第12話 未来のバスルーム

文字数 776文字

「驚いたな」

大河は顎をさすりながら言った。

「それはそうと、この子時空も超えて来たんなら
どうしたらええの? 元の場所に帰れるん?」

翠さんは大河に聞いた。

「ここに来れたんなら帰れる方法もあるとは思うけど、
どうしたら帰れるのかは俺もわからん」

大河が言った。

「とりあえず親御さんとか知り合いに連絡してみるとか?」

漂が言うと

「35年後のこの子の両親、一体いくつになってるのか……
同級生だって50代だぜ」

と大河が言った。

「50代……」

あたしは絶句した。

「さ、さっき自宅や知り合いに電話したんだけど、
どこも通じなかったんだ」

あたしが言うと、四人はまた神妙な顔になった。

「まぁ、今ここであれこれ考えてもしゃあないし、
とりあえず疲れてるやろ?
お風呂入れるから今日はもうゆっくり休み」

翠さんは微笑み、あたしはお風呂に案内された。

「お部屋は用意しておくから」

そう言って翠さんは脱衣所を出て行った。

「ふぅ。 あたしは何でこんな事になってるんだろう?」

ため息をつきお風呂場のドアを開けると、
そこは間接照明にブラウンの木目調の内装で統一された
高級感溢れるバスルームだった。

「すごい!」

そしてバスタブに入って感動したのは足が伸ばせる事!
追い焚きやお湯の温度調節、
緊急時の呼び出しボタンなんかも装備、
そしてテレビらしき画面まである。

うちの銀色で冷たく、体育座りでしか入れない
バランス釜のお風呂とは雲泥の差だ。

さらにバスタブの横に何やらボタンがあったので、
好奇心の赴くまま押してみると、
お湯からボコボコと泡が出て来た。

「ひゃぁぁぁ!!」

思わず変な声を上げてしまった。

これは未来のお風呂の標準なのか、
それともここがお金持ちの家だからなのか???

バスタブの脇の窓にはブラインドがあり、
隙間から外を見ると、東京の夜景が広がっていた。

「凄いなぁ」

キラキラとしたその光景は、地元とは別世界だった。

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