第28話 大河のアドバイス

文字数 1,099文字

「極度の劣等感。
彼女は元々君に嫉妬していたのかもしれない。
華やかでバトン部でも中心的存在で彼氏もいて」

大河は冷静な口調で言った。

「自分が負ける事や惨めな思いをする事を必死で排除して来た奴は、
真っ当な理論で対峙しても勝てない。
奴らは矛盾だらけだろうが卑劣だろうが、なりふり構ってられない。
なぜならそうしないと生きていけないくらい弱いんだ」

金田と紺野は黙って大河の顔を見つめた。

「そしてそういう奴に勝つ方法は一つ。 加害者になりきれ」

「はぁ!?」

一同は大河の顔を見た。

「加害者にされて困ってんのに加害者になりきるのかよ!?」

あたしが声を上げた。

「そう、(ワル)になるんだ。
ワルになる事で周りからは
より加害者扱いされる事になるかもしれないけど、
手段を選ばずこちらに降服させようとする人間に対しては、
一ミリも良心を出しちゃダメなんだ」

大河はポテトを頬張りながらも強い目線を二人に投げかけた。

「でも心配しなくていい。
少なくとも今ここにいる連中は事情を知るものとして
味方になる。な!」

大河はあたしと桃奈に視線を投げた。

「あ、あぁ」

「は! はい!」

あたしと桃奈は思わず返事をしてしまった。

「お前らにワルになる覚悟、
もしくはバカになる覚悟があれば明るい未来は手に入る」

そう言って大河はニッと笑った。

「あの…… 具体的には何をすれば……」

紺野が聞いた。

「相手に構うな。基本相手は構ってちゃんだ。
泣き落としや脅し、常識や愛みたいなものを振りかざして
周りを味方につけた嫌がらせとか、
様々な事が降りかかると思うが、全てスルーするんだ。
相手は良くても悪くても反応してもらう事が大好物なんだ。
ムカついて思わず喧嘩腰に話してしまう事もあるかもしれないけど、
そこはぐっとこらえて、無関心を貫け。
あいつらは無関心が大嫌いで一番こたえる」

「そんな! ギャフンと言わしてーじゃんか!」

あたしが言うと

「そうやってるとどんどん相手をしてる時間が無駄に長引くだけで、
長引けば長引くほど自分の自由が奪われるし、
こっち側の不利益が積み重なる一方だ。
実際現状はあいつに振り回されっぱなしなんじゃないのか?」

「確かに……」

金田が答えた。

「すげーな大河」

思わず呆気にとられて言うと

「俺、心理学も少しかじってんだ」

と得意げな顔で言った。

「己を貫くには、時には心を鬼にしなきゃだめって事よ」

大河の言葉に一同「なるほど」と頷いた。

そしてその数日後、事件は起こった。

インターネット? のツブッター?
という短いつぶやきを投稿する場で、投稿者不明で

「裏切り者達目撃!!」#(シャープ)うまや橋高校

というコメントと共にカラオケ店に入ろうとする
金田と紺野のツーショット写真が公開された。
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