第29話 愛しさと切なさと自慰する女勇者と

文字数 5,199文字

 リーナが離れていく。
 それは衝撃であり、悲劇だった。
 けれど、それで我を見失うグランではない。
 何かが起きた。
 こちらにリーナ達が接近していたということは、間違いなく、リーナ達もミノタウロス中隊討伐に向かってきたのだ。
 けれど、引き返した。
 この場に、使い魔がいないことは確認している。
 ミノタウロス中隊全滅を知って、リーナ達は引き返したわけではない。
 ミノタウロス中隊より、緊急に対処せねばならない事態が発生したのだろう。
 グランはカサンに、使い魔を飛ばした。
 途中、リーナパーティの姿を捉えた。
 だがリーナの姿が直視できないよう、その姿に(かすみ)がかかる特殊な魔法をかけた。
 彼女の……リーナの存在は、心をザワつかせるから。



 ミノタウロス中隊を殲滅させたセレナパーティは、カートンかカサン、どちらかの領主に報告せねばならない。

 グランがおかしな様子を見せたのを、セレナだけは見逃さない。

「寂しそうな表情をしていたが。
 私の見間違いだろうな。お前には似合わない」

 腰まである金髪の長髪をそのまま流し、緑色の瞳をした絶世の美女にして、世界二位の女勇者。
 彼女は見た目の美しさだけではなく、鋭い観察眼を持つ。

 挑発的なセレナの発言にしかし、グランは何の反応も示さない。
 かわりに、唐突に話し始める。

「俺は今、飛ばした使い魔の目で、
 ブラムスとカサンのちょうど中間地点を見ている」

 グランの目は、焦点が合っていない。
 使い魔の目と自分の目をリンクさせた者特有の目つきだ。

「ブラムスが、ついに動き始めた」

 その一言で、勝ち戦の余韻は霧散(むさん)した。
 人間の天敵であり強敵が「動き出した」とグランは、表現した。
 今回のような中隊規模ではないのだろう。

「……敵の数は?」

 思い切って聞いたセレナに、グランが無感情に答える。

「一個旅団だ。しかも、吸血鬼が混ざっている」

 声にならない悲鳴と衝撃が、中隊討伐で血に濡れた森に広がる。

「……グラン、確認するぞ。
 吸血鬼と魔物の混成部隊が一万匹、カサンに向かって侵攻中なんだな?」

「そうだ」

 確認したセレナに、目の焦点が合ったグランが、淡泊に答える。
 セレナが歯を食いしばったのは、一瞬だった。

「急ぎ、カサンに向かうぞ! カサンの連合軍と連携して、旅団迎撃にあたる!」

 号令を下したセレナを、

「いや、俺達はカサンに行かない、行ってはいけない」

 グランが止める。

「どういう意味だ?」

 セレナの問いに、

「カサンには、リーナ……世界ランキング一位パーティがいるからだ」

 グランの答えに、パーティメンバーがハッとする。
 その事実を失念していた。

「しかし!
 いくらカサンの連合軍が、レイジ国でも最強の精鋭集団で、
 その数が多いにしても!
 いくら、世界一位のリーナパーティがいるにしても!
 敵の数が多過ぎる!
 我々も共同戦線を張るべきだ!」

 セレナが握り拳を作って訴える。

(俺だって、リーナがいるカサンに行きたいよ)

 その本音は隠しながら、

「首脳会議や、ラントとドラガンの大国はお前達に、
 世界一位パーティと共同で戦えと指示したか?」

 セレナに冷や水を浴びせる。
 セレナが今度は周囲を気にせず、歯噛みする。

「私達は世界ランキング一位パーティと共同で戦うな、
 とは言われていません。
 けれど事実上、それに近い命令は、
 首脳会議やラント国、ドラゴン国から下されています」

 (あざ)やかな青色の髪、同じく青い目のユリアがセレナに代わって答える。
 頬や肩にかかり、唇に絡まったセミロングの髪が淫心をかき立てる。
 知的だが、同時に卑猥さも併せ持つ女賢者。

 世界ランキング二位パーティは、一位パーティの保険として構築された。
 つまり、いかなる事態が発生しようと、世界一位と二位が同時に全滅するのは、避けなければならない。
 世界二位パーティを作った意味がないからだ。
 現在、カサンに世界ランキング一位のパーティがいる。
 ならば、世界ランキング二位のセレナパーティにとって、選択肢は一つしかない。
 カサン入りすることなく、別の都市や街で待機することだ。
 別の国で待機という選択肢もあるが、遠過ぎる。
 カサンでの戦況次第では、セレナパーティにどんな命令が下されるか分からない。
 カサンから距離はあるが、遠過ぎない場所で待機するのがベストだ。
 セレナパーティは、来た道を引き返した。
 カートンで、様子を見るしかない。

 グランは、他の女達も見渡す。

 明るい茶髪に、同じく明るい茶色の瞳をしたクロエ。
 肉付きがよく、爆乳で陰毛が剛毛の女。

 クロエよりは大人しめの茶髪に、同色の瞳をしたミン。
 だが、暗い印象はない。
 印象は、クールな大人の女だ。
 鍛え抜かれたスリムな肉体は、くびれが素晴らしく、乳の弾力が素晴らしい。
 何より、イチモツを引き千切らんばかりの膣圧と尻穴は、芸術の域に達する。

 燃えるような赤い髪がよく似合う小麦色に焼けた肌の女、レスペ。
 アマゾネスはスピード重視なので、重い鎧はつけない傾向にある。
 レスペも例外ではなく、戦闘時でも最低限の防備しか身に着けない。
 お陰で、クロエと張り合えるほどの爆乳が、着衣の上からでも分かる。
 さらに歩く度に、左右にブルンッブルンッと震えるデカい尻は、顔を埋めて窒息したくなる。

 爆乳といえばセレナやユリアだって、充分に巨乳だ。
 去勢野郎は数に入れないとして、本当にいい女揃いのパーティだ。
 イチネンボッキの精子をガンガン出しがいがある。
 また彼女達は、無限精子を受け止められるだけの(みだ)らな女どもだ。
 牝奴隷として全員の調教が終わっていれば――女達全員が、イチネンボッキによって、そのポテンシャルを開花していれば。
 そうなっていれば、カサンで戦ったとしても、パーティが両方とも全滅することは有り得ない。
 世界ランキングがひっくり返るほど、セレナパーティは強くなるからだ。
 だがこればかりは、仕方がない。
 調教には、どうしても時間がかかってしまう。
 焦らず、この状況下でできることを、淡々と、しかし懸命に行うまでだ。
 
 


 リーナパーティは、ほぼ駆け足で移動していた。
 が、疲労も時間帯も限界に達した。
 事前に地図で、野営の候補地は複数確認している。
 その中の一つに着いた。
 適度に遮蔽物があり、周囲が見渡せる丘だ。
 今夜は、ここで野営することにした。

 カサンで吸血鬼混じりの大軍との戦いが待っているというのに、パーティはハメを外して饗宴を催した。
 危険な屋外での野営は、そもそも冒険者だけの専売特許だ。
 どれだけ騒いでも、街中のように衛兵が来ることはない。
 なので、場は度が過ぎた酒と踊りと笑いで満たされることになる。
 そして待っている戦いを思えば、世界ランキング一位パーティのメンバーなら、恐怖より戦闘への興奮が勝る。

 夜が更け、そんな宴もお開きになった。
 もう寝てしまったニンチ以外で警戒の順番を決め、就寝する。
 寝袋に入りながら、リーナは今日の接近に思いを馳せる。
 グランと近づけた。
 けれど、会えなかった。
 寂しさと切なさが(つの)るのと同時に、最近のストレスにも悲鳴を上げそうになる。
 グランという相棒がいなくなり、決断は全て自分一人で行わねばならない。
 重圧は想像以上だ。
 しかも、今まではパーティメンバー達のストレスはグランを攻撃することで晴れていた。
 そのグランが、今はいない。
 代わりに、ウサイとムザイが、いやらしい目で自分を見るようになった。
 特にターリロは、爬虫類のような絡みつく視線で見詰めてくる。
 つまりグラン脱退後、リーナはパーティメンバーの男達に、常に性の対象として、生々しい目で見られている。
 大半は寝ているニンチを除いて。
 寒気と嫌気を覚えるし、怒りも湧く――日中は。
 だが人肌恋しい夜になると、グランへの思いとともに、男どもの自分への性欲に、興奮してしまっている。
 今もそうだ。
 体の奥底にある牝の本能が、ジンジンと疼いている。
 リーナは上着の裾から、両手を滑り込ませる。
 その手で、形がよく、弾力のある乳をゆっくり揉む。
 乳からジンワリと、気持ちよさが体中に広がっていく。
 乳を揉む力と速さを上げると、さらに気持ちいい。
 荒々しく揉むと、

「あぁん」

 と声が洩れてしまうほどだ。
 さらにリーナは乳を揉みながら、大きく薄い桃色をした乳輪に咲いた乳首を、指で()まむ。

「アウンッ」

 すでに乳首はコリコリに固まって、ピンと上を向いている。
 そんな乳首を摘まむと、背がのけぞる程、快楽の電流が体中に流れる。
 ハアハアと荒い息をつきながら、片手をパンティの中に入れ、秘部をなぞる。

「あふぅんっ」

 なぞった手が肉真珠に触れ、たまらない快楽に吐息が洩れる。
 リーナは秘部を何度かなぞり、そこが愛液で満たれているのを確認する。
 このスケベ汁はグランへの思いと、卑しい男達への軽蔑だ。
 いや、自分が「卑しい」と見下している男達への期待が含まれていないと、言い切れるか?
 自分は卑しい男達に、集団で乱暴されたいのだろうか……。
 そこまで淫乱なのだろうか。
 イジめられて喜ぶドMの牝豚なのだろうか。
 この体を蹂躙されて(よろこ)びの(よだれ)を垂らすセックス奴隷なのだろうか。

 そんな下卑た考えが、さらに淫心を煽る。

「あふ、あふ、あふうぅん、いやん、いい……」

 肉真珠を自らの指で(さす)っては摘まむ。
 愛液は股間を濡らし、陰毛も濡れてテカテカと卑猥に光っている。
 リーナは人差し指を、秘部に挿入する。
 愛液で満たされた秘部は、スンナリと指を受け入れる。
 内に招き入れた指で、中をかき乱す。
 クチュックチュッと卑猥な音が鳴る。
 ハアハアハアと息が荒くなったリーナは、秘部に中指も入れ、二本指で自分の大事な陰部をイジる。
 初めはゆっくりと二本指を出し入れし、膣壁の感触を味わう。
 指に、無数のミミズが絡みつくような感覚。
 その感覚は、背筋に軽く寒気が走るほど気持ちいい。

「はあーっ、あはっーん、いいっ、いいの!」

 決して他人の前では見せない、女としての自分。
 一匹の牝としてのリーナ。

(あん、見て。いっぱい見て! 男の人にいっぱい見てほしいの! こんなエッチで恥ずかしいリーナをいっぱい見て!)

 声に出さずに悶えながら、二本指の出し入れを早くする。
 出し入れの度に、愛液がピュッピュッと飛ぶ。
 二本指はより深く刺さり、入れる度に子宮口を刺激する。

「ウンッ! ……あはあ、いいっ! いいのっ!
 見て! こんなスケベなリーナを誰か見て!」

 ついに言葉に洩れるほど、快楽に我を見失う。
 消音魔法は使っていない。
 喘ぎ声が、他のパーティメンバーに聞かれるかもしれない。
 それを想像すると、さらに股間の奥が熱くなる。

 常に「勇者」という名の、優等生の仮面をつけることを強いられる。
 その負担は、勇者にしか分からない。
 だから、ときに羽目を外して、正直に「性」に従ってしまう。
 「そんな時は、大胆に奔放(ほんぽう)に」――かつてグランが、遠回しな表現でリーナに伝えた言葉だ。
 まだパーティを組んだばかりで、当時は言葉の意味が分からなかった。
 今は嫌というほど、実感している。

「どこまでも、ふしだらな私を見て!
 ほら、勇者がお股さらしてオナニーしてるわ!
 アソコはスケベな汁でジュクジュクよ!
 こんな私をいっぱい見て……あっ、イクッ!」

 リーナの体が弓なりに反り返る。
 柔らかい体が綺麗に反り返ったまま、ピクピクと痙攣する。
 リーナの顔には、うっすらと笑みが浮かび、目の焦点が合っていない。
 舌を出して、ハアハアと荒く息づいている。

 リーナの喘ぎ声を聞いた男がいた。
 それは、輪姦を狙うムサイとウザイではない。
 レイプと調教を狙うターリロでもない。

 高等賢者にしてインポのニンチだけが、聞いていた。
 どれだけ刺激をあたえても、ピクリとも勃たないイチモツを見下ろす。
 情けない……。
 害虫の蛹、それもその死体のようなイチモツが、ダラリと垂れ下がっているだけだった。
 悔し涙が滲む。
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