飛び上がる。
 ズカズカと木島の遺体に近づく、人相の悪いスカジャン男。

 医師と看護師の絶叫と悲鳴が、夜の院内を支配していた静寂を破る。
 静謐な解剖室は、最初で最後となる修羅場を、その歴史において刻む。
 今日この時に。

 木島の亡骸だけが、静寂を守っていた。
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