数々の仏の名について  ~監修者より

文字数 1,187文字

『無量寿経』の初回に、いきなり仏様の名前が羅列されて、めんくらった方もいらっしゃったのでは?
正直、私も最初に経典を読んだ時、
「なんじゃこりゃ?意味不明だ…」
と、読むのが苦痛だった覚えがあります。

しかし、あるコツ(というか気付き)を得て以来、特にここを読むのが大好き!になったのです。

それは…

“仏の名前は美しい”ということ。


特に個人的にヒットしたのは

「水面(みなも)に映る月」

というお名前の仏様でしたね。

夜。
鏡のように澄んだ、静まりかえった水面に
月が煌々と照る。
空のひろがりを映した水面は
さらに深さを増す。
そこに輝く
月。
空よりもなお、深く輝いて…。


朝のお勤めの前の行道の時に、足元を月を映した水だとイメージして
「水面に映る月を乱さないように歩こう」
などと心がけたりしてみたものです。
ちょっと懐かしい。


こんなふうに、「仏とはどういう存在か?」という問いに対して、
理屈で、論理での答えではなく
詩的に、美的に答えを求めるならば
まさにそれにふさわしい回答こそがこの「仏名」ではないか、というのが私の考えです。

これは個人的な楽しみ方に過ぎませんが。


前回の記事の場合直接的には、阿弥陀仏様が現れになられる前の数々の仏様たちのお名前です。
「このような名前(つまり特徴)をお持ちの仏様が、それぞれの一時代を築かれたんだなあ」
こう理解することは、どなたにでも可能かと思います。

名前の特徴を見てゆくと、何通りかの傾向がありますね。
光。声。花。宝。海、山…

もっといろいろ「仏の名」を見てみたい、という人には
『佛名経』という経典がありますので、そちらをご参考に。
(大正新脩大蔵経の索引ページへのリンクです。5ページ目までが、数々の『佛名経』の索引になります。)

ちなみに、日本の寺院で年末に修される「佛名会(ぶつみょうえ)」は、『三千佛名経』を拠り所としています。

また、インドの最高神のひとり「シヴァ神」には千の名前があるといわれます。
この場合は
「ひとりの尊格の、様々な特徴を照らしだすための数々の名前」
ということになります。

名前というものが本質に通じるものであるならば、
その名前を十分に理解し、尊重しておろそかにしない。
それ相応の覚悟を持ってお呼びする。

そういった感覚を持たずには、神仏の名を口にすることもはばかられた時代があったのでしょう。
だからこそ、今のこの場所を祝福するために、特別な儀式でもって多くの神仏の名を呼ばう。

この感覚は、宗教と真剣に向かい合う人ならば、現代でも十分に持つことのできる感覚だと思います。

そして
『浄土経典』の「無量寿仏」すなわち「阿弥陀仏」。

「南無阿弥陀仏」という言葉は
まさに「阿弥陀仏」の名前を、呼ばうという修行なのです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み