第53話 研究施設はどこに?

文字数 1,457文字


「そんな事が……」

あたしはそれ以上の言葉が見つからなかった。

「透子が最初部屋に現れた時、橙子かと思ったが違った。
でもそれと同時に透子が現れた事によって、
俺は橙子の実験も行われてしまったんだなと悟った」

最初に会った時に「とうこか?」と聞いた事を思い出した。
あれは橙子さんと勘違いしての発言だったのか。

「でも使用禁止の装置を使って、
戻る術もないのを承知でここに来たのか?」

あたしが聞いた。

「あぁ、橙子を助けたかった」

マシロは言った。

「橙子さんの行方は本当にわからないのか?」

あたしは続けて聞いた。

「あぁ、
存在自体が消えてしまった事だけは考えたくないが……」

そう言ってマシロは目線を落とした。

「なんで橙子さんはこの部屋に来る事になってたんだ?」

漂が聞いた。

「本来は別の場所にテレポートする予定だったんだろう。
だけど理由はわからないが何らかの要因でこの部屋に来る事になった。
もっとも実際来たのは川島橙子じゃなくて片瀬透子だったんだけれども」

「研究施設はどこにあんだよ。お前、そこにいたんだろ?」

漂が言った。

「俺がいた時代とこの時代では施設の場所が違うようなんだ。
橙子と通信していた時も、研究施設の場所を聞こうとすると
妨害電波が入ったり、文字データもワードが弾かれて聞き出せなかった」

「ったく何でだよ……」

漂は苛立った様にパシン!と自分の足を叩いた。

「それでこれからの課題としてはひとまず川島橙子を探すのと同時に、
片瀬透子を元の時代に戻す事。
それから目黒大河をここに戻す事。
そのために研究施設の場所を探し出さないといけない。
それと同時に俺は今、自分でもテレポート装置を作っている」

「もしかして科学部の半分の部屋で作ってるって言うのが……」

あたしが聞くと

「そうだ、あそこにあるのが作りかけのテレポート装置だ」

とマシロは言った。

「それじゃ、研究施設の装置を見つけるか、
もしくはお前が装置を完成させられれば、
透子も橙子さんもおまえも大河も
元の場所に戻れるかもしれないんだな!?」

確認をするように漂はマシロの言葉を繰り返した。

「そういう事だ。
だからもしまだ俺がここにいていいなら協力して欲しい」

マシロは漂に

「頼む」

と頭を下げた。

漂はフーッと鼻から息を出し、しばらく考え込んだが

「わかった、って言うか大河をここに戻すには
お前に協力するしかねーんだろ?」

と言った。

「すまん! ありがとう!!」

マシロは再び漂に頭を下げた。

「たい…… いや、マシロ?」

あたしが呼びかけると

「あぁ、呼びにくかったら大河のままでいいよ」

とマシロは言ってちらっと漂の顔を見たが

「好きにしていいが、俺はお前を大河とは呼べない」

と漂は言った。

「それじゃ、マシロ……
何で橙子さんがぷりずむ苑にいた事がわかったの?」

あたしが聞くと

「前に橙子に施設にいた頃の写真を見せてもらった事があったんだ。
その写真に写っていた壁紙が動物の柄で特徴的で。
で、透子がプチ家出した時に俺もぷりずむ苑に行っただろ?
その時、部屋の壁紙が同じ模様なのに気づいて怪しいって思った俺は、
施設長が鍵を玄関に置いてその場を離れた隙に、
鍵の写真を撮って鍵を複製した。
それで事務所に入って橙子のいた形跡を探していたんだ」

「で、ビンゴだったと……」

漂が言った。

「じゃぁ、ぷりずむ苑って何なの?
施設長の藤巻さんは一体何者……?」

「俺もそれを調べている最中だ」

マシロは言った。

「そう言えばバザーの時、レモンとライムがすごい吠えたけど、
あの時藤巻さんもいたな」

漂が言った。

あたしたちは藤巻さんに対する疑念が高まった。
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