第79話 大阪パークで鬼ごっこ

文字数 1,263文字

「少し休もうか!」

マシロが言い、あたしたちは売店で
スナックやソフトクリームを買い、
そばにあったテーブルに座った。

「藤巻さん、気づいたかな?」

あたしが言い

「お前、スマホとか持ってんのか?」

とマシロがルリオに聞いた。

「うん」

とルリオがスマホを取り出すと、
藤巻さんからの着信が沢山入っていた。

「ありゃ、気がついたみたい……」

ルリオはしまったと言った顔でスマホの画面を見た。

「それじゃ、電話すっか。ルリオ、お母さんにかけて」

マシロが言い、ルリオは藤巻さんに電話をかけた。
通話はスピーカーにし、
あたしたちにも内容が聞こえるようにしてもらった。

「ルリオ!! 今どこにいるの!!」

すごい剣幕で藤巻さんは出た。

「心配しなくても大丈夫だよ。
マシロ君と透子ちゃんと一緒に大阪パークにいる」

とルリオは言った。

「大阪パーク!? 早く帰ってらっしゃい!!」

藤巻さんが言うと

「嫌だ!! もうちょっと遊びたい!!」

とルリオは言った。

「ルリオ!!」

ルリオは普段隠れる様に生活していて、
こうやって遊園地で伸び伸びと遊ぶ事なんてなかったのだろう。
頑なに帰る事を拒絶した。

「そう、それじゃお母さんがそっちに行く!!」

「え!?」

思ってもいない展開に三人は驚いた。

「待ってなさい!!」

そう藤巻さんは言い、電話は切れた。

「面白い鬼ごっこが始まりそうだ!」

マシロはいたずらっぽくほくそ笑んだ。

小一時間くらいするとまた藤巻さんから電話が入り、

「大阪パークに来たわよ! どこにいるの!!」

と言っている。

「さーて、鬼ごっこスタートの合図だ!!」

マシロは言い

「お母さん、僕らを捕まえてごらん!!」

とルリオも一緒になって藤巻さんを挑発し、電話を切った。
大阪パークは広すぎず狭すぎず、鬼ごっこにはちょうど良い広さだ。

「さて、鬼はどこかな?」

マシロは花壇のへりに立って辺りを見回した。

「いた!! 逃げろ!!」

マシロが叫びあたし達は

「キャーーーー!」と叫びながらその場から走った。

その声に気がついた藤巻さんは

「待ちなさい!!」

とこちらに向かって走って来た。

三人は「あははは!!」と笑いながら、しばらく遊園地を駆け回った。

「はぁはぁ」と息を弾ませ、立ち止まり、
後ろを振り返ると遠くからヘロヘロになりながら
「待ってー」と走って来る藤巻さんが目に入った。

「この位で勘弁してやるか」

とマシロが言いあたし達はその場に立ち止まっていると、
藤巻さんはあたし達に追いついた。

「どう言うつもり!! あなた達!!」

いつも冷静な藤巻さんがカンカンに怒っている。

「まぁまぁ、藤巻さん、そう怒らないで」

マシロはいつもの調子で飄々としていた。

「どうせなら楽しみません?」

そう言って近くのメリーゴーランドを指差した。

「何で私まで……」

藤巻さんは不服そうな顔をしたが

「お母さんも乗ろうよ!」

とルリオに促され、藤巻さんはしぶしぶ白馬に跨った。

ジリリリ!

とベルが鳴り、白馬たちはゆっくりと上下に動いて回り出した。

「あははーー 楽しい!!」

ルリオは心底楽しそうな顔をして笑った。
その顔を見て藤巻さんの表情も少し柔らかくなった。
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