第49話 陰謀と陰毛と陰茎

文字数 4,412文字

 この都市の存亡をかけた戦いが、避けて通れないものであろうと。
 昼間に、特級の吸血鬼と悪鬼を暗殺しようと。
 夜は必ず、やってくる。
 そして夜は、男と女が体で会話を楽しむ時間だ。
 ただしグランは例外で、快楽だけが目的ではない。
 戦争に向けて、イチネンボッキをフル回転する必要がある。



 ユリアはグランに呼び出され、彼の部屋にいた。
 着いたときにはもう、全裸のクロエとミンが、グランの全身に舌を這わせてご奉仕していた。
 一人掛けソファに、グランは鷹揚(おうよう)に座っている。
 その上半身は裸で、クロエとミンが絡みついている。

「俺が命じたとおりの恰好で来たか?」

「……来たけど、
 あなたの命令に従ったわけじゃないわ。
 これが、私の普段の寝間着よ」

 苦しい抵抗だ。
 夕食後、ユリアはグランに耳元で囁かれた。
 「お前が自分で、最高に淫乱だと思う恰好で来い」と。
 その時は、

「い、行かないわよ!
 何度も言わせないで!
 一度抱かれたからって、私はあなたの女になんかならないわ!」

 と言い返した。
 だが気が付けば、自室で卑猥な衣装を探していた。
 慌てて止めようとしたが、無駄だった。
 一度でもイチネンボッキを食らえば、服従以外の選択肢はない。
 そして今、グランの前でユリアは、ガウン姿でモジモジしながら立っている。

「寝間着、か。とにかく、見せてみろ」

 グランが片頬を歪めて笑う。
 
「……くっ!」

 抵抗しないと!
 ユリアの理性は強くそう訴えるが、体が言うことをきかない。
 ガウンをほどき、床に脱ぎ捨てる。
 現れたのは、紫色を基調とした、シースルーのネグリジェだった。
 スケスケで、ユリアの巨乳や大きな乳輪、太めの乳首が薄い生地超しに見える。
 さらにパンティまで、ネグリジェとお揃いの生地だ。
 なので手入れがされておらず、黒々と股間で咲き乱れる陰毛まで透けて見える。
 その恰好で黒いハイヒールを()いているので、卑猥さが増している。

「さすがに賢者は優秀だ。
 自前で、スケベな恰好ができるからな。
 ミンなど、俺が行商から武闘着を買ってやったぐらいだ。
 ミン、お前にあたえたスケベ武闘着を着てみろ」

「はい、ご主人様」

 グランの乳首を舐めていたミンが、土下座して返事をする。
 そしてテーブルの上に広げられた(あで)やかな武闘着を身にまとう。
 そんなミンに、ユリアは睨まれた。
 その目には
 
「後から入ってきたくせに! 
 グラン様から、あんなに褒めていただけるなんて!」

 と、嫉妬と焦燥が浮かんでいる。

「着終えました、ご主人様」

 ミンが再び、土下座する。

「土下座姿では、お前にせっかく買ってやったスケベ武闘着が見えん。立て」

「はい、ご主人様」

 武闘家らしいキビキビとした言動だけに、ミンの面影が残っている。
 このままでは、自分もミンのようになってしまう。
 ユリアは恐怖を感じるが、体が逃げてくれない。
 
 ミンが立ち上がり、武闘着が全貌を現す。
 上肢は長袖だが、胸の部分がシースルーになっている。
 ミンの形のいい乳が、うっすらと見えている。
 下肢は、(たけ)が短か過ぎる。
 パンティをはかずに脚を上げれば、陰毛どころか秘部まで見えそうだ。
 加えて左右には、スリットまで入っている。
 普通に立っていても、横からパンティが見えてしまう。

「よし、似合っているぞ、ミン」

「ありがとうございます、ご主人様」

 ミンが頬を染めながら、嬉しそうに返事をする。
 その間も、クロエはグランの上肢を愛撫し続けている。

「クロエとミンで、俺のイチモツをしゃぶれ。
 ミンは武闘着のままでだ」

「はい、ご主人様」「はい、ご主人様」

 二人の返事が綺麗に重なる。
 クロエとミンが、グランの前に(ひざまず)く。
 そして丁寧に、グランの下肢にかかったローブをほどく。
 いきなり、黒い輝きを放つトロルが現れる。
 ユリアは構えようとして、それがグランのイチモツだと気付いた。
 トロルは人型だが、見上げるほど巨大な魔物だ。
 見る度に、グランのイチモツは巨大さを増しているように感じる。
 そして見れば見るほど、頬ずりをして、跪きたい。
 やはりグランのイチモツは女にとって、絶対服従の王だ。
 だがそんな本音を、明かすわけにはいかない。
 スケスケのネグリジェにパンティという姿だが、グランの女にはならないと誓ったのだ。

「チュッチュッチュッ、レロレロレロレロ。
 ああ、ご主人様のペニス、イカ風味で美味しいです」

 クロエがイチモツの先端にキスして、亀を舐める。
 恍惚とした表情を浮かべている。

「あんむぅ……ムジュルウッブブッ。
 ご主人様の玉々、甘辛くて美味しいです」

 ミンは玉袋を舐め、玉を口に(くわ)えて吸いあげる。
 やはり表情はクロエと同じで、陶然(とうぜん)とグランの顔を見上げる。
 そんな二人を見ているだけで、ユリアはパンティを濡らしてしまう。
 薄いスケスケ生地なので、愛液の染みができてしまう。

「黙ってパンティを濡らしてないで、こっちに来い、ユリア」

「そ、そっちに行くだけよ。
 私はあなたのために、何かをする気はないわ」

 ユリアが豊満な乳を揺らせ、くびれた腰と尻を振りながらグランに近づく。

「まだ一回しか、お前を犯してないからな。
 抵抗心を無くしたら楽しくないところだが、その心配はなさそうだ」

 グランはニヤニヤと笑っている。

「今日のお昼に、
 特級の吸血鬼とバルログを倒した魔法使いとは思えない下品さだわ」

「陽が昇れば、敵を倒す。
 沈んだ後は、上手い酒といい女を楽しむ。
 これが、冒険だ」

 ユリアは睨みつけるが、グランのニヤけ笑いは変わらない。

「俺のために、何かする気はない、か。
 では、オナニーしろ」

「な……! ここで、オナニーを!?
 恥ずかしいから無理に決まってるわ!」

「黙ってやれ。それとも、力ずくで犯されたいか。
 前回の最後の性交のように」

 ユリアが「ウッ」と呻く。
 三発目に射精されたとき、ユリアは力ずくでレイプされた。
 肉と肉がぶつかり合った。
 品位の欠片もない、肉を(むさぼ)る野性的な性交。
 そんな欲情まみれのグランに乱暴に犯され、快感を覚えた。
 気持ち良かった。
 圧倒的な男の力の前に跪き、犯されて、ユリアは快楽に包まれた。
 私はマゾなの?
 イジめられて、アソコを濡らしてしまうの?
 決して、そんなことはない!
 確かに母と同じで、淫乱で売女な女だ。
 それは認める。
 でも、グランという男に屈してはならない。
 自分の卑猥な欲望に、支配されてはならない。

「だ、誰があなたなんかに屈するものですか!
 この変態!
 恥を知りなさい!」

「発言と行動が、矛盾しているが?」

「へ? ……あん、いい」

 グランに指摘されて、初めて気づいた。
 いつの前にか自分の手がスケスケパンティに入り込み、陰部をイジっている。
 秘部に指を入れ、肉真珠をつまんでは転がしている。

「こ、これは……!? や、止めないと……。
 で、でも……あぁん、凄く気持ちいい……」

「俺は何の魔法も使っていない。
 お前の中で燃え始めた性欲に、体が正直に反応しているだけだ」

 体は、正直……。
 グランへの抵抗心はあるが、軽蔑や嫌悪はない。
 そして気付けば、オナニーして気持ちよくなっている。
 自分はグランへ抵抗することで、行為を強制されるシチュエーションを作り出しているのでは?
 そうやってイジめられることに、快感を覚えているのでは?
 ユリアは自分の気持ちが、分からなくなってきた。
 ただ唯一、ハッキリしていることがある。
 それはグランに見られながらのオナニーに、最高に興奮していることだ。
 その証拠に、秘部から止めどなく愛液が溢れている。

「あん、もう何が何だか、分からなくてぇん……。
 あふぅん……ユリア、凄くお股が気持ちいいの……。
 悔しいけど、あぁん、気持ち良くて、いっぱいお汁出ちゃうの」

「自分の気持ちが分からない、か。
 そういう時は、欲望に正直になれ。
 お前という売女は、性欲の塊だ。それを解き放て」

 自分を、解き放つ。
 一旦解き放ってしまえば、目の前のクロエやミンのようになってしまう。
 二度と元には戻れないだろう。
 その恐怖で、二の足を踏んでしまう。

「まだ抵抗を続けるのか。
 ヴァルキリーの賢者ともなると、反骨精神も筋金入りだな」

 グランの顔に一瞬、下品で暴力的な笑みが浮かぶ。
 直後、その表情が急に引き締まる。

「ユリア。お前は今回の戦争を、どう見ている?」

 クロエとミンにイチモツと金玉を愛撫させながら、グランが問う。

「く、苦戦は必至でしょうね。けれど」

「余計なことは言うな。ご主人様に聞かれたことだけに、答えろ」

 全裸よりも卑猥なスケスケのネグリジェとパンティをはき、オナニーしていたユリアが叱責される。

「だが、お前の言うとおりだ。
 このままでは、敗北する可能性すらある」

 敗北。
 常に負け知らずで、余裕さえ感じさせる男の口から、ついにその言葉が出た。
 信じられない。
 信じたくない。

「形勢をひっくり返す手段は、一つしかない」

 グランのもったいぶった言い方に、ユリアは(すが)ってしまう。

「そ、その手段は何なの?
 あん、お、教えてほしい、わ……うふぅん」

 ユリアは、オナニーでイキそうだった。

「イチネンボッキだ」

 紋切型の答えに、ユリアは戸惑うばかりだ。

「ちゃ、ちゃんと……お、ああん、教え、て、ああっ」

 ユリアの下半身が、ガクガクと震える。
 イッてしまった。

「ご主人様の許可なしにイクとは。
 賢者といえど、お前には徹底した(しつけ)が必要だな。
 今度は俺の前に尻を突き出しながら、
 オナニーしろ。
 いいか、イクときは俺の許可を求めろ」

「何をフザけたことを……」

 ユリアはそれ以上、言葉を続けられなかった。
 グランの股間に群がったクロエとミンが、見下す視線を送ってきたからだ。
 「そんな初歩的なことも出来ないのか」と。

(何よ、フザけないで!
 私を誰だと思っているの!?
 すぐに、あんた達なんか追い越してみせるわ!)

 ユリアの心に、牝奴隷の根が張った瞬間だった。

 吸血鬼どもとの戦争に、負ける気はない。
 女同士の冷たい戦争にも、負ける気はない。
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