法蔵菩薩の歌 「歎仏頌 たんぶつじゅ」

文字数 1,192文字

「世界において自在なる王」よ
あなたの尊顔は、なんと高大に輝くことか!
厳かな気高さは極まりもなく。

燃え盛る炎の輝きに、誰が等しく並ぶと言うのか?
輝く日も
照る月も
清らに明るい〈摩尼宝珠〉さえも
そなたの御前では輝きを失う。
―あたかも闇夜の墨のように。


如来の美しさは世に超えてたぐいなし。
〈正しき覚り〉の発する〈大いなる梵音〉は
十方世界のすみずみまで響き流れる。

〈熟慮され尽くした振る舞い(戒)〉。
〈魂深くまでの傾聴(聞)〉。
〈精進〉に、〈三昧〉
そして〈智慧〉。
その威徳の数々に太刀打ちできる者などない。
なんと稀有なことか!


〈諸々の仏法の海〉
その深みを探り、奥へと進み
底までをも極め尽くされた。
それを諦め、思慮深く善く念じられる。

そして断ち切る
〈無明〉を
〈欲〉を
〈怒り〉を。
「人中の獅子」よ、
その神徳は量り知れず。


〈成し遂げし偉業〉はあまりに広大。
その智慧は深く妙なるもの。
〈放たれた光明〉は勢いをもって〈大千世界〉を震動させる。

願わくば
我も「聖なる法王」と等しき〈仏〉とならん。
そして
生き物たちを
〈生死の繰り返し(輪廻)の苦しみ〉から解き放たん!


〈広く施し〉
〈自らを調え〉
〈戒め〉
〈忍び〉
〈精進すること〉。
これらの修行を、
〈瞑想〉と〈智慧〉とによって透徹し、裏打ちしよう。

そして私は誓おう!
〈生き物たちの全ての畏れ〉を、
〈大いなる安らぎ〉とする事を。
〈あまねく行き渡った願い〉を成し遂げ
私は仏の位を得るのだ、と。


〈真砂(まさご)の数ほどの御仏たちの世界〉、
〈数えることも出来ないほどの生き物たちの国々〉。
その全てを
私の〈光明〉であまねく照らそう。
それほどの〈精進〉を重ねるのだ
〈私の魂〉よ、勇ましく量りがたかれ!


私が〈仏〉となったならば
その国土は
〈御仏たちのすばらしく妙なる覚りの道場(仏国土)〉
をも遥かに超えて、
第一のものとせん!

〈私の国〉は
〈涅槃の静けさと喜び〉に満ち
等しくならぶものもない。
私は
〈一切の生きとし生けるもの〉を憐れんで
苦しみから解き放ちたいのだ。


〈十方のあまたの世界より来たるものたち〉。
心悦び、清らかとならんことを。
〈私の国〉にたどり着いたならば、心身ともに快く、楽しみ満ちて、安穏ならんことを。

請い願わくば
「世界において自在なる王」よ。
〈私の願いのまこと〉を明かしたまえ。
御仏こそが
真実の証人たらんことを。

このような国土を築く願いを立てるのだ。
これこそ
全精力を尽くして求めるもの。


〈十方の御仏たち〉よ。
〈さまたげるものなき智慧〉でもって
常に
私の心を、行ないを
ご覧あれ。
たとえ
〈苦しみの毒〉
にのたうとうとも、
私は忍び
精進を重ねて
後悔することはない。
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