地獄 その4 〈十六小地獄・4~7〉

文字数 1,193文字

第四小地獄「飢え」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「飢餓地獄」にいる。
獄卒がやって来て、
「おまえは何を求めてここへ来たのだ?」
と尋ねられる。

とたんに猛烈な飢えに襲われ、
「私は飢えてここに来ました」
と答えてしまう。

言い終えるや否や、
獄卒に殴り倒されて熱い鉄板の上に横たえられ、
鉄のかぎ爪で口をこじ開けられて、
〈真っ赤に熱せられた鉄の粒〉
を食べさせられる。

唇、舌をはじめ
喉、はらわたまでもが焼け、
食べさせられるたびに焼けただれないところはない。

毒の苦しみ、辛酸に、悲しみの声、泣き叫び声が止むことはない。
そして
罪の償いが終わるまでこれらは続き、死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「飢餓地獄」を出る。



第五小地獄「渇き」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「渇(かつ)地獄」にいる。
獄卒がやって来て、
「おまえは何を求めてここへ来たのだ?」
と尋ねられる。

とたんに猛烈な渇きに襲われ、
「私は渇いてここに来ました」
と答えてしまう。

言い終えるや否や、
獄卒に殴り倒されて熱い鉄板の上に横たえられ、
鉄のかぎ爪で口をこじ開けられて、
〈ドロドロに溶けた銅〉
を飲まされる。

その苦しみや期間など、先の通りである。



第六小地獄「一つの銅釜(どうがま)」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「一銅釜(いちどうふ)地獄」にいる。
目を怒らせた獄卒が現れて、
罪人の足をつかまえて逆さ吊りにし、
地獄の釜の中に放り入れられる。

釜の中で、
煮えたぎった湯と共に
釜の底へ、また口の方へ、
ぐるぐると旋回する。

あるいは釜の肌にじかに当たって、
皮がただれむける。

豆粒を大釜で煮るように、
ぐるぐると、
ぐらぐらとゆでられて、
体中がただれ、壊れてゆく。

泣き叫び、万の毒が体中あまねく行き渡る。
しかし、
罪の償いがおわるまでこれらは続き、死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「一銅釜地獄」を出る。



第七小地獄「多くの銅釜」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「多銅釜(たどうふ)地獄」にいる。
この地獄は広さが500ヨージャナ(約3500km)四方。
見渡す限り、釜が並んでいる。

地獄の鬼が、目を怒らせて現れ、
罪人の足をつかまえて逆さ吊りにし、
地獄の釜の中に放り入れられる。

どの釜でも罪人たちがゆでられている。

沸き立つ湯と共に、
口から底へ、また口へ、

あるいは手足が飛び出、
あるいは腰や腹、
また頭や顔が現れる。

獄卒が鉄のかぎ爪でもって釜の中をまさぐり、
罪人を引き上げては別の釜の中に投げ入れる。

苦しみの毒・辛酸に泣きわめき、泣き叫んでも、
罪が償われるまで死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「多銅釜地獄」を出る。
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