第50話 パパとママは味方かな?

文字数 894文字

 堀と深田の両技官で、マル被からの連絡を録音・逆探し、声紋・背後音などを分析する。
 そのための機材は、裏口からこっそり……とはいかない。
 そこで、美和の協力を得た。
 美和の車に機材を積み込み、技官達はトランクに隠れた。
 捜一での事前打ち合わせの際、北条は機材にいくつかのオーダーを出していた。 荷が増えた元凶は、北条だった。
 
 技官二人が無線・録音・解析機器等を手際よく設置するのを横目に上杉は、菅野と美和を観察していた。
 それは、レナも同様だった。
 
 マル害が今現在、味方か障害か。
 そして何より――本当にマル害なのかどうか。

 親による偽装誘拐は、前線の捜査員が見抜かなければならない。
 
 事情聴取の前に、機器設置を優先した上杉の思惑はそこにある。
 
 美和が帰宅して、仏頂面だが管野は大人しくなった。
 相変わらず、パソコンと格闘していたが。
 
 出動前、捜査一課で頭に叩き込んだ情報を引き出す。

 管野は四十八歳。
 美和は二十九歳。
 誘拐されたさつきは六歳。
 年の差夫婦より、管野は再婚で、さつきは美和の連れ子という情報が重要だ。
 さつきの実の父親は不明。
 美和に結婚歴はない。

 この部分が不透明だが、福井県警では調べられない。
 管野と美和は、かつて大阪在住だった。
 大阪で二人は入籍し、管野の異動で福井にやってきた。
 二人の大阪時代を把握するため、本部は大阪府警に協力要請を行っている。
 すぐに明らかになり、前線に報告が来るだろう。
 
 マル害の過去を徹底的に洗い出すと、思わぬ怨恨が発見され、容疑者リストを作成できる。
 リストは多ければ多いほど良い。
 誘拐で犯人が全力を注ぐのは、正体を明かさないこと。
 ここで警察は不利になる。
 逆に明らかにできれば、形勢は逆転する。
 
 機器を設置し終えると、本格的な聴取に取り掛かる。
 誘拐時の状況は、みのり園から通報を受けた通信指令課の警官が『聴取マニュアル』に従って聞き出し、報告されている。
 技官達は、リビングの別テーブルに陣取り、犯人からの連絡に備えている。
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