第79話 不毛痴態

文字数 4,254文字

 レスペはドラガン国で生まれた。
 とはいえ、領内の貧しい村だった。
 生活は常に逼迫(ひっぱく)していた。
 が、両親と兄弟達が無理をして、自分を魔法技術学院に入学させてくれた。
 魔法使いになるため、必死で努力した。
 だが、駄目だった。
 魔力の問題ではない。
 技術の問題だった。
 絶望的に不器用なので、魔法が練れない。
 成績不良が重なり、退学処分を食らった。

(次は、自分が親と兄弟達の食い扶持(ぶち)を稼ぐ番だ!)

 落ち込む暇などない。
 元々、猪突猛進型の性格だった。
 前向きで、元気と明るさを失わない。

 「勇猛果敢」を錦の御旗に掲げるヴァルキリーの見習い生に、ギリギリで合格できた。
 身体能力は、受験生でもトップを独走していた。
 礼儀作法で、最下位を独走してしまった。

 ヴァルキリーでは見習い生でも、給料が出る。
 ただし訓練は、サディスティックに厳しい。
 厳しい試験を通過して見習い生になった者達のうち、実に九割が、ヴァルキリーの一員となれずに脱落していく。
 そんな徹底したスパルタはしかし、レスペの気性に合っていた。

(魔法と違って、才能なんて求められないんだ!
 厳しいだけなら、いくらでもこなせる!
 ヴァルキリー楽勝!)

 こうしてレスペは、首席で見習い期間を終えた。
 首席卒業で多少の臨時収入は手に入ったが、故郷の家族達が食べていくには、とても足りない。

(どんどん強くなって、どんどん上を目指すぞ!)

 寝る間を惜しんで、物理攻撃の鍛錬に励んだ。
 バトルマスターを目指す道も開けるほどだった。
 けれど、魔法時代はあんなに不器用だったのに、物理攻撃になると別人だった。
 大小様々な剣や槍、弓などの扱いで抜群の成績を残した。
 敏捷性も申し分無かった。
 当時のヴァルキリー幹部達は、レスペのジョブ選定で意見が割れた。
 バトマス以外に、レンジャーやアマゾネスを推す声もあった。
 最終的に、ジョブは鑑定士の鑑定に(ゆだ)ねられた。
 鑑定結果は、アマゾネス。

 それ以降、戦果を上げ続け、世界ランキング二位パーティのメンバーに抜擢された。
 しかし、末の弟が原因不明の奇病に犯された。
 死なないが、心身を苦痛が攻め抜く地獄のような難病だ。
 未知の(やまい)への医療費は高い。
 レスペはさらに、稼ぐ必要に迫られた。
 そのためには、今よりも上――世界ランキング一位になるしかない。
 現在、世界一位の戦士であるムサイを抜かなければならない。
 個人のランキングは、首脳会議や神殿の会議において、実力はもちろん、普段の素行も考慮されて決められる。
 個人ランキングとパーティランキングは同一になることが大半だったが。
 ヴァルキリーが神殿・デーアに根を張っている以上、処女であることは大前提だ。
 だから、グランに荒々しく乳を揉まれて気持ち良くても、それ以上を許してはならない。

「止めろ! グラン!」

 レスペは腰に差した短剣を抜くが、グランの手刀で手首を打たれ、短刀を落としてしまう。
 落ちた短刀をグランが素早く蹴る。
 短刀はチャポンと音を立てて、小川に沈んでいった。
 脛当てに仕込んだ剣を抜こうとするが、脛当てごと、グランに蹴り飛ばされてしまった。

「ちょっと! あんた、本当に魔法使いなの!?」

 アマゾネスの自分が、近接格闘技で全く敵わない。

「魔法使いであるとともに、凌辱師であり調教師だ。
 だから、こんな技も持っている」

 グランは大した力も込めず、レスペの関節を我が物のように操り始めた。
 両腕を上げさせて、甘酸っぱい香りがする脇を舐めたり。
 両腕を下げさせて、うなじにキスし、舌を這わせたり。
 果ては、指の愛撫でコリコリに固くなった乳首を舐め回しながら吸い、甘噛みする。

「あ、ううん、き、きもちい……やっぱりダメだ! ダメ! んむふぅ」

 拒否の言葉をそれ以上吐けないよう、唇を、グランの唇で塞がれる。
 乱暴な乳揉みによる快楽で顎に力が入らず、舌の侵入を許してしまう。
 歯や歯茎をネバネバと舐められた後は、レスペの舌を絡みとってくる。
 絡み合った舌に、グランが唾液を送る。
 口が塞がれているので、レスペはグランが次々と送り込む唾液を飲むしかない。
 ゴクッ、ゴクン。
 音を立てて、男の唾液を飲んだ。
 そんな淫靡(いんび)な自分自身に、ますます欲情をかき立てられる。

「ん、うん、ん、むふうん、あん、あっ……ダメだって……」

 途中で、唇が解放された。
 ボリューム満点の両乳は、ずっと荒々しく揉まれている。
 グランの舌が、その豊満な乳を舐め回し、唾液でボトボトに濡れる。

「うふぅんっ! お、おねがい……だから、そ、それ以上は……」

 激しいキスで、唇から何筋も太いツバの筋を垂らしたレスペがグランに懇願する。

「俺に犯されて、お前は何か失うものがあるのか?
 処女なのに、こんなに股ぐらを濡らしておいて」

「ウンッ! そ、そんな……ところ、さ、さわったら……ダメだ」

 パンティ超しに、グランが秘裂を指でなぞる。
 すでに上半身への愛撫で感じたレスペの股間からは、男を迎えるための卑猥汁が溢れ、内股をツツッと流れ落ちるほどだ。

「感じやすい女だな。
 お前が、最も抵抗が激しいかと思っていたが。
 普段が純粋無垢だから、性欲にも正直なわけだ。
 結構なことだ」

 グランが、レスペのズボンとパンティを膝までズリ下す。
 露わになった尻を二度三度と、平手でバシンッバシンッとぶつ。
 その度に尻肉が揺れ、痺れるような快感が臀部から全身に広がる。

 だが。
 快楽に支配されそうになっても、末弟の顔が頭に浮かぶ。

「お、おねがい……た、たのむ、から。
 や、止めてくれ……は、話を聞いてくれ」

 そこに切実な何かを感じ取ったグランは、レスペから話を聞いた。



「そのお前の弟だが、しばらく行方不明になっていなかったか?」

「そうだ! 何で知っている!?」

 レスペはグランに疑心を抱いた。
 なぜ、そんなことまで知っている?

「首脳会議と魔法技術院、そして神殿は協同して、
 吸血鬼打倒のために、ありとあらゆる実験を行っている。
 それに特化した専門の集団がある。
 連中は吸血鬼を殺すためなら、手段を選ばない」

 半裸のレスペを一時的に解放したグランが、説明を始める。

「それは素晴らしいことじゃないか!」

「お前の末弟が拉致されて、実験体にされてもか?」

 グランの返答に、レスペの顔色が変わる。

「症状を聞く限り、連中が研究している呪いの可能性が高い。
 吸血鬼を捕らえた際、情報を吐かせるための呪いだ。
 だがお前の末弟は運良く、奴等の研究施設から脱走できたんだろう」

「な、何で、お前は、そ、そんなことを知っている?」

「は? 逆に聞きたい。
 この話題は一般人でも、耳がいい奴等なら知っている公然の秘密だ。
 それをなぜ、
 世界ランキング二位のパーティメンバーなのに、お前は知らないんだ?」

 「なぜ」と申されましても。
 子どもの頃から、「世間」というものに疎いもので。

「そ、それなら、セレナ達も知っていると?」

「当たり前だ。
 お前、その件を誰にも相談したことがないだろう?」

 その指摘に、レスペは言葉が無かった。
 首脳会議や魔法技術院はともかく。
 家族を守るため、神殿だけはアテにしていたのに。
 だが今は、他に優先すべき事項がある。

「お、弟は助かるのか?」

「どういう意味だ?」

「へ?」

 グランの思わぬ返答。
 レスペは小麦色によく日に焼けた上半身剥き出しで、股間と尻を露わにしたまま、間抜けな声を出してしまう。 

「い、いや、だから! 弟の呪いは解けるのか!?」

「当たり前だ」

 グランの即答に、レスペは混乱の渦に叩き込まれる。

「クロエとユリアでも、呪いは外せる。
 ああ、あと小生意気なセレナでさえ可能だ。
 ただ、呪いを解いていいのか?」

「へ?」

 グランの思い掛けない問い掛けに、レスペは無毛で秘部が丸見えな股間を(さら)しながら、またも間抜けな返事をしてしまう。

「呪いをかけられている間、確かに苦痛は続く。
 ただし、その呪いで死ぬことはない。
 食事も多少は摂れる。
 さら他の呪いや魔法はもちろん、感染症にもかからない。
 捕虜に死なれては困るからな。
 つまりお前の末弟は、呪われている限り、生存が保障されている」

 レスペは、頭を抱えたくなった。
 どうすればいいのか。
 ……セレナ達に、相談してみょう。
 そうと決まれば、それ以外のことは必要ない。
 レスペが、パンティとズボンを上げようとする。
 そのとき、グランの片手が股に侵入してきた。
 不毛の淫乱丘を上下に横断する秘裂を、手の平で激しく(さす)られる。

「ああうっ!」

 秘部全体が、ジンワリと温まるような快感に包まれる。
 さらに、肉真珠も(こす)られるので、快楽の波が二重になって体内で暴れ狂い、脳に押し寄せる。

「うぅん、あはあ……気持ちいい」

 思わず、本音が出てしまう。
 だがレスペはまだ、末弟の件が引っ掛かっていた。
 セレナ達に確認を取るまでは、グランの発言が真相かどうか分からない。
 たとえ真相だったとしても、家族を養う稼ぎが必要なのは、変わらない。

 何より、ここまで自分を鍛え、結果を出してきた。
 世界の(いただき)に立ちたいと、強く思う。
 けれど、グランの愛撫が気持ち良過ぎて、身を任せてしまいたいという思いもある。

 選択を迫られて、レスペは頭を抱えてしまう。
 らしくない姿だ。
 考えるという作業をレスペが行うのは、何年ぶりだろう。
 そうしている間も、無毛の丘を横断する桃色の裂け目からは、淫臭ただよう牝汁が垂れている。

 身も心も正直なレスペに、祝福あれ。

 空には、無数の星が輝いていた。


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