地獄 その3 〈十六小地獄・1~3〉

文字数 925文字

《小地獄》

いつまでも続く苦しみの罰を受けるなかで、
この「想地獄」を抜け出そうと恐怖にかられ、救いを求めて走り出す。
しかし、
自らの宿業に引かれて、
それぞれの〈小地獄〉へとたどり着いてしまうのだ。


第一小地獄「黒い沙(すな)」

ある者は、いつの間にか「黒沙(こくしゃ)地獄」にいる。
突然、
熱風が吹きつける。
すると、
熱せられた黒い砂が飛んで来る。

亡者の体中に黒い砂がまとわりついてゆき、
ついには“黒い雲”のようになる。

熱砂は皮も肉も骨までも焼き、
罪人は“黒い炎の柱”となる。

炎は体外から体内へと廻りつつ、入り込む。
焼かれ、炙(あぶ)られ、焼けただれてゆく苦しみも、
すべて“生前の罪の報い”である。
しかも、
罪の償いが終わるまで死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「黒沙地獄」を出る。



第二小地獄「沸屎(ふっし・煮えた糞)」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「沸屎地獄」にいる。
目の前には、
“煮えたぎった糞”が満ちている。
そしてその中に、無数の鉄の球が煮られている。
突然、
鉄の球が飛んで来て、手に抱えさせられる。
とたんに手は焼け、顔や頭も燃え上がる。
また、
何者かに口をこじ開けられ、煮えた糞を注がれる。
唇や舌はおろか、喉を通過しながら腹の中までも焼けただれる。
さらには
〈鉄のくちばしを持った虫たち〉がやって来て、
亡者の体に貼りつき、
皮や肉はおろか、骨の髄までむさぼり食らう。

その“毒のような苦しみ”、辛酸、憂いは測り知れない。
しかも、
罪の償いが終わるまで、死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「沸屎地獄」を出る。



第三小地獄「五百の釘」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「五百釘(ごひゃくてい)地獄」にいる。
ふいに獄卒に殴り倒され、
熱い鉄板の上にのせられる。

横倒しになるや否や、
手に釘を打たれ、
足に釘を打たれ、
心臓に釘を打たれ…

体中に五百本もの釘を打たれる。

毒の苦しみ、辛酸に、泣き声、うめき声は
罪の償いが終わるまで続き、死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「五百釘地獄」を出る。
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