第81話

文字数 4,996文字

「呑気に小便だけをするな」

「ウグウッ……」

 叱られたレスペは、口内をまたグランの巨根で犯される。
 気道が詰まる。
 それが今度は、快感に変わる。
 グランに首を絞められた。
 意識が飛ぶほど、気持ちいい。

 首絞めは、凌辱・調教でも最難度の性技だ。
 ただ力を込めるだけなら、ただの暴力。
 力を抜きすぎても、やはりただの暴力。
 その女に合った首絞めの力具合がある。
 グランに首を絞められたレスペはあまりの気持ち良さに、放尿を終えた秘部から潮を吹いてしまう。

 そんなレスペを立たせ、グランは片脚を担ぐ。
 「クパァー」と露出した秘部が生々しい。
 毛が無いので、奇麗なピンク色の秘裂が丸見えだ。
 片脚を担がれているので、秘部が(いびつ)に変形している。
 それがまた、男の欲情をそそる。

 レスペがエロスの神からあたえられた、赤子の小指ほどもある肉真珠。
 それは、男の目を捉えて離さない。
 淫靡な呪いだ。
 そんなレスペの卑猥な秘部に、

「うっあっ!」

 グランが巨根を突き刺す。
 片脚を上げているので、巨根が根本まで埋まる。
 出し入れする度にイチモツが膣壁をこすり上げる。
 愛液と絡まり合い、ヌチャリヌチャリと卑猥な音を立てる。

「いいか、レスペ。
 快楽に身を委ねろ。性を解放しろ。自分を解き放て」

 下腹部から込み上げる未体験の快感の波に、翻弄(ほんろう)される。
 その波に飲まれそうだ。
 だがレスペは、グランに向かって必死に首を縦に振る。
 目をギュッと閉じて、意識を集中させる。
 そうしないと、グランの言葉が耳に入ってこない。
 快楽の波は今や、大津波と化していた。

「過去が今のお前を作り、今のお前は未来を作っている。
 今と未来は、過去からは逃れられない」

 秘部を突かれる度に、レスペの意識は真っ白になっていく。
 グランの声だけが、白い世界に響く。

「だから、過去から逃げなくていい。
 過去の自分を受け止めろ。許してやれ。
 お前の人生で、必ず引っ掛かっている実体験があるはずだ」

 レスペの意志が、過去へ飛ぶ。
 私の人生の流れを止める障害物。
 それは何だ?
 貧困な家庭や環境?
 違う。
 貧しくても、楽しい日々だった。
 今でも美しい思い出に満ちている。
 では、拷問とまで呼ばれるヴァルキリーの鍛錬?
 違う。
 強くなっていく日々は、自信をあたえてくれた。
 では、一体何が……。

 魔法だ!

 親兄弟が血を吐く思いで、魔法技術学院の入学金と授業料を作ってくれた。
 自分も死ぬ気で鍛錬した。
 だが、駄目だった。
 絶望的に、魔法使いに向いていなかった。
 この「魔法」が、私の人生の流れを邪魔している。
 しかしグランは、受け入れろと言った。
 許せ、とも。

 美しくしなやかな肢体を、激しく下から突き上げられる。
 グランの巨根全体を透明な膜で覆ってしまうほど、秘部は愛液を放流している。

 昨日の戦争で、魔法を帯びた武器を何度か見た。
 その威力は、通常の物理攻撃と比べ物にならない。
 また関節攻撃魔法の援護には、大いに助けられた。
 そして治癒魔法が無ければ、寝不足な自分が最後まで戦え抜けただろうか?
 今まで、グランが自分の理想を何度も見せてくれたではないか。
 直接、相手を魔法で攻撃する必要はない。
 上手く使って、勝利を手に入れるのだ。
 無限の可能性を、「魔法」は秘めている。

(ああ、私は魔法が嫌いで、遠ざけていたんだ)

 秘部を突き上げられ、昇天しそうだ。

(でも、違うんだ。体内に流れる魔力に、素直になればいい。
 そして、魔法は偉大だと認めよう。
 その偉大な魔法の前では、私なんて、ただの一匹の牝に過ぎない)

 悟りの境地に達した瞬間、オルガズムにも達した。
 昇天したレスペの顔は、彼女らしく笑っていた。



 朝が来た。
 朝食の準備をしながら、グラン三人娘は、ライバルが一匹増えたことを敏感に嗅ぎ取っていた。
 今後、グラン四天王になる可能性が出てきた。
 新しい、女達の冷たい戦争が幕を開ける。


 *******************************


 リーナパーティのメンバー達は、一様に驚いた。
 ラント城の謁見の間には、ガルサ将軍がいた。
 一人掛けの豪華なソファに、鷹揚に座っている。

 世界一の超大国ともなれば、冒険の経緯報告など、中堅どころの官僚達が聞くのが通例だ。
 王族や高級軍人は、その官僚達がまとめた報告書に目を通す程度だ。
 カートン、引いては時間の問題となったレイジ国陥落への危機感。
 それが、腰が重く、保守的な超大国を動かしたか。

 カートンの将軍といえば、当然、特級の戦士だ。
 同じ戦士のムサイとウザイは、フンと鼻を鳴らす。
 馬鹿にしているのではない。
 ライバル視しているのだ。
 政治だけで、ラント国軍将軍の椅子には座れない。
 実力で勝ち取った数々の武勲が、モノを言う。
 出世願望の強いターリロは、羨望の眼差しを送っている。
 ニンチは今朝から、元気がない。
 自分の股間を見ながら、復活がどうこうとブツブツ言っている。
 新手の魔法だろうか? 

「……以上で報告を終了します」

「大儀であった」

 相手が誰でも、リーナは態度を変えない。
 その姿勢はときに、王族や貴族を不快にさせた。
 だがガルサは、細かいことを気にしない豪快な人物だ。

「国王陛下には、私から報告しておく」

 「国王陛下」という単語が出た途端、リーナパーティのメンバー達の背筋が伸びる。
 ラント国王は、人類で最も権力を掌握している。

「とはいえ、だ。お前達は、こう思っているんだろう?
 『使い魔でカートン戦争の一部始終を見ていたのに、
 何を報告するのか』と?」

 当たりだ。
 だがそれしきで、動揺するメンバーはいない。
 むしろ全員の顔に「ご明察」と浮かんでいる。

「ハッハッハッ! 正直で面白い連中だ。
 王に報告するのは、お前達が定時に報告に来たことだ。
 カートンに参戦したことは、軍内部の機密事項にしてある。
 心配するな」

 リーナ以外のメンバー達は一瞬、背筋が凍った。
 自然と表情が(ゆが)んでしまう。
 首脳会議は、使い魔をカートンに送り込んでいた。
 実際に使い魔を送り込んだ術者は、軍部の魔法使いだろう。
 つまり軍部の腹一つで、命令違反が王達の耳に届くかどうか決まる。

「いいえ、心配です」

「何だと?」

 毅然と言い放つリーナに、ガルサの顔から笑みが消える。
 剣吞な雰囲気が漂う。

「人間領域を守り切るには、カートンが凌ぎ(どき)でした。
 でも首脳会議は、連合軍兵士に帰国命令を出した。
 戦争の真っ最中に。
 それどころか、レイジ国全体から、連合軍を撤退させた。
 まるで国一つを丸々、ブラムスに献上し、
 そこを根城に人間支配を始めてくれと言っているようなものです」

 おい! リーナ!
 誰に向かって、何て口の利き方を!
 パーティメンバー達の顔が青くなる。
 だがガルサは眉間に深い皺を寄せて唸るばかりで、叱責は飛んでこなかった。

「連合軍撤退については、意見が分かれるだろうな。
 だが、連合軍をあのまま駐留させておいても、
 ブラムスからの波状攻撃で全滅させられる」

 苦々しく言うガルサに、

「私達がいます!
 冒険者である私達は、どんな国にも肩入れしません!
 ランキング上位パーティで、
 混合部隊を作って投入するのはどうでしょうか!?」

 リーナは凛とした姿勢を崩さない。
 闘うことを止めない。

「ふむ、さすがは世界ランキング一位の勇者、か。
 実は混合部隊によるブラムスへの一斉進撃の提案は、首脳会議でも出た」

「でしたら、早急に編成を……」

「首脳会議とて、一枚岩ではないのだ。
 ましてこれが人類全体となると、足の引っ張り合いだ。
 自国の利益しか考えていない連中の多いことよ。
 まあ、ここラントも、他所(よそ)のことは言えんが」

 豪快なガルサだからこそ、実情を赤裸々に教えてくれる。

「しかし、女勇者・リーナよ。
 混成部隊を投入せずとも、策はある。
 まずは、既存の部隊を()きつけてみろ。
 丁度この国には、ヴァルキリーの本部がある。
 あの女戦士どもがブラムス打倒に本格的に乗り出すなら、
 乗り掛かる国は多いだろうな」

 ガルサの言うとおりかもしれない。
 戦う乙女・ヴァルキリー。
 その高潔さと強さにおいて、各国首脳から一目置かれる軍隊。
 そして世界中から、尊敬を集める集団。
 しかも、どこの国にも属していない。
 言葉を変えれば、彼女達の手柄は、各国で奪い合いになる。
 吸血鬼亡き後の利権を狙う国も、打倒ブラムスに乗ってくる。

「では早速、神殿・デーアに行って参ります」

 早々と去ろうとするリーナを、

「待て待て。お前達も、耳に入れておいた方がいい情報がある」

 と、ガルサが慌てて止める。
 世界一位の軍隊を束ねる彼でも、リーナはそう簡単に扱えない。

「先程、人間達も一枚岩ではないと説明しただだろ」

 ああ、そのことか。
 パーティメンバー達の顔に浮かぶ「何を今さら」。
 それを見て、ガルサは思わず苦笑する。

「具体的な問題が上がった。西側で、不穏な動きがある」

 この世界の西側。
 吸血鬼の国・ブラムスがある西側。
 カートンがある南部ではなく、西側に火種があるのか。

「ミルン国で、将軍のマギヌンがやりたい放題だ。
 クーデターが起きるかもしれん」

 それを聞いたムサイとウザイが囁き合う。

「(でも確かミルン国王って、ちょっと頭がボケちゃったんだろう?)」

「(それで国の指揮が執れず、マギヌン将軍が代理を務めているとか)」

 囁き合う二人を尻目に、リーナとニンチが思わず顔を見合わせる。

 「(マギヌンって、あのマギヌンなの!?)」

 「(珍しい名じゃ。二人とはおらんよ。
  あのマギヌンじゃろうなあ)」

「ああ、大事なことを知らせていなかった。
 お前達の元パーティメンバーだったグランが、
 そのミルン国にいる。
 世界ランキング二位パーティと一緒にな」

 リーナとニンチがまた、目配せする。
「グランとマギヌンが一緒にいる!」。

「グランがいるなら、何の心配も要りません」

 リーナが胸を張る。
 ガルサは女勇者の生意気な態度に段々、苛立ってきた。

「お前の惚れた男がいるから安心、か?」

「ほ、惚れた!?
 私とグランは決してそのような関係では……」

「かつて、同じパーティだったのですよ」

 ニンチの発言に、一同が驚く。
 居眠りしないで、報告会に参加していたのか!
 そして次の瞬間、リーナ以外は、発言の内容に驚く。

「このパーティの初期メンバーには、リーナと私、
 そしてグランとマギヌンがいたのです。
 随分と遠い過去の話なので、今のメンバー達は知りませんな」

 リーナとニンチよ、せめて過去メンバーは教えておいてくれ。
 他のパーティメンバー達がリーナに苦笑を、ニンチに殺意のこもった目を向ける。

「ミルン国だけではない。
 いやむしろ、こちらが本題だが。
 独裁国家・カザマンがキナ臭い動きをしている」

 それを聞いて、他のメンバー達の目はスッと細くなった。
 人を人と思わない軍事独裁国家。
 吸血鬼と等しく、いずれは滅ぼすべき国だ。
 だがリーナは自信に溢れた態度で、ガルサに先程と同じ返答をした。

「グランがいるなら、何の心配も要りません」

 その自信に溢れた姿に、ついに超大国の将軍は気圧された。 


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