第6話 野郎が三人で作戦会議とか誰得だよ

文字数 1,002文字

 監察官室長室を退室。
 
 北条と上杉、明智の三人は、ミーティングを行おうとした……が、部屋が無い。
 通常なら機密漏洩を防ぐため、特命を帯びた警官には別室が与えられる。
 が、今回はそんな『当たり前』すらない。
 非常識カーニバル、開幕。

 空いていて他捜査員の耳目を気にしなくていい部屋。
 合致するのは――取調べ室のみ。

 取り調べ室に入った三人が、思い思いに腰を下ろす。
 書記の席は上杉。
 刑事が座る椅子に明智。
 そしてマル被用の椅子に、北条。

 入室するなり、自然と決まる席次。
 日頃の行い、ここにあり。

 「俺がおるんや。ハムと手を組むことはないんやのう」

 福井弁が強い明智。

 「何でお前がいると、ハムと一切絡まねえんだよ」

 「何や、お前知らんのか? 俺は半年前にハムから生安に都落ちしたんやのう」

 「んじゃあ、どうやってモグラ狩りすんだ? 何一つ情報がねえ」

 明智の左遷カミングアウトを完全無視した北条だが、その愚痴は最もだ。

 監察官室長、警備部長、刑事部長。
 ヘビ、カエル、ナメクジが同じアメニティに集っていたこと。
 雲上人が集うパラレルワールドで、下っ端刑事が直接、下命されたこと。
 しかも任務は、ハムの守備範囲。
 それをなぜ、不良・キツネ目・セレブ刑事の三人が?

 「俺にアテがあるんや。お前が来る前に、偉いさん三人組から説明があったんやのう」
 
 ネタクイを緩めた明智が説明を始める。

 すでにモグラの目星はついているが、物証が全く無い。
 ハムが徹底的に洗ったが、ただの無駄骨。

 そこで、特殊捜査が売り物のSIT・上杉。
 ハム出身にして、現在進行形で生安に所属する明智。
 そして桜田門で、様々な部署を渡り鳥した北条。

 「なんで『生安だから』が理由になんだよ」

 北条が、煙草に火を点ける。

 「ここは禁煙だ」

 北条も明智も驚いて、声がした方に目を向ける。

 上杉が、エッフエル塔のような脚を上品に組んでいる。

 北条が構わず上手そうに煙草を吸い、ゆっくり煙を吐き出す。

 「固えこと言うな。これからワッケ分かんねえヤマを、この三人でどうにかすんだ。間違いなく、厄介なヤマをな。今からピーピー言ってんじゃねえ」

 北条が不敵な笑みを浮かべる。

 上杉の目が無機質なそれから、冷徹な鋭さを帯びる。
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