第18話 ホワイトタイガーと黒豹

文字数 1,395文字

昼休みは桃奈が校内を案内してくれた。

「ここが体育館に繋がる渡り廊下」

と説明を受けていると、数人の女子グループと遭遇した。

「片瀬さん、ちょうど良かった。
こちら同じクラスの金田莉子(かねだりこ)さん」

とグループの中心に立つ女子生徒を紹介してくれた。

「よろしく……」

と腕を組みながら金田は言い、
あたしを上から下まで流すように見た。

「片瀬さんの元にいた所はスカート丈、それが標準なの?」

金田が聞いた。

「いや、もっと長かった」

あたしが言うと

「昭和のヤンキーみたい」

と金田と取り巻きはクスクス笑った。
おっしゃる通り、昭和のヤンキーだけれども。

「何か文句あんのかよ?」

思わずいつもの口調で突っかかってしまった。

「こっわ!!」

金田を筆頭にグループの女子達は顔を見合わせた。

「まぁまぁ、穏便に……」

桃奈はお互いに気を使うようにひきつり笑いをした。
金田は桃奈の気遣いを汲んだのか

「まぁ、いいわ」

と気を取り直した様に言い、

「そうだ、片瀬さん、LINE教えてよ。
私たちのグループLINEに入れてあげる」

と言ってスマホを取り出した。

「グループラインって何?
それに悪いけど、あたしスマホ持ってないんだ」

あたしがそう言うと

「はぁ!? LINE知らないってありえないでしょ!
それに今時高校生でスマホ持ってないって!」

と顔をしかめた。

「私たちと関わりたくないんじゃない!?」

取り巻きの一人が言い

「え? そうなの?」

と金田は怪訝な表情であたしを見た。

「まぁまぁみんな……」

桃奈はその場を収めようとしていた。

「ほんとに持ってねーんだ。 嘘じゃねぇ」

あたしはそう言ったが、
どうも金田の機嫌を損ねたらしい。

「別に嫌なら構わないけどね。
でもあんた、新参者だったらもうちょっとその態度何とかしたら?」

金田はこちらを見据えて言い、

「なんだよ、その言い方」

と私も睨み、険悪な空気が流れた。
桃奈は相変わらずオロオロしている。

すると近くに設置してあったゴミ箱が
突如バコーンという音と共にひっくり返り、
中身のゴミが散らばった。

あたし達は音のした方に顔を向けると、

「悪りぃ悪りぃ。
蹴るフリのつもりが当たっちまった!」

と漂がゴミ箱を直し、ゴミを拾っていた。

「そいつ、俺らの従兄妹で、超ド田舎育ちなんだ!!
だから本当にITに疎くて……」

今度は頭上から声がし、上を見上げると、
大河が校舎の二階の窓から顔を出していた。

「え? あんたホワイトタイガーと黒豹の従兄妹なの!?」

金田は驚いた顔であたしを見た。

「え、えぇまぁ……」

あたしが答えると

「そう、だからこいつに何かあったら俺らが黙ってねぇから!」

漂がゴミを拾う姿勢のまま上目遣いで言った。

「別に何もしないよ!!」

金田と取り巻きたちはそそくさとその場を去って行った。
大河と漂の従兄妹と言ったら大人しく引き下がった……?

「片瀬さん、そうだったの?」

桃奈も驚いた顔をしている。

「うん、でも何?」

「二年の学年トップで孤高のマッドサイエンティスト、
白衣が眩しいウマ高のホワイトタイガーこと大河様、
空手部のエースで昂然たる黒帯、
ウマ高の黒豹こと漂様の従兄妹って言ったら!」

桃奈は両手で頬を押さえている。

「しかも理事長の孫で二人ともイケメン!
学校じゃあの二人に誰も敵わないよ!!」

「そ、そうなの!?」

「すごい! 片瀬さん!
私片瀬さんとお近づきになれて光栄だわ!!」

何だかよくわからないが、
大河と漂はこの学校ではただならぬ存在のようだ。


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