地獄 その5 〈十六小地獄・8~10〉

文字数 867文字

第八小地獄「石の磨(うす)」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「石磨(せきま)地獄」にいる。
この地獄も広さ500ヨージャナ四方。

大いに怒った獄卒がやって来て、
罪人を打ちのめし、
熱い石台の上に手足を広げて押さえつけられる。
そして
大きな焼けた石でもって、全身を磨(す)り潰される。

肉は飛び、
骨は砕けて、
血や膿がとめどなく流れ出す。

苦しみの毒、痛さのあまりの悲しみ、泣き声、辛酸極まりないが、
罪の償いが終わるまでは死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「石磨地獄」を出る。




第九小地獄「血と膿(うみ)」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「膿血(のうけつ)地獄」にいる。
この地獄も広さ500ヨージャナ四方。
ここでは、
自然に膿や血が煮えたぎって湧き出てくる。
罪人は、
慌てて西に東に走り出す。
自らの体内の膿や血が、熱湯のように沸き出すのだ。

手も足も頭も顔も、
すべてが焼けただれて壊れてゆく。

罪人は
“煮えたぎった自分の膿や血”を手にすくって食べ始める。
そうして、
唇や舌、喉からはらわたまで、すべて焼けただれてゆくのだ。

その苦しみの毒、辛酸に数々の痛みは忍び難いものだが、
罪の償いが終わるまで死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「膿血地獄」を出る。



第十小地獄「量火(たくさんの火)」

ある者は、宿罪に引かれていつの間にか「量火(りょうか)地獄」にいる。
この地獄も広さ500ヨージャナ四方。
この地獄では、
“大きな火”が自然に目の前に集まって来る。

その“燃え盛る火焔”が“獄卒”となる。

目を猛火のごとく怒らせて獄卒は罪人に走り迫って来る。

手には〈鉄のひしゃく〉をもっている。
そのひしゃくで、火のかたまりをすくい集め、罪人へと注ぎかける。

手足はおろか全身が焼かれ、
苦しみの毒、熱さの痛みにうめき、泣き叫ぶ。
しかし、罪の償いが終わるまで死ぬことも出来ない。


永らく苦しみを受けた後に、「量火地獄」を出る。
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