第43話 宇宙人からの交信「ちょっと」

文字数 771文字

「ていうか、上杉よお。この捜査報告書、お前が片付けてくれよ」

 北条が泣きをいれる。
 その手元にA3サイズの報告書が一枚。

「捜査報告書って、あんたやっと、タクシー強盗解決したんか?」

 レナの率直な問いに、北条周囲の空気が暗く重くなる。

「……まだどころか、新規が一件起きちまった。これで、計四件。組合がおっかなくて、俺はタクシーに乗れねえよ」

「じゃあ、何の捜査報告書作ってんの?」

「お前も見たろ? タクシーの運ちゃん組合が、無許可で設置したCCDだ」

「まだできてないんかっ? 何で課長は待ってくれてんねん?」

 痛い。
 レナが放った鋭利な氷柱が、北条を串刺しにする。

 上杉は、書類作成で北条に泣きつかれた。
 助言はしたが、直接答えを教えなかった。
 警察官も公務員。
 書類を作成できてなんぼの商売。
 いい調書はいい捜査を生み、いい報告書はいい後進指導に繋がる。

「なあなあ。ここの日付ってよお。設置された日付か? それとも、俺達が発見した日付か?」

 上杉とレナが顔を見合わせる。

「あんた、本当に警察学校卒業したんか? やっぱ帳面見せてや」

「その前に、高校は卒業したのか?」

「義務教育は修了したんやんな?」

 ボロクソに言われながら、北条はカレーをかき込んだ。



 ワイワイガヤガヤと昼食を終えた三人が、出口に向かう。

「グギャッ」

 レナが突然、乙女らしい悲鳴をあげる。

 無理もない。
 出口に宇宙人がいた。
 北条が目をこらす。

「うちゅ……小寺課長。どうしたんすか?」

 出口に、ヌボーッと小寺捜査一課長が立っている。

「三人とも、時間空いてる? ちょっと話があるんだけど」

 小寺の『ちょっと』は、人類にとって絶滅の危機に瀕するほど大問題の予感しかしない。
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