第25話 揉め事勃発

文字数 1,290文字

一日の授業が終わり、
それぞれ帰る者や部活動に向かう者がいる中、
あたしは金田の姿を探した。

「あのヤローどこ行った?」

教室をキョロキョロと見回すと、廊下から

「あんたいい加減にしなよ!!」

と大きな声がした。

あたしと桃奈は顔を見合わせ教室を出ると、
金田と朱里が向き合って立っていて、
金田がパチーーン!と朱里のほっぺたをひっぱたいた。

「莉子! やりすぎだよ!!」

いつも金田をとりまいている女子たちが朱里の周りを取り囲んだ。

「バトン部でもいじめっぽい事してたんでしょう!?」

取り巻きの一人が言った。

「いじめなんてしてない!!」

金田は語気を強め言った。

「私たち、朱里から聞いてたよ。 紺野君の事とか。
自分から振っておいて朱里と付き合ったらやっぱり惜しくなって、
朱里に対して嫌がらせするとかさ、最低だよ!!」

女子たちは完全に朱里の味方をしている様だった。
金田は黙ってわなわなと手を震わせていた。

金田の取り巻きは朱里に寄り添い、隣の教室に入って行った。

あたしはすかさず金田の前に行き

「ちょっと顔貸してくんねー?
ナシつけたい事あんだけど」

と言うと

「なんであんたが出て来んのよ。
悪いけど今から他の約束があるから今度にしてくれない?」

と金田も教室に戻った。

「おい! 待てよ!!」

あたしは金田を引きとめようとしたが
金田はバッグを手に足早に教室を立ち去った。

事の顛末を見守っていた野次馬たちも気づけば散り散りになり、
廊下は普段の空気を取り戻した。

「透子ーー 今日は科学部あるの?」

これまでの空気を変える様に桃奈は言った。

「あぁ、今日はないけど、
ちょっと部室に顔出してから帰ろうと思ってる」

とあたしが言うと、

「わ! 私も付いて行っていい?」

と桃奈は浮かれた様子であたしの後を付いて来た。

コンコンと部室のドアをノックをすると

「どうぞ」

と声が聞こえた。
なんだかんだ部活のない日も大河はこの部屋にいる。

ガチャとドアを開けて

「それじゃ今日は帰るけど」

と一言声をかけると

「あぁ、今日は俺も帰ろうかな。
ちょっと疲れが溜まってて」

と言って大河は目頭を押さえた。

「きゃー! もしかして大河様と一緒に帰れる!?」

桃奈は小さくガッツポーズをした。

「なぁ、せっかくなんでちょっと遊んでかねーか!?
カラオケなんてどう?」

大河はニッと笑って言った。

「行きます行きます!!」

桃奈は即答した。

「それじゃ、決まりーー。 レッツゴーー!!」

大河はカバンを持ち、
今日は入念に鍵をチェックして部室を後にした。
それからあたしたちは学校の近くの「カラオケ歌原っぱ」に向かった。

「ここはワンドリンクで5時まで歌い放題なんだ!
今日は俺が誘ったから奢ってやる」

と言ってさっさと受付を済ませ、
あたしたちは伝票に書かれた部屋番号を目指した。

「えーと、27、27」

と三人はキョロキョロして細い通路を歩いていると、
「あった! 27番!」と大河が言った。

部屋に入ろうとすると隣のボックスのドアが開いていて、
部屋の中で店のスタッフがドリンクを
テーブルに置いているのが目に入った。

あたしはその中にいた客の顔を見て「ハッ!」と息を飲んだ。

そこには金田と一人の男子生徒がいた。
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