第80話 パーク兄さん

文字数 1,099文字

メリーゴーランドを降りると、
サングラスをかけたトッポいアニキ風の面をかぶり、
つなぎのコスチュームにマントという風変わりな出で立ちの、
大阪パークのキャラクター「パーク兄さん」が近づいて来て、
親指を立て「楽しんでるか?」と言うように頷いた。

そしてカメラのシャッターを押すようなジェスチャーをしている。

「写真撮ってくれるのかな?」

あたしは言い、

「三人で撮ってあげるよ」

とマシロはルリオからスマホを受け取り、カメラを構えた。

ちょうどあたし達の後ろにはピンクの電球で彩られた
大きなハートのオブジェがあり、マシロはそれを背景に
藤巻さんとルリオとパーク兄さんの三人を写真に収めた。

「見せてーー」

あたしはスマホの画面を覗くと、
キラキラに輝くハートの前で微笑む、幸せそうな親子の姿が映っていた。
その写真を見て藤巻さんは目を細めた。

するとその様子を見ていたパーク兄さんが、
今度はあたしとマシロに近づいて来て、
二人の手を取り、お互いの手を重ね合わせた。

「えっと…… あの……」

あたしとマシロはリアクションに困った。

「俺らカップルじゃないんですけど」

マシロが言うとパーク兄さんは「ハッ!」となって、
手を合わせて謝っているようなジェスチャーを見せ、
あたしとマシロはなんとなく気まずくなってお互い目をそらした。

それからもあたし達は藤巻さんを引っ張り回し、
夕方まで大阪パークで遊んだ。

「最初はあなた達に腹が立ったけど、
今日は久しぶりに楽しかったわ」

藤巻さんが言い、

「いえいえ、どういたしまして」

マシロは答えた。

「で、その……」

とマシロは続けようとすると

「コアパーツの件でしょ?」

と藤巻さんは言った。

「あんたの立場が危うくなるのは承知だ。
でも、あんたの研究のせいで透子は
ここに飛ばされて帰れなくなってる。
その事はもうちょっと考えてやっても良いんじゃないか?」

マシロは再度藤巻さんをプッシュすると、
藤巻さんは目を閉じてしばらく黙り込み、
あたしとマシロは返事を待った。

「教会の目の前のウイスキー工場の地下が
テレポート実験が実行された研究施設の支所になっていて
そこに解体されたパーツが保管されてる。
コアパーツもそこにあるわ」

目を開き、落ち着いた口調で藤巻さんは言った。

「その場所、教えてくれるのか!?」

マシロの目がパッと輝いた。

「ただ、私が関与した事は一切口外しないで。
そしてパーツを手に入れたら一刻も早く装置を組み立てて
二人とも元の世界に戻りなさい。
研究施設がパーツが盗まれたのに気がつけば、
即刻あなたたちを見つけ出すわ」

藤巻さんは真剣な表情で言った。

「わかった。
パーツを手に入れたらすぐに帰るようにする」

マシロは藤巻さんに約束した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み