ジャンブー島その2〈欲界の天〉

文字数 1,659文字

(スメール山のふもとの光景つづき)

七重の塀の上には、美しい建物が立ち並び、それらを取り囲んで沐浴のための池がある。
木々には宝の花が咲き、それらが列をなしている。
花や果実の甘やかな香りが、風が吹くたびに四方へと広がり、人々の心を楽しませている。
美しい様々な鳥達が、無数の歌声を奏でて、それらが調和して響いている。


スメール山の中腹に、42000ヨージャナ(約29万4千km)の高さの盛り上がった丘があり、
そこには四天王たち(持国天・増上天・広目天・多聞天)の宮殿が建つ(四天王天・六欲天の第一)。
ここにも
七重の宝の塀に七重の宝の薄絹がかかり、
七重の宝の並木があって鈴の音が響き渡る。
そして無数の鳥達の美しい鳴き声が奏でられる様子は、先ほどと同様である。
神々の身長は0.5ヨージャナ(約3.5km)。
その寿命は500歳だが、ここでの一昼夜は、人間界での50年に相当する。
(四天王の寿命・・・500歳×360日×50年=900万歳)


スメール山の山頂には三十三の天の神殿が整然と立ち並ぶ(忉利天・とうりてん、六欲天の第二)。
それぞれが
七重の宝の塀、薄絹、並木や鈴で飾られ、
鳥達が歌いあうことは、同様である。
神々の身長は1ヨージャナ(約7km)。
その寿命は1000歳にして、ここでの一昼夜は、人間界での100年に相当する。
(忉利天の神々の寿命・・・1000歳×360日×100年=3600万歳)


山頂の忉利天より上空に84000ヨージャナ(約58万8千km)上ると
〈夜摩天・やまてん〉(六欲天の第三)。
縦横に8000ヨージャナ(約56万km)の広さがあり、
山河や蓮池、果樹林が広がる。
この天の神々は争いを好まない。
身長は2ヨージャナ(約14km)で、寿命は2000歳。
ここでの一昼夜は、人間界での200年に相当する。
(夜摩天の神々寿命・・・2000歳×360日×200年=1億4400万歳)


〈夜摩天〉より168000ヨージャナ(約117万6千km)上昇すると
〈兜率天・とそつてん〉(六欲天の第四)。
七宝の宮殿があり、数え切れないほどの神々が住まう。
〈内院〉と〈外院〉に分かれ、〈内院〉には弥勒菩薩の住まう〈兜率浄土〉がある。
この天は
それより“下層の天が欲に沈むこと”も離れ、
これより“上層の天が楽しみに浮き上がること”も離れ、
“満ち足りた喜びの心に留まる”ので、〈菩薩の修行の地〉にふさわしい。
神々の身長は4ヨージャナ(約28km)。その寿命は4000歳。
ただし、ここでの一昼夜は人間界の400年に相当する。
(兜率天の神々寿命・・・4000歳×360日×400年=5億7600万歳)


さらに336000ヨージャナ(約235万2千km)上昇すると
〈化楽天・けらくてん〉(六欲天の第五)。
この神々は
みずから触れるものすべてを“楽しみの妙薬”に変える力がある。
神々は常に光を放ち、男女は微笑みあうことで交情を果たす。
神々の身長は8ヨージャナ(約56km)で、寿命は8000年。
ただし、その一昼夜は人間界の800年に相当する。
(化楽天の神々寿命・・・8000歳×360日×800年=23億400万歳)


さらにその672000ヨージャナ(約470万4千km)上空には
〈他化自在天・たけじざいてん〉がある(六欲天の第六)。
この神々は
“他者の生み出した楽しみ”を“自由に己の快楽とすること”ができる。
ここが〈欲界〉の最高位にして
ここの天主こそが
かの「大魔王・パーピヤース」である。
神々は視線を交わすだけで交情を果たす。
ここの神々の身長は16ヨージャナ(約112km)で、その寿命は16000年。
ここの一昼夜は人間界の1600年に相当する。
(他化自在天の神々寿命・・・16000歳×360日×1600年=92億1600万歳)


ここまでの神々の世界は“欲から逃れることが出来ない”ため、
〈欲界〉と呼ばれる。
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