第60話 夜の女達、犯して回った。この欲求不満からの卒業

文字数 5,215文字

 すでに日は落ち、夜が来た。
 兵士達を(ねぎら)うモグリに、グランは労いの言葉をかけた。
 その後一人で、店主から借りた店に寄った。
 厨房で料理し、店の外に出したテーブルに運ぶ。
 誰も座る予定はないが、向かいに椅子を置いた。
 男が一人、来る予感がする。
 実際に、男の気配を感じる。

 フワ以外にも、牛肉や馬肉が冷凍保存されていたので、材料には困らない。
 一人分には大きい牛肉のステーキを、細かく切り分ける。
 食感がくどくならないよう、塩を振った馬刺しとサラダも添える。
 後は酒の(さかな)に、魚肉ソーセージとふかし芋をメニューに加える。
 ビールが入った大瓶とグラスを、テーブルに並べたときだった。
 男が立っていた。
 来ると予想していた男だった。

「とても素敵な料理だ。男で申し訳ないが、同席しても?」

「構わん」

 トーレスが椅子を引いて、テーブルに座る。

 二人の男達は食事中、現状確認などの固い話しかしなかった。
 食事を終えたのは、二人同時だった。
 トーレスが、グランのグラスにビールを注ぐ。
 グランも返杯する。

「私がここに来ることを、まるで知っていたようだ」

「何か俺に、話したそうな顔をしていたからな。それも戦争前に、だ」

「私とカサンの領主だったパシが、
 かつて同じパーティにいたことは知っているか?」

「大昔、世界ランキング上位のパーティに、
 パシとトーレスという名の冒険者がいたことは覚えている」

 大昔という単語に、トレースが苦笑する。

「その通りだ。
 私達は世界ランキング上位にいたが、一位争いなんて視野に無かった」

「ならば何のために、冒険をしていたんだ?」

「血吸いの女王の首を取るため、だ」

「なぜ、解散した?」

 グランの問いに、トーレスの思い出話が始まる。
 パシは、
 「天空の塔で冒険を行い、装備を整えてからブラムスに突入しょう」
 と主張した。
 それに対してトーレスは、
 「余計な時間をかけていないで、直ちに女王・ローラを討ち取るべきだ」
 と反対した。
 パシとトーレスは、お互いに本音をぶつけ合える仲だった。
 固い友情で結ばれていた。
 が、意見は度々衝突した。
 
 パーティの終わりは、突然やって来た。
 パーティリーダーの女勇者が、暗殺された。
 政争絡みだった。

「私とパシを束ねるだけあって、彼女は常に気高く、強い女性だった。
 当然、男は放っておかない。ある貴族が求婚したが、彼女は断った」

「その貴族の逆恨みか?」

「もう一つある。世界ランキングだ。
 当時ランキング上位だった私達を、抜きたい勇者がいた。
 彼の父親は、国王だった。
 悲運だったのは、求婚を断られた貴族とその王家が、
 親戚関係にあったことだ。
 利害が一致し、暗殺部隊が放たれた」

 トーレスは表情を変えることなく、ビールをグイッと(あお)る。
 トーレスは、何を自分に伝えたいのか?
 グランはまだ、把握できない。

「『彼女の暗殺で、パーティは解散した』。
 当時のパーティメンバーは皆、そう自分に言い聞かせた」

「違うのか?」

「違う」

 グランの問いに、トーレが即答する。
 一瞬、苦し気な表情を見せながら。

「彼女の死に、私やパシ達は責任を感じた。
 感じ過ぎた。
 その感情は重荷となり、互いに言いたいことを、言えなくなった。
 そうすると負の感情だけが、溜まっていった。
 それまでは言葉で吐き出していたから、溜まらなかった。
 最終的に、パーティメンバー同士の人間関係が壊れた。
 それが、パーティ解散の真相だ」

 グランは、トーレスが言いたいこと――伝えたいことが朧気(おぼろげ)に分かってきた。

「まだお前は、間に合う。モグリ達と言いたいことを言い合え。
 明日は俺が自爆してでも、血吸いどもを皆殺しにしてやる」

「頼もしいな。自爆、か」

 グランの宣言に、トーレスは微笑みながらも、目を伏せる。
 トーレスは無意識に、腰にブラ下げた魔法袋の中を探る。
 中には、魔法石が五つ入っている。

「そうだ。パシとの最後の会話で、印象に残った言葉がある。
 『手に負えない魔女が現れたら、噛みついてやれ。
 喉笛を噛み千切るのは、血吸いどもの専売特許じゃない』。
 意味が分かるかね?」

「魔女の異常な魔力の強さは、接近戦に弱いからだと言われている。
 何でも、人間の唾液が血液に混じると、死んでしまうらしい」

 グランとトレースの間に、一瞬、静寂が落ちる。
 直後、二人とも吹き出した。
 冒険にありがちな、都市伝説だ。

「魔女が接近戦に弱いのは、本当だ。だが、血液云々は眉唾(まゆつば)だ。
 パシはきっと、精神論を最後の言葉に込めたんだろう」

「そうだろうな」

 また、グランとトレースの間に静寂が落ちる。
 それを破ったのは、トーレスだった。

「乾杯をするかね?」

「やめておく。乾杯は勝った後の、祝い酒にとっておく」

「その酒が飲めるよう、明日は私も参戦する」

 二人して、席を立つ。
 トーレスは立ち去ろうとして、足を止める。

「グラン。
 君は言いたいことがあり、言いたい相手がいるんじゃないのか?
 ならば、絶対に言うべきだ。本音を、思いを、伝えるべきだ」

 経験者の言葉は重い。
 グランが黙って頷く。

「そのために、今、必要なことが何か分かるか?」

「生き残ることだ」

 グランの返事を聞いたトーレスが、微笑む。

「その通りだ。君は、生き残るんだ。
 生き残って、言うべき相手に、言うべき言葉を伝えたまえ。
 そしていつの日か、その相手とこの街を……」

 それ以上、トーレスは言わなかった。
 グランも、口を閉ざした。
 トーレスの思いを、グランは確かに受け取った。
 二人の男達は、帰路についた。



 今夜はグランの自室で、一人ずつ犯す段取りだ。
 それは、グラン三人娘達からの申し出だった。

 最初に自室に来たのは、純白のローブをまとったクロエだった。

「グラン様。今夜は乱暴に、クロエを犯してください」

 クロエをローブを着たまま、土下座した。
 土下座の間も、グランの目を見詰めている。
 「ご主人様」と呼ばずに、グランの名を呼んだ。
 戦前最後の夜。
 これが、最後の性交になるかもしれない。
 それを思うと、クロエは初めてグランに会ったときのように、乱暴に犯してほしかった。
 それが聖女の皮を被った売女である自分の、本心だった。

「いいだろう。
 昼は神に仕えながら、夜は男に尻を掲げる淫乱女らしく、犯してやる」

 言うなり、グランはクロエの体を乱暴に持ち上げ、テーブルに上半身を乗せる。

「いや、優しくして」

 そう言いながら、クロエは抵抗しない。
 この凌辱を、望んでいたから。
 ローブを乱暴にほどかれる。
 白くて透明な肌をした巨乳が、ブルンッと飛び出す。

「顔は童女のくせに、体だけは一人前だな」

 山脈のように並び立つ巨乳を鷲掴みにされ、乱暴に揉まれる。
 時折、乳首をクリクリとつままれ、引っ張られる。

「乳首が立ってるぞ、クロエ。股ぐら、もう濡らしてるんだろう?
 どこまでも淫乱な聖女だよ、お前は」

「あはん、もっと言ってください。ああ、もっとイジめてください」

 乳首をジュッジュッと音を立てて吸われる。
 吸われながら、下半身のローブをまくられる。
 ピンク色で薄い生地のパンティが露わになる。

「偉そうに神の教えを()きながら、スケベなパンティを()いてやがる。
 股ぐらのお毛々が、パンティからはみ出しているぞ」

 そのパンティを、膝までズリ下される。
 両足首を持たれて、両脚を天井に向けて持ち上げられる。
 秘部も尻穴も丸見えだ。

「おい変態聖女、尻の陰毛を何とかしろ。肛門が見えんぞ」

「ああ、グラン様! ブッ太いイチモツで、クロエの肛門を犯してください!」

 グランのイチモツが、毛だらけの肛門に突き刺さる。
 世界で最も清き聖なる神殿・デーアのローブを着た聖女が、歓喜の声を上げた。



 次に来たミンは、武闘着姿だった。
 パンティを履いていない。

「グラン様、ミンの恥ずかしい所、見てください」

 ミンが土下座する。
 短すぎる裾が引っ張られ、尻が丸出しになる。
 ミンもまた「ご主人様」ではなく、グランの名を呼び、目を見詰めてくる。
 そしてクロエと同じく、積極的におねだりする。
 牝奴隷とはいえ、世界ランキング二位のパーティメンバーだ。
 戦争を経験している。
 現在の戦況も理解している。
 互いに、最後の夜になるかもしれない。
 だから、他の二人がいない場で、思いっ切りおねだりしているのだ。
 
 ミンのおねだりを、グランが許可する。
 ミンは膝を立てた姿勢で、座り込む。
 右手で体を支え、浮かせる。
 そして股を開くと、丸見えになった秘部のヒダ肉を左手で左右に割る。
 ミンという女の奥側が現れる。
 それはヌメヌメと濡れており、奇麗なピンク色をしていた。

「お前、今もモグリに惚れているだろう?
 惚れた男が近くにいるのに、別の男にスケベな恰好を晒しやがって。
 この変態が」

「あふぅ、もっと言ってください……」

 それからもミンのおねだりは続き、グランはミンの秘部と尻穴を犯してやった。

「グラン様。一度でいいので、ミンの顔に出してください」

 おねだりどおり、グランはミンの眼前でイチモツを爆発させた。
 射精の勢いで、ミンの首が前後に揺れる。
 顔どころか、髪まで真っ白な白濁液で覆われる。
 大量の精子は、温かかった。
 瞼の精子が重すぎて、目を開けられない。
 瞼の裏に、モグリの姿が浮かぶ。



 ユリアのおねだりはシンプルだった。

「グラン様、あの、その……キスをいっぱいしてください。
 ユリアの舌を、いっぱい吸ってください。
 グラン様のおツバを、飲ませてください」

 グランとユリアは舌を出して、卑猥に絡ませる。
 舌が意志を持った生き物で、交尾しているようだ。
 それが終わると、ユリアは(ひざまず)く。
 そしてグランを見上げ、口を開く。
 頬がほんのりと、朱色に染まっている。
 牝奴隷に堕ちても、恥じらいは忘れない。
 グランの調教どおりに、育っている。
 そのご褒美に、グランはユリアの口に唾液を落としてやる。
 ユリアは目を閉じ、ウットリとした表情をしながら、口内で唾液を転がして味わう。
 そしてゴクリと音を立てて、飲み込む。
 何度か唾液を飲ましてやると、ユリアが次のおねだりに移る。

「グラン様。ユリアのオシッコしてるところ、見てください」



 情熱を象徴する赤髪と同じく、レスペの肌は真っ赤になっている。
 当たり前だ。
 浴槽の中で三角座りし、全身に熱湯のシャワーを浴びているのだ。
 カッと金色の瞳を見開き、苦痛に耐えている。

(グランが、相手指揮官は熱湯どうのこうの言ってたしな!
 熱湯で物理攻撃するのか、魔法使うのか知らないけど。
 こうやって免疫つけとけば大丈夫だ!)
 
 誰も彼女に、「敵の指揮官は『ネット』」と丁寧に教えてくれない。
 だがさすがに、全身火傷しそうになってきた。
 湯船の外に出る。

(ひどい目に遭った!
 体も心も苦しい……よしっ、こういう時は鍛錬しかない!)

 客室が広いのをいいことに、レスペが武器を振り回す。

(いい汗かいたな! ん? 何か、外が静かだぞ?)

 レスペはカーテンを開いて、飛び上がった。

(物凄く夜中だよ!? 明日……もう今日か。
 戦争に寝不足のヘトヘトで参戦か……。
 ま、いっか! 敵を全部ぶった斬ってから、ゆっくり寝ればいいや!)

 レスペは引き続き、剣を振るう。



 室内を照らすのは、蝋燭(ろうそく)の明かりだけだった。
 セレナは、ベッドに横たわっていた。
 明日、いよいよ開戦する。
 カサンでは、世界ランキング一位の勇者、リーナが負けた。
 ここカートンで、私がブラムスに勝てば……。
 中々、眠れそうもない。
 蝋燭の光を頼りに、セレナがベッドから抜き出す。
 寝酒に、少しワインを(たしな)むことにした。
 (たしなむ)む程度のつもりが、あれこれ考えていると、ボトルが空になっていた。
 飲酒戦闘は厳禁と、セレナはそそくさとベッドに戻った。



 夜が明けた。

 戦争名「奇襲と反撃のカートン」開戦の日が、やってきた。
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