第24話 朱里の訴え

文字数 884文字


「透子、スマホ買ったの!?」

昼休み、屋上でお弁当の包みを広げながら桃奈は言った。

「いや、大河に貰った」

真っ黒い無機質な、
女子高生には似つかわしくないスマホを手に取る。

「ラインも入れたんだね!
わ! 大河様が友達に入ってる!!」

桃奈は興奮気味に言った。

「桃奈も友達に入れてよ。
あたしまだやり方よくわかんなくて」

そう言ってあたしは桃奈にスマホを手渡した。

「きゃー! 大河様の次が私!!」

桃奈は嬉しそうにラインに友達登録をした。

すると

「片瀬さん」

と声がして、
見上げると体育の授業で一緒に走った朱里が立っていた。

「私もここで食べていいかな?」

朱里が言うので

「どうぞ」

とあたしは座り直して場所を空けた。

「いつもここで食べてるのか?」

あたしが聞くと

「いや、ちょっと教室に居づらくて……」

と朱里は言い、一瞬口をキュッと結んでこう続けた。

「バトン部を辞めようと思ってるんだけど、
うちのクラスにバトン部の子がいて、気まずくて……」

「え? あんたバトン部なのか?」

あたしは驚いて聞いた。

「うん、万年補欠だけどね」

朱里は「はは」と伏し目がちに笑った。

「うちの学校のバトン部、結構力入ってるでしょう?
私みたいな下手くそな子は見下されてバカにされる。
特に金田さんとかに目をつけられたら、ね……」

朱里の目に影が宿った。

「金田が何かしたのか?」

「うん、いいの大した事ないし……」

自分より立場の弱い奴や、
異質な者を排除する風潮はいつの時代も変わらないものだな。

「いいから話せよ」

あたしは言い、

「何かあるなら相談乗るよ?」

と桃奈も心配そうに声をかけた。

「金田さんに、悪口言われてるの……」

朱里は重々しく口を開いた。

「え?」

あたしが聞くと

「金田さん、私の事嫌いなんだ。
私こんな顔だし、だんだんとバトン部も行きづらくなっちゃって……。
でも行かないと『サボってる』ってまた影で言われちゃう……」

朱里の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

金田の奴……。

あたしは他人事ながら頭に来て

「わかった、あたしが話しつけてやるよ」

と啖呵を切った。

「片瀬さん、本当に!? ありがとう……」

と朱里はあたしにすがるような目で言った。

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