第23話 早朝の体育館

文字数 973文字

「スマホ……」

黒くて四角い画面の下にある丸いボタンを押すと、
画面が光っていろんな機能の総称だという
「アプリ」の「アイコン」が並んでいた。
このアプリは自分の欲しいものがあればどんどん増やせるらしい。

「すごい! 未来の機械!!」

こんなものを手にできた事に心が躍り、
床についてからもあたしは手の中のスマホを眺めた。

次の日、あたしは朝一で学校に向かわされた。

「科学部の部室の鍵、昨日閉め忘れたかもしれない!
誰かに侵入されて研究室荒らされたら!!」

と大河が血相を変えていた。

「透子、悪いが朝一で学校に行って確認して来てくれ。
俺は腹が痛くてすぐには出れそうにない……」

大河がソファでお腹を抱えながら言うと、

「そんなんすぐにどうこうされへんやろ。
透子ちゃん、気にせんでええよ」

と翠さんは言ったが、大河が切羽詰まった顔をしていたので、
早朝に登校する事にした。

桃奈は大河たちを憧れの先輩として見てるけど、
至って普通の男子だ。
だらしのない部分もある。

そんな事を思いながらまだ7時前の学校に着いた。
昇降口は開いていたがさすがに人の気配はない。
科学部の部屋の前に行き、
ドアノブを回すとガチャと言ったが開かなかった。

「鍵かかってんじゃん」

ったくもう……と、授業が始まるまでの時間どうしようかと、
ふらっと外に出た。

ポケットから昨日もらったスマホを取り出す。
ひとまずよく使うアプリ、
「ライン」と「Moogle」は入れてあるそうだ。

ラインはこの前金田が言ってたやつか。
これで文字でのコミュニケーションや
無料の通話なんかもできるらしい。
今の所あたしのラインには大河しか登録されてないけど。

すると体育館からキュキュッとシューズの擦れる音がした。

「誰かいるのかな?」

体育館の入り口で中を覗くと、
金田が一人でバトンの練習をしていた。

揺れるポニーテールは、
サラブレッドの尻尾のように艶々に光っている。

あたしはしばらく入り口のドアにもたれて、
金田の練習風景を見ていた。

ダン! と落としたバトンを拾おうとした時、
金田はあたしに気がついた。

「上手いじゃん」

あたしが言うと

「これでもコソ練しないとレギュラーから外される」

と金田は言った。

「一年なのにレギュラーなんだ? やるじゃん」

あたしの言葉に少し微笑んだように見えたが、
金田はまた練習を続けた。

嫌な奴かと思っていたが、意外な一面を見た気がした。

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