法蔵菩薩、210億もの仏国土をおさめとる

文字数 1,314文字

それから申し上げるには
「世尊はこのように素晴らしくいらっしゃいますが、私も〈この上ない正しい覚りを求める心〉をおこしたのです。
願わくば仏よ、この私のために清浄なる仏国土の数々、量り知れないそれらの国々が美しく厳かに飾られている様子をお説き示し下さいませ。
私がそれら仏国のすばらしさを取り入れて
〈正しい覚り〉を得て仏となり
諸々の生き死にを繰り返す苦しみから抜け出すことが出来ますように。」

しかし、世自在王仏はおっしゃいます。
「法蔵比丘(修行者)よ。
あなたの目指すべき仏国土の在り方は、あなたご自身でお知りになればよいではないですか。」

「仏よ。これらの持つ意義は、あまりにも広く深いことですので、私にはそれらを正確に知ることなど出来ないのです。
ですので、どうかお願い致します。
世尊よ、
諸々の仏たちがそれぞれの浄土を築き上げた修行について、広くつぶさにお教え下さい。
私はそれらをお伺いしてから
同じくその様に修行を重ね、成し遂げて
私自身の決心する浄土を築き上げたく存じます。」

これを聴いて
世自在王仏は法蔵菩薩の才能・智慧の深さと、その志・願いの広さを知り
こう語りました。
「たとえ大海原の水をたった一人で桶を持って汲みとらねばならないとしても
永い時をかけ、堅実にこなしてゆくならば
やがては海の底までも干し、〈妙なる宝〉を手にするでしょう。

志を持った人が至心に精進を続けて道を求め、諦めなければ、必ず成果を得るでしょう。
どのような願いであっても、叶えられないことはありません。」


こうして世自在王仏は
法蔵菩薩の求めに応じて
210億もの仏国土の素晴らしい在り様と、それぞれに住まう人や神々の様子を語り続けたのでした。


それらをすべて詳しく聴き
仏力によって目の当たりにした法蔵菩薩は
〈この上もない殊勝なる願い〉をおこしました。

心は静寂でとらわれなく、誰一人及ぶ者もない〈志〉でした。
それから
5劫(1劫は一つの宇宙が生まれ、膨張・収縮し、消滅する時間)もの長い時をかけて
〈清浄な行〉を深め思索し
自らのものとして
仏国土を厳かに飾っていったのでした。


やがて
法蔵菩薩は
210億もの仏国土すべての〈清浄なる行〉を摂(おさ)め取りました。

そうして世自在王仏のみもとへと参り
うやうやしく最高の礼拝をして申し上げます。

「世尊よ。私はお教え頂いた〈仏国土を厳かに飾る清浄なる行〉をすべて摂(おさ)め取りました。」

仏は語りかけます。

「比丘(修行者)よ。
今こそ時が来ました。
あなたの摂(おさ)め取った〈清浄なる行〉についてお話して
ありとあらゆる生き物たちに、悦びの想いをあふれさせるがよいでしょう。

また
〈覚りを求めて修行している者(菩薩)たち〉は
あなたの話を聞いて同じく修行し
それぞれが〈量り知れない大きな願い〉を立てることが出来るようになりますし
それらを満足させるきっかけとなってゆくでしょう。」

そこで、
法蔵菩薩は御仏に申し上げるのでした。

「では、どうかよくお聞き下さいませ。私の立てました願いとは、このようなものなのです。
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