第77話 オナッて許して

文字数 4,657文字

 この世界は、大きく五つに分けられる。

 中央平原が広がる中央部には、迷いの森に囲まれたエルフの国・ベンゲルがある。
 そして、グランがまだ在籍中だったリーナパーティが攻略した「天空の塔」がそびえている。
 その頂上は雲より高く、地上からは見えない。
 肥沃な土地なので、国は多い。
 世界一の大国・ラントも、この中央部に位置する。
 現在、リーナパーティがこのラントに向かっている。

 東部には、ドラガン国がある。
 ミンの生まれ故郷であり、今は亡きマッシモ国も、この東部にあった。
 東部の東には、テンスラ山脈が大陸を横断している。
 天空の塔の頂点からでも、テンスラ山脈より向こうの最端部は見えない。
 常にブ厚い灰色の雲で覆われているからだ。
 険しく迷路のような山脈には、吸血鬼より強い魔神が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していると言われる。
 未だ、テンスラ山脈を攻略した者は誰もいない。

 西部の最端部には、吸血鬼の国・ブラムスがある。
 そのブラムスと唯一、国境を接するのが、レイジ国だ。
 そして現在、グランとセレナパーティ、黒髪のミーシャ達が目指すミルン国がある。

 南部には悪名高き独裁国家・カザマン国がある。
 さらに南に行くと湿地帯があり、ドワーフの国・ラーオグがある。
 最端部には、広大な砂漠が広がっている。
 この砂漠のどこかに迷宮があり、不老不死をもたらす水晶があると言われている。
 だが誰も、迷宮すら発見できていない。

 北部は土地が枯れているため、国の数は最も少ない。
 グランとリーナの故郷、サウル村がある。
 そして、竜王・ニーズヘッグの住処もある。
 北部の最大面積を占める氷河に、国が一つだけある。
 「氷河国・アイスコッド」。
 アイスコッドの王は二百年前、魔王を倒したと言われる。
 だがアイスコッドは長く鎖国を続けており、今や真偽を確かめた者はいない。


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 そんな世界で、変化が二つあった。

 吸血鬼の女王・ローラと特級吸血鬼・アビスの二人は、竜王・ニーズヘッグを倒した。
 これでドラゴン達は、ブラムスの隷下に置かれる。

 またレイジ国において、カサンに続き、カートンが陥落した。
 今後は、ブラムスが統治する。
 

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 自爆魔法で荒野と化した地に、ブラムス副将軍・ネットだけが立っていた。
 自爆の爆風が迫る中、死してなお自分の手首を掴んで離さないモグリの手首を、風刃で切断した。
 そして、周囲で魔法防壁を張っていた魔物達を転移で自分の周囲に移動させた。
 その魔物達を盾にして、何とか自爆の爆発を凌いだ。

「(……以上が、カートン侵攻の結果です)」

 伝心でネットが、ブラムスの将軍・スピラーノに報告する。

「(では生け捕りにした人間達も、自爆で吹き飛んだのか?)」

 当然のことでも、スピラーノは確認せずにはいられない。

「(はい。私以外、生存者はいません。
 八千ほど、生け捕りに成功したのですが)」

 感情を表に出さないスピラーノが、珍しく苛立っている。
 伝心超しでも、ネットには分かる。
 無理もない。
 吸血鬼が戦争で得られる唯一の戦果、それは自分達の生命線である食料と水だ。
 つまり、生きた人間。
 その生きた人間達が、一人も手に入らなかったのだ。
 ネット以外の侵攻軍幹部が、全員死亡したというのに。
 さらに、世界ランキング二位パーティを逃がしてしまった。
 その上、リリスまで投入したのに、グラン暗殺まで失敗した。
 さすがのスピラーノとネットも、溜息をついた。


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 カートンで暗殺専門の魔物・リリスを討ったリーナパーティは、ラントへと急いでいた。
 転移魔法は、あらかじめ座標を決めておかないと、正確な移動はできない。
 だからリーナ達は、ラント国へ直接、転移はできない。
 近辺の地に転移したパーティ一行は黙って、ラントに向かって駆け出した。
 首脳会議からはカサン陥落後に「ラント国への即時撤退」を命じられている。
 にも関わらず、カートンでの戦争に(のぞ)んだ。
 明らかな命令違反だ。
 カートン行きがバレないためには、行っていないときと同様の時間に戻るしかない。
 転移魔法で、ラント近辺までは移動できた。
 が、それでもカートン行きを知られないためには、足が千切れるほど急いで走るしかない。
 しかし、その状況はリーナを初め、パーティメンバー達は歓迎していた。
 限界以上の走行で、何も考えずに済むからだ。
 カートンがその後どうなったかは、ターリロの使い魔で把握している。
 だからグラン達の生存は、分かっている。
 けれど、禁忌である自爆魔法が発動され、人間領域が荒野になった。
 そして、その荒野を新しく支配するのは、宿敵である吸血鬼だ。
 事実を考えるほど、苦しくなる。



 夜が更けてきた。
 本当に足が千切れては、冗談で済まない。
 ラントには、明日中に到着できる見込みが立った。
 手頃な洞窟を見つけたので、リーナ達は野営することにした。

「おい、雨降ってきたぜ」

 ムサイが外を見ながら、ウンザリしている。

「今夜は降るだろうが、明日の出発時には晴れてるだろう」

 ウザイがフォローを入れる。

「俺達って、雨に呪われてるな。全部、ニンチの日頃の行いが悪いからだ」

 いきなり標的にされ、ニンチがギョッとする。
 ムサイとウザイも、納得顔でニンチに冷たい視線を送る。

(このパーティって、一人一人は性格いいんだよね。
 でも集合体になると、誰か一人を吊るし上げる悪癖がある。
 過去はグランがその役目を背負っていたけど、次はニンチか)

「はいはい。みんな、そこまで。偵察と食事当番を決めるよ」

 リーナはイジメの火消しを行った。



 リーナとニンチで、物理感知の魔法を張った。
 これで接近する者がいれば、簡単に把握できる。
 そもそも超大国・ラントが近いので、魔物や盗賊の心配はほとんど無い。
 大国たる由縁は軍の巨大さにあり、その軍が近辺の治安を担っているからだ。
 だから寝ずの番は置かず、全員が眠ることにした。

 寝袋に入るなり、リーナ以外の全員が深い眠りに落ちた。
 無理もない。
 ここ数日は、走りっ放しだった。
 さらに、戦争に参戦までしたのだ。

 男達は、洞窟の奥で一塊になって眠っている。
 リーナは一人、洞窟の入り口近くで寝袋に入った。
 雨の音を聞きながら、今日という日を振り返る。

(私、また負けちゃったなあ)

 リリスからグランを救うのが、精いっぱいだった。
 「世界ランキング一位の勇者」とは、人類最強の戦士を指す。
 なのに、自分はまた戦争に負けた。
 特に今回は、戦況に影響すらあたえられなかった。

(グランはどこに転移したんだろう?
 どこかの都市か街に行ってくれれば、場所は分かるんだけど)

 グランは、セレナ達と行動を共にしている。
 世界ランキング二位パーティが現れた人間領域は、騒ぎになる。
 リーナ達の耳に入る。

 リリスを斬るために飛んだ際、カートン領内が見えた。
 魔物だらけだった。
 あの魔物達に、カートンという街は蹂躙された。

 自分の身を差し出せばカートンは救われるという選択肢があるなら、自分はどうするだろう?
 スライムの触手で、全身を拘束される。
 身動きできない自分を、醜い魔物どもが(よだれ)を垂らして凌辱する。
 天井から吊るされ、バルログに鞭で打たれる。
 「気持ちいい」などという半端さではなく、一発で気絶するほどの鞭打ちを浴びる。

 気が付くと、リーナは寝袋の中で自分の乳を両手で激しく揉みしだいていた。
 大きく形がいい美乳が、揉まれる度に形を変える。
 桃色の乳輪は大きめで、乳首はツンッと上を向いている。

(あんっ)

 リーナは両方の乳首を、指で転がす。
 つまみ、引っ張り、つねり上げる。
 乳からの快感が、股ぐらにビンビン響く。
 しばらく自慰していなかった体は、欲情で溢れかえっていた。
 股間に手をやると、パンティ超しでも、濡れているのが分かる。
 リーナはパンティの隙間から指を入れ、肉真珠を指の腹で擦る。

(あふぅん、いい、いいの!)

 もっと過激な妄想が、今夜の自分には必要だ。
 体も心も、醜い者達が自分を理不尽に犯すことを求めている。

 馬鹿力で無理矢理、開口させられ、ミノタウロスの巨根を(くわ)えさせられる。
 口腔内が、巨根でいっぱいになる。
 喉奥を突かれ、息ができない。
 涙と涎が、止めどなく溢れる。
 そうやって上の口を犯されながら、壁の外から見た巨人のヨトゥンが股にブラ下げた文字通り人外の巨根を、秘部に突き刺される。
 
 リーナは片手の指で肉真珠をクリクリと揉みながら、もう一方の手の指を秘部に入れる。
 愛液で溢れかえったそこは、アッサリとリーナの指を三本受け入れる。
 その三本指で、激しく秘部をピストンする。

(ああっ、何でこんなに気持ちいいの!?
 お股の穴、何でこんなに気持ちいいの!?)

 股間から脳天を貫く快感に、リーナは腰を浮かしてしまう。

 上と前の口を巨根で突きさされたら、残るは後ろの口だ。
 生理的嫌悪が沸き上がるワームが、尻穴にヌルヌルと入ってくる。
 その新しくもいやらしい感触に、リーナは思わず放屁し、便を洩らしてしまう。
 それを見た周囲の魔物達が下品に笑う。

 「変態勇者め!」
 「スカトロランキング一位だ!」
 「勇者といえど、所詮はメスよ!」
 「穴に突っ込んやったら、嬉しそうにヒイヒイ鳴いてやがる!」。

(ああ、もっと言って! もっとリーナをイジめて!)

 秘部をピストンする指が最高速度に達する。
 出し入れする度に、太い潮がビュッビュッと飛び出す。

「イクッ!」

 リーナは腰を浮かしたまま、痙攣した。
 久しぶりのオルガズムは、意識が遠のく程の快楽をもたらしてくれた。
 お陰で最後は、言葉を発してしまった。
 パーティメンバーの若い男達に、聞こえていないだろうか?
 聞こえてしまい、興奮したメンバー達に襲われたら……。
 リーナは、今宵二度目の自慰に(ふけ)る。

 パーティの若い男達はグッスリ眠っていたので、リーナのイキ声を聞いていない。
 高齢で眠りが浅い賢者は、聞いていたが。
 それでも、ニンチの愚息は親不孝のままだ。
 ピクリとも動かない。
 ワームの死骸のような愚息を涙目で見ながら、ニンチは石化の魔法をかける。
 けれど、単にワームの死骸が石化しただけのようだ。
 ただの化石にしか見えない。
 高等賢者の魔法すら無力化する、見事な愚息っぷり。
 本物だ。
 本当に、死んでしまったのかもしれない。
 ラントに着いたら、神殿・デーアで司教や司祭による禁忌の魔法「復活の儀」を受けよう……。

 自慰でますます高ぶるリーナを尻目に、ニンチは男泣きした。
 雨は一向に止みそうになかった。
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