第33話 ヴァルキリー、処女やめるってよ

文字数 3,771文字

 戦う乙女・ヴァルキリーは建前上、独立した軍隊だ。
 だが、大半の部隊が各国の神殿内に配置されている。
 国家よりは、神殿と密接に連携してきた。
 価値観も共有してきた。
 だからヴァルキリーの戦士達は、神に仕えし聖女、またはそれに準ずる者とされている。
 つまり、処女だ。

 ヴァルキリーは、処女のはずだ。
 男を知らないはずだ。
 それが誇りであるはずだ。
 そのお陰で、神から加護を受けているはずだ。

 だが目の前で、二人のヴァルキリーが犯されている。
 それも無理矢理、犯されているようには見えない。
 自ら男に股を掲げ、愛撫してもらっている。
 衝撃的な光景だった。
 有り得ないこと、有ってはならないことだ。
 しかしなぜか、目の前で起きている乱交を全否定できない。
 そんな自分に、ユリアは困惑した。
 以前の自分なら……グランと出会う前の自分なら、卑しい行為と徹底的に否定して非難したのに。

(ブラムスが、一個旅団を放ったのよ。
 ついに、人間への攻撃を本格化させた。
 だから今は、緊急事態。そう、緊急事態なのよ。
 明日、自分が生きている保障はない。
 だから……だから、刹那の快楽を求める者がいても、
 仕方ないのかもしれない……)

 薄く開けたドアから、グランに犯されて歓喜するクロエとミンを見ながら、ユリアは自分に言い聞かせた。
 それが、ただの言い訳なのは分かっている。
 パンティをたっぷり濡らしてしまった自分への、言い訳だ。

 グランはクロエの尻穴に激しく肉棒を出し入れしながら、ミンを潮吹きさせ、さらに覗いている女――ユリアを観察していた。
 ユリアは時折目を閉じ、下半身をガクガクと上下に揺らす。
 女賢者様は、自分達の乱交を見て、自慰に夢中らしい。

 グランの見立てどおり、ユリアは自慰していた。
 片手で、陰部のヒダ肉を左右にパックリと開く。
 もう一方の手で、肉真珠をイジり、膣に指を出し入れしたり。
 パンティは、股下まで下していた。
 陰部の直下にパンティがあるので、溢れ出た愛液でさらに濡れていく。

 ユリアは、ヴァルキリー入隊を後悔したことはない。
 それどころか、所属する分隊を世界第二位にまで押し上げたこともあり、誇りすら抱いている。
 神の存在を信じて祈りを欠かさず、信仰心も厚い。
 だからこそ、だ。
 だからこそ、性欲が湧いてきたとき、一人で処理して解決する。
 処女を失わないように。
 男なんかに、犯される隙をあたえないように。
 けれど、薄い隙間からさえ、グランのイチモツの人外な巨大さが分かる。
 さらに、そのイチモツの前にひれ伏したくなる衝動に駆られる。
 全ての女を屈服させる王のようなカリスマを、グランのイチモツからビンビン感じる。

(駄目よ、ユリア!
 クロエとミンは、死ぬ前の思い出作りをしているだけ!
 あなたは賢者でしょう、ユリア!
 それも、気高きヴァルキリーの賢者じゃないの!
 決して、性欲などに屈してはダメよ!)

 自分を厳しく戒めながら、剥き出しになった肉真珠を激しくこねくり回す。

(ああ……イクッ!)

 ユリアは、イチネンボッキの誘惑に勝った。
 そう思っていた。
 それが大きな勘違いであることを、(のち)に体で知ることになる。



 女賢者様がイッたようだな。
 俺も、一発目を出すか。

「よしクロエ、尻穴の中に出してやる」

「ああ、ください! くださいませ!
 クロエの中に、くださいませ!」

 懇願するクロエに、応えてやることにした。

「よしイクぞ。うぅむ!」

「ああ、クロエもイクッ! ご主人様、クロエ、イキます!」

 ドンッドクドクッと、大量の白濁液がクロエの腸に放たれる。
 尻内の爆発で、クロエも絶頂に達した。
 グランが放った特濃の精子でクロエは腹部が熱く火照り、さらに欲しくなってしまう。

「ああ、ご主人様の精子を感じます!
 もっと、もっとくださいませ」

 おねだりするクロエにグランは、

「物事には、順番がある。
 次は、ミンの股と尻穴の両方を交互に犯す」

 と次の予定を伝える。
 クロエは落胆した。

「何を心配しているんだ、クロエ。
 イチネンボッキは、無限だ。
 ミンを犯したら、またお前を犯してやる」

「本当ですか、ご主人様!?
  クロエ、これ以上の喜びはなく」

 クロエは自然と、グランに土下座していた。

 ここまで奴隷作法が身につくのは、さすがに早過ぎる。
 ミンと違い、クロエに牝奴隷としての才能があったとしても。
 イチネンボッキの精子の力だ。
 凌辱や調教を超越した力が、イチネンボッキには宿っている。
 ミンもすぐに、クロエと同レベルの牝奴隷になるだろう。
 我がスキルながら、グランはその奥深さを改めて思い知らされる。

「ミン、両手で股のヒダを左右に開け。
 膣の中が、見えるようにするんだ。
 クロエは、指で股と尻穴をイジめてやる」

 グランの矢継ぎ早な命令に、

「はい、ご主人様!」「はい、ご主人様!」

 二人のヴァルキリーは礼儀よく従った。



 「半分が落ちたか」

 都市・カサンの領主、パシは目を閉じて俯いた。
 俯いたまま目を開けると、テーブルの上に広げられたカサンの都市図が目に入る。
 紙の地図は、戦前と今で何も変わっていない。
 だが外の現実は、カサンの歴史上、大きく変わっていた。

 世界ランキング一位のリーナパーティが、突然自分を訪ねてきた。
 近づくと、アルコールの匂いがした。
 それでも自分に会いにくるということは、緊急事態に違いない。
 緊急事態ということは、悪い知らせに決まっている。
 事実、そうだった。
 人間の天敵である吸血鬼の国・ブラムスから、一個旅団が侵攻を開始したと。
 それは人間領域で最もブラムスに近いここカサンを、一個旅団が攻撃することを意味する。
 それだけの大軍が行軍するなら、カサンを迂回することは不可能だからだ。
 さらにはカートン、果てはレイジ国を陥落させねば、ブラムスは大軍を世界中に動かすことが地理的に困難だ。
 だから奴等は、レイジ国自体を滅ぼすつもりだ。
 ここカサンでの戦いなど、奴等にとって行軍の一歩に過ぎない。

「吸血鬼の女王が、人間に宣戦布告して百年、か」

 誰にでもなく、パシが口にする。
 領主の()は、指令室となっている。
 今はパシを初め、数名の幹部が詰めていた。
 内政を(つかさど)る文官と連合軍将校達だ。
 先程のパシが口にした言葉で、幹部達も色々と思うことはある。

 この百年で、滅ばされた国はあった。
 だが滅ぼした敵の布陣は、特級の吸血鬼一匹や上級吸血鬼率いる精鋭部隊など、少数だった。
 これら少数部隊との戦闘は、人類史上、数え切れないほどあった。
 しかしカサンやカートンをはじめ、大軍で攻撃されたことは無かった。
 理由は不明だ。

 基本的に吸血鬼の食料・飲料になる人間の拉致は、主に魔物が(にな)ってきた。
 野に放たれた魔物が吸血鬼の支配から放たれ、野生化する例は多くある。
 そんな野良魔物達に、屈服する国は一つとしてなかった。
 そもそも野良魔物を初め、魔物達が大軍で人間領域に押し寄せてきたことはない。
 つまり、連合軍が駐留するレイジ国が(せん)の役目を果たしたのか、大軍に人間領域が攻め込まれたことはない。
 しかし原因は不明だが、ついにカサンはブラムスからの、大軍による直接攻撃を受けていてる。
 敵一個旅団一万匹に対して、カサンに駐留する連合軍も一個旅団一万人。
 ただ、数は同じとはいえ、個体の強さで人間は吸血鬼と魔物に大きく遅れをとる。
 カサン陥落は確実で、時間の問題だった。

 だが、一筋の光が差した。
 完全な絶望に、わずかだが希望が入り込む余地ができた。

「リーナパーティのメンバー達の戦いぶりは、本当に見事です。
 さすが、世界ランキング一位だけのことはあります」

 連合軍将校の言うとおりだった。
 このカサンには、不幸中の幸いだった。
 タイミングよく、世界ランキング一位のリーナパーティがいるのだ。
 そして、いざ戦闘が始まると、彼等の戦闘力は人間離れしていた。
 元タンクで武勲を上げたパシや連合軍幹部も、その強さには圧倒される。
 ただ、パシはごく最近、リーナパーティの戦闘を見る機会が偶然あった。
 その時に比べれば、強さは落ちている。

「やはり、一人欠けたの大きな痛手だったか。
 しかも、パーティの(かなめ)を担っていた彼だけにな」

 無念なパシに、連合軍幹部が反論する。

「欠けたのは、評判がよくないただの黒魔導士です。
 あのパーティに所属できたのも、勇者のリーナ殿と幼馴染、(よう)縁故(えんこ)だと」

 この幹部は、全員が揃ったリーナパーティの戦いぶりを見て比較できないから、こんな的外れな発言をするのか。
 それとも世にはびこる、根も葉もないアンチ黒魔導士なのか。

 両方だろうなと思い、パシは深い溜め息を吐く。
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